6.
「……え?」
突然、藤木たちの後ろから声がして、声がした方に藤木たちが顔を向ける。
そこには藤木たちと同い年くらいの少女が佇んでいた。
少女は黒いワンピースを身に纏っており、雰囲気も夜を感じるような黒をしている。
「寺川さんをどうしたら困らせられるかの話よね?なら、いいアドバイスがあるわよ?」
「アドバイス?」
少女の言葉に藤木が怪訝な顔をしながらそう口を開く。
少女は不気味な笑みを称えると、おもむろに口を開く。
「今度逆らってきたら、――――って、してみるといいわ。ボロボロに泣くと思うわよ?」
少女の発した言葉に藤木たちが驚きの顔をする。
「……面白そうじゃん……」
藤木がその少女の言葉に最初は驚いたものの、徐々に不気味な笑みになり、そう言葉を発する。
「……でもさ、それはちょっとやり過ぎにならない?」
河地が心配になってそう言葉を発するが、藤木に睨まれてしまい、河地は口を噤んでしまう。本村も河地と同じ事を思ったが、藤木の圧力に何も言い返すことが出来ない。
「……あれ?」
山中が公園の外から藤木たちを見つけて小さく声を上げる。
(藤木たちと……あの子は??)
山中は遠目からその様子を見ていたが、特に声を掛ける訳でもなく、その場を去って行った。
***
それからも、藤木たちは揚羽に悪さをしようとしたが、揚羽はその場をうまく交わすために、なるべく単独行動はせずに誰かといるようにしていた。
そんな日々を過ごしていた頃、それは突然起こった……。
ある日の事だった。
部活が終わり、友だちと帰ろうとした時に、顧問の先生に頼まれて楽譜のコピーを手伝う事になった。
コピーが終わったころにはすっかり遅くなったので、急いで帰ろうと誰もいない静まり返った下駄箱で靴を履き替える。
「あっ!寺川さん、見つけた~!最近無視して遊んでくれなかったから寂しかったわぁ~。あ、この前と同じコーラを買ってきてくれる?」
藤木がニヤニヤと笑いながら揚羽にそう言葉を投げかける。傍にいる河地と本村も「よろしくね~」と言って、クスクスと笑っている。
その言葉に揚羽は表情を引き締めって、言葉を綴った。
「悪いけど、あなたたちみたいな人を脅す人におごるお金は無いから」
揚羽が毅然とした態度で藤木たちにそう言葉を放つ。
その言葉に藤木たちは唖然としたが、徐々に怒りが込み上げてくる。
「……取れ」
藤木が小さな声で河地と本村にそう命令する。
河地と本村は頷くとこの前と同じように揚羽からサックスを奪おうとする。
「やめて!!」
揚羽がサックスを抱きかかえる。
――――ガッ……!!!
河地が揚羽の腕を叩き、その一瞬の緩みを突いて、本村がサックスを取り上げる。そして、そのままそのサックスを藤木に渡す。
藤木はケースからサックスを取り出し、不気味な笑みを浮かべる。
「これがどうなってもいいのかなぁ~?」
サックスのケースを乱暴に床に投げ付けて、手にもっているサックスを今にも落としそうな危うい手で不気味にそう言葉を綴る。
その様子に揚羽が拳を握り締めて、身体を恐怖で震わせながら、でも、毅然とした口調で言葉を綴った。
「もし、本当にサックスを壊したら、先生に事情をちゃんと説明します。弁償になったら壊した人の責任だから、弁償するのは藤木さんたちです!」
揚羽が凛とした声でそう言葉を発する。
その言葉に藤木が怒りでワナワナと震える。
「……捕まえろ」
藤木が河地と本村にそう命令する。
「ちょっ……!!」
揚羽が言葉を発すると同時に、河地と本村は揚羽の両腕を捕まえて押さえ付ける。
その行動に揚羽は恐怖を覚え、言葉を発せない。
藤木がおもむろに鞄から大きな裁ちバサミを取り出す。
そして――――。
――――ジャキン……!!!




