6.
その図書室に置いてある一つの本に目が留まる。
その本は「海月」という作家の本でタイトルには「雨がやんで光が差す」と、書かれていた。
その本が気になり、愛菜はその本を借りると、病室に持っていき、本を読み始める。
読んでいくと、時折、残酷な描写が描かれているので、一旦本を閉じてしまうのだが、続きが気になり、また本を開く。
その本は虐待を受けて心に傷を負い、苦しみ、葛藤していき、最後は光を見るという内容の作品だった。
愛菜はその本の残酷な描写で顔を背けることがあるものの、没頭してその本を読んでいく。
そして、本が読み終わると、一粒の涙を流した。
***
しばらく雨の日が続き、愛菜は雨の間、本を読んで日々を過ごした。
そして、数日ぶりに雨がやんで地面も乾いてきたので、久し振りに愛菜はお散歩に出かけた。
最初は黙って病院を抜け出して散歩をしていた愛菜だったが、夕飯までにはいつも戻ってきていたため、病院側は愛菜の散歩による外出を正式に認めてくれた。
いつものように病院の川沿いの道を歩く。
すると、どこからか鳴き声が愛菜の耳を捉えた。
「ニャー……ニャー……」
足元にホワイトがやって来て嬉しそうに鳴き声を上げる。
「この前の猫……?……ってことは?!」
愛菜がそこで慌ててその場を離れようとする。
その時だった。
「ホワイトー!待ってよー!!」
学が駆け足でこちらに向かってくるのが見える。
愛菜は「やっぱり!」と思い、その場を静かに離れようとするが、学が愛菜の事にすぐに気が付いてしまう。
「あれ?愛菜ちゃん?」
「っ……」
学の言葉に愛菜が苦渋の表情を浮かべる。
もう少し、自分の動きが早ければ出くわさずに済んだのにと感じながら、愛菜は学を無視するのも悪いと思って、ぶっきらぼうに声を発する。
「こ……こんにちは」
愛菜が無愛想に学に挨拶をする。
「こんにちは、愛菜ちゃん。今日もお散歩?」
愛菜が無愛想に返事したのにもかかわらず、学は特に気にしていないのか、笑顔で愛菜にそう声を掛ける。
そして、学はそう言葉を発すると、愛菜にいろいろと話し始めた。
この前の雨は凄かったことや、今日のお昼ご飯は美味しかったけど、ちょっと辛かったこと、ホワイトと雨の日に家の中でねこじゃらしをホワイト向けて遊んでいたら、ホワイトがムキになっていたこと……。
そんなたわいのない話を学が話していく。
その話に愛菜は特に声を掛ける訳でもなく、ただ黙ってじっと聞いていた。
その時、ホワイトが愛菜に抱っこして欲しいというような仕草をしたので、愛菜はホワイトを抱き上げて頭を優しく撫でていた。
小一時間ぐらいだろうか……。
愛菜にとってどう表現していいか分からない時間が流れる。
そして、この前と同じように愛菜は「時間だから」と言って、その場を去ろうとする。
「またね!」
学が愛菜にそう声を掛ける。
愛菜はその言葉に答えないものの、一度振り返ると、戸惑ったような顔をしながらその場を去って行った。
***
「……それでね……」




