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荒廃都市Concordia  作者: 椎名透
〔大規模マーケット開催……?〕
25/53

【アインさまのおことば】の場合

「アインさま、何か落ちてた」


 そう言って、リターニアがアインに見せたのは、大きな文字で『大規模マーケット』と書かれたチラシだった。リターニアは言動こそ幼いが文字が読めない訳ではない。このチラシの意味することも知っているだろう。それでもアインに見せて判断を委ねるのは、彼女らしいといえば彼女らしい行為だった。


「マーケットですか。確か、三区で開かれるという」


 アインもアインで、なにも言わずそのチラシを受け取り内容を把握しようとする。一通り目を通してから、「そうですね……」と呟いた。


「アインさま?」

「……リターニア、もしあなたさえよければ、このマーケットに参加してみてはいかがでしょう」

「? なんで?」


 不思議そうにリターニアは首をかしげる。この催しに、意味があるとは思えない。ゼウスからのお告げというわけでもないだろう。


「ゼウスは、時には休息も必要だと仰います。これは以前にもお話ししましたね」

「うん。ゼウスさまは、アインさまにお休みの大切さを教えてくださったんだよね」

「ええ。これはわたくしだけでなく、リターニアも当てはまることです。……最近のリターニアは、少々お仕事を頑張りすぎですので、これを息抜きとしてみてはどうでしょう」


 そうだろうか、とリターニアは考える。確かに少々仕事が多いかった気もするが、別段疲れているとは思えない。だが、折角アインが提案したのだ。無下にする理由などリターニアはなかった。


「わかった。アインさまがそう仰るなら、私、マーケット参加する」

「ふふ、楽しんでくださいね、リターニア」


 こうしてリターニアのマーケット参加が決まった。のだが。


(……何を売ればいいんだろう)


 散々迷ったあげく、彼女はたった一つ、自身が胸を張って他者へと伝えられる『ことば』を売ることにした。

 ……それが後に、信者たちによって面倒な事件を呼ぶとも知らずに。



◇◆◇◆◇

【アインさまのおことば】

 出店者:【断罪者】リターニア

『商品』

・アインさまのおことば ~日常編~

 アインが日常で話した何気ない一言が纏められた本。なお、選出にはリターニアだけでなく何人かの神殿勤めたちも協力したらしい。


・アインさまのおことば ~ゼウスさま編~

 ゼウスからのお告げとしてアインが伝えた言葉を纏めた本。些細なお告げから重要なお告げまで種類が豊富。休息云々も当然乗ってある。


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