3.
夜の街を藤木はため息を吐きながら彷徨い歩く。
そして、いつもの自販機でいつもの飲み物を買い、いつもの公園に向かう。
「……いい加減にしてよ」
藤木がベンチに座りながらそう呟く。
そして、買ってきた飲み物の缶を開けて、夜風に当たりながら飲み始める。
「いつもいつも……」
藤木が恨めしそうにそう呟く。
なぜ、藤木が夜遅くに公園に来ているのか?
それは、親がまた喧嘩を始めたので、その喧嘩に巻き込まれないためにいつものように家を出てきたからだった。
藤木は両親と三人暮らしをしている。
しかし、両親は仲が悪く、藤木が物心ついたときから両親は事あるごとに喧嘩をしていた。幼い頃は両親の喧嘩が始まると、家の中の隅の方でガタガタと震えながら、その喧嘩が終わるのをじっと待っていた。
藤木の両親は子供にまで手を上げることは無かったが、興味を示すこともなく、両親にとっては別に居ても居なくてもいい様な、親としても責務を果たさないいい加減な親だった。
しかし、藤木が高校生になり、話が変わってきた。
藤木は両親からある話を聞いて、それを言われるたびに嫌な気持ちを抱いた。
そして、それと同時に揚羽の事が憎い気持ちも膨らんできて、黒い感情が溢れ出してきた。
家族にも友達にも愛されている揚羽が憎くて恨めしくて仕方なかった。
「……もう、いいかな」
藤木がそう言って、空になった缶を乱暴に投げ捨てると、その場を後にした。
***
「……寺川さ~ん!ちょっと……」
学校で、藤木たちが揚羽に声を掛けるが、揚羽は足早にその場を去って行く。
あれから、藤木たちは揚羽に突っかかるようになってきた。
しかし、その度に揚羽は上手くその場を交わしている。
そんなある日のこと……。
揚羽は部室で一人、練習に没頭していて、ふと部室に取り付けられている時計を見ると、下校時間はとっくに過ぎている事に気付いた。
「いっけない!もうこんな時間?!」
揚羽はそう声を上げると、慌ててサックスをケースに入れて片付けると、急いで部室を出る。
そして、下駄箱で靴を履き替えて校舎を出ようとした時だった。
「……あれ?まだ残ってたの?」
揚羽を見つけた藤木が不気味な笑みを浮かべながら揚羽に声を掛ける。傍には河地と本村も一緒だ。
「じゃあ、私はもう帰るから!」
揚羽が作り笑顔をして、いつものようにその場を去ろうとする。
その時だった。
――――ガシッ……!!!




