表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
荒廃都市Concordia  作者: 椎名透
〔0の帰還〕
11/53

イベントエピローグ

 かつん、かつんと足音――冷たい金属同士のものだ――が響く。音の主は機嫌がいいのか、意外にも音程のとれた鼻歌を奏でていた。かつん、かつん。四区を歩いていた足音が不意に止まる。彼――ナンバーゼロは振り返ることなく言葉を発した。


「どうしたの、タケナカ」

「いえ、もうよろしいのかと思いまして」

「うん、もういいんだ。大体はわかったし、知れたから。何人か直接会えなかった人たちもいるけど……」

「他から写真を入手すれば問題ない、と」

「そうそう。大体ね、今回の『これ』だって保険なんだ。もしかしたら必要になるかもしれない、その時のためのね」


 そうですか、とタケナカは言う。「私には、そこまでする理由がわからない」


「えー、どうして? 僕としては一番の方法だと思ったんだけど」

「確かに、あなたの『ストレス発散』という目的をみれば一番の方法でしょう。しかし、それでも私にはわからない。第四区は『私だけで事足りた』はずです」


 明らかに言葉が足りないその台詞に、ゼロは理解を示して笑ってみせた。その笑いは戦い中に見せるものでも、怒りと共に露にするものでもなかった。自嘲、だろうか。タケナカは眉をひそめる。


「……なぜ笑うのです」

「んー、確かにそうなんだけど、前提が僕とタケナカで違う。僕は四区が大好きだ。……だけど、この都市も好きなんだ」

「……」

「それにね、僕には責任がある。僕には理由がある。だから、かな」

「……お人好し」

「あはは、そうだね。でもまあとりあえず今日でおしまい! 僕はしばらく十年前みたいに過ごすことにするよ。まずは家だね、家。更地とか想像してなかったからなあ……」


 先程までの真剣な雰囲気は何処へか。ゼロはよく見せるおちゃらけた口調でそう言ってみせた。何かを諦めたかのようにタケナカは一つ息を吐き、そして小さく何かを呟く。月の下に吹いた風がその言葉を拐い、それは誰にも拾われぬまま霧散した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ