癒しの一時
「おっはよーあーくん!」
「はよ……マジでおはよ」
「マジで……?」
なんという実家のような安心感、たとえ通話アプリ越しでも会話するのがあの二人じゃないと言うだけ癒される。
「まあ……気にすんなよ」
「ふーん?なら気にしなーい」
そっけなく、少し覚めたように対応する幼馴染みが今はありがたい。
昨日のこと、特に根窟街の事は話さないし当分の間は連れていかないことにした。
何故かって?
あんなの居るところにこいつを放り込みたくないだろそりゃ。
相変わらず通話越しにカチカチと鳴るマウス、ノイスキャンセルは頑なに付けないのがまあ彼女らしいか。
「んで、例の変態ビルドはどうなったの?あーくん」
心なしか遊のテンションがワントーン下がっている気がする、まあ俺もなのだが。
だって寝れたの深夜の4時だぞ?お陰で母さんに叩き起こされるまでぐっすりだった。
あぁ、コーヒーが染みる
「ビルドねぇ……とりあえずサブジョブのデメリットをなんとかするのが当分の目的かな」
先日叩きつけられた悲しい事実、LUCビルドでまともに攻撃できたプレイヤーは今まで居ないらしいということ。
おそらく火力の問題ではなくギャンブル性の高さから来る不安定さからなるもの。
でもこのビルド自体は続けていくつもりだ、どうせこの天才《遊》を越えるなら縛りプレイでも何でもして叩き潰す。
子供のからそうだった。
遊がハードモードでクリアするなら俺はルナティックでクリアする、それの更に上の難易度をクリアするなら俺も更に上を。いたちごっこが俺達の自然だ。
「あーくんの事だから教えてくんないんだろうけど、どんなデメリットなのよそれ」
引き気味に聞いてくる我が幼馴染み、まあそうなるよねとしか。言うならば闇鍋で得体の知れないどろどろとした物体を持ち込んできたような物だ、俺だって質問するわそんなん。
「そうだねぇ……強いて言うなら全ての攻撃が確率で威力半減するって感じ」
「…………………………うっわぁ」
「引くなよ泣くじゃん」
「そんな変態ビルド引っ提げてくる方がおかしい」
「マジで泣くぞ?」
「もう泣いとけば?」
幼馴染みに慈悲は無いらしい。
うん、100%俺のせいだねごめんなさい
「ドン引いたら目覚めた、先インしてるから早く来てね~」
プツン、と音を立て急に消える相方。
「えぇ?」
はいはい、俺は眠気覚ましですかっと。コーヒーをイッキ飲みしてデバイスを取り出して寝転がる。
「にっが……イッキすんじゃなかった」
閉じたはずの瞼に、鮮明な光景が広がっていく。
目を開けると根窟街……ではない。
記憶は曖昧だけど二人にここまで送られてからログアウトしたはずだ。
巨木前の噴水、心なしか穏やかな風が吹いている
「とりあえずメッセージ……」
「その必要はありまっせーん!なぜなら一瞬で見つけてしまったから!」
軽快な声、後ろを向けば案の定彼女が居た。よかった、仮面の変態もイケ女の変態も居ない。ただの美少女だ
「今日はどこいく?」
「まずは草原でレベル上げしようっぜ!」
元気がいいようでなにより、いつものごとく走っていくので追いかける。なんかクエストNPCを見失わないように追いかけてる感じだわこれ。
……ライフガードボアには会わないといいな
草原、とは言っても見渡す限り全てが草原と言うわけではない。遠くには山が見えるし前方には獣道が続く森がある。
一番近くで探索できそうな場所と言えばちょうど良くある何かの遺跡後か。
「わあ!ねえあーくん見てあれ!」
「もう気づいてるって服引っ張るな」
「じゃあそこまで勝負!」
この女マジでっ……!追い付けるわけねぇだろがこのお転婆天使め!
……良いだろう、てめぇが近接職の土俵で勝負するなら俺だって魔法職の土俵に引き込んでやらァ!
「ふひひ、『影渡り』」
我ながら不気味すぎる笑いだこと
でもルナの影は捉えた、やつの影に平行すれば同じスピードで走れる!
「はっはー!自分の影に渡られる気持ちはどうかなぁっ!」
「うわっ気持ち悪ッ!そんなこともできるの?コバンザメ?」
「気持ち悪いもコバンザメも結構!勝ちこそ勝利なのだよ」
気持ちいい、気持ち良すぎる。このまま影に張りつきながら遺跡の前で解除して走り抜けばギリギリ勝てる。
まずは一勝、負けたこいつの顔が見える見える……
「――あっ」
「ん?アハッ!ばいばーい」
みるみる遠ざかっていく幼馴染み
普通に魔力消費激しいの忘れてた。
「次は勝つからなぁ!ルナァ!」
「へっへーん、勝てるもんなら勝って――ぷげらぁ!」
ああうん……
また猪にぶっとばされてやがるよあいつ
結局、遺跡までは協力しながら行くことにした
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