イベントエピローグ
「ふ、ふふふ」
声が響く。
「ふは、ふははは……」
それは、歓喜に満ちた声で。
「ふははははははっ」
高らかに、高らかに。
「ボクの完全勝利やでえええええええっ!!!」
勝利の雄叫びをあげた。
「いやあ、ホンマ途中はどないなるかと思うたけれど、これはええで……大成功や……完勝や……アッあかんめっちゃ眠い」
目の下に盛大に隈を作ってニタニタと書類を見ているのはお馴染みのヤマトだった。ここ三日ほどの睡眠時間合計が1時間半ではあるが、人間やればできるものである。マーケットによる《眠る心臓》の儲けは上々。最低ラインとして目標としていたものよりはるかに上回る額だ。
「ちょいと二区の奴らが暴れたり、四区の過剰防衛があったりボッタクリ騒ぎがあったりしたようやけど……まあ完全倒壊3棟に半壊5棟やったら全然マシやな。余裕で賄える」
それは普通のマーケットじゃあり得ない、と言う声は当然ながらない。むしろこの荒廃都市でお祭り騒ぎをしてそれだけの被害で済んだのだ。喜ばしいことであると同時に《眠る心臓》の管理能力の優秀さを感じさせるだろう。
「えーっと細かな計算はあとで『あの人』に回すとして……ん? なんやこれ……ああアリアさんの研究費か。せやったらこれはこうなって……」
新調した電卓を使いながら、ヤマトは書類に書き込みをしていく。途中で付箋も用いつつ、書類をいくつかの山へとわけていった。
整理は順調に進んでいる。ヤマトの機嫌がいいからだろう。さてあと数枚、というところで、その声は響いた。
『お前は馬鹿か!! ふざけんじゃねえぞアリア!!!』
ぴたり、と書類を分けていた手をとめて、ヤマトはひきつった笑いを浮かべる。今の怒鳴り声には覚えがある。というか、アリアに対してあんな言葉を吐けるのはヤマトの知る限りただ一人で。
「……やっぱボク、こっちの書類も片付けとこ」
震える手で、ヤマトは『シャーロさん行き』と書かれた書類の束を手に取った。