11.
愛菜が病院に戻ると、病棟の看護師が愛菜に声を掛ける。
「一ノ瀬さん、何か良いことあったの?顔がなんだか嬉しそうよ?」
看護師が愛菜の表情を見て、いつもと違う少し穏やかな表情をしていたので、そう声を掛ける。
「別に……」
愛菜はその言葉に特に何も答えずに、さっさと病室に戻っていく。
そして、病室に入るなり、ベッドに横になると、愛菜は今日の事を反芻していた。
ホワイトに連れられて学の家に行ったこと……。
石川の作ったお菓子が美味しかったこと……。
そこへ、学がやって来ていろいろと話をしてくれたこと……。
学に少しからかわれるような場面もあったが、なんだかそのからかいもどこか安心した感覚に包まれていた。
そんな事を考えていると、今日の事で少し疲れたのか眠くなってしまい、愛菜はそのままベッドで横たわりながら、意識が落ちていった。
***
(ど……どうしよう……)
次の日も天気が良かったので、愛菜は散歩に出かけた。
いつものように川沿いの道を歩きながら、学の家に行こうかどうかを考える。
(さすがに連日お邪魔するのは悪いよね……)
愛菜が心でそう呟く。
「はぁ~……」
少し残念な気持ちになりながら、川沿いの道を歩き続ける。
その時、ふいに声が聞こえた。
「こんにちは、愛菜ちゃん」
その声に愛菜が顔を上げると、声を掛けたのが学だという事が分かる。
学の腕の中では、ホワイトが心地よさそうにしていた。
「こ……こんにちは……」
愛菜が少し恥ずかしそうにしながら、そう返事をする。
学の話では、今日もホワイトを連れて散歩をしていたら、愛菜の姿を見つけたので声を掛けたという事だった。
「愛菜ちゃん、良かったら今日も遊びに来ない?石川さんが今日はチョコレートムースを作ったって言っていたから、良かったら一緒に食べようよ」
学の言葉に愛菜の中で嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちが交差する。
「でも、連日続けてお邪魔するのも……」
愛菜の中で申し訳ない気持ちが勝ったらしく、そう声を発する。
「大丈夫だよ。石川さん、今日も愛菜ちゃんが来ないかなって言っていたくらいだし」
学が優しい表情をしながら愛菜にそう声を掛ける。
そして、愛菜は今日も学の家にお邪魔することにした。
***
「……あら!いらっしゃい!」




