第9章 扉の先のさらに未知の世界へ
「……開けちゃお。」
柚葉は、イチゴの果汁がついた手で小さな扉のノブをひねった。
ギィィ――
扉の向こうからは、ひんやりとした空気と、かすかな甘い香りが漂ってくる。
「なんだろ……お菓子の匂い……?」
誘惑に勝てるはずもなく、柚葉は扉の向こうへ一歩踏み出した。
一方その頃。
「はぁぁ……もう無理……」
「ちょっとまどか、柚葉がいない……!」
泥だらけの華が辺りを見回す。
「え!? また勝手にどこか行ったの!? 何回目だよおおおお!!」
まどかの叫びが農園中に響き渡った。
扉の向こう
柚葉の足元はふかふかの絨毯だった。
暗がりを抜けると、目の前に広がったのは――
まるでファンタジーのお菓子の国のような場所。
巨大なチョコレートの柱、壁にはカラフルなマカロンが埋め込まれている。
床には金平糖の小道が続き、遠くには砂糖細工の街灯がぽつぽつと灯っていた。
「……わぁぁ……お菓子の世界……!?」
柚葉は思わず口を開けて、ふわふわと足を進める。
すると――
「……おや? 迷い込んだのは……新しいお客様かな?」
耳元で囁くような声がした。
振り向くと、チョコレート色のローブをまとった、背の高い男が立っていた。
頭には砂糖菓子のような奇妙な王冠をのせている。
「わ、わわっ!? だ、誰ですか!?」
柚葉はお菓子の床に尻もちをついた。
男はクスリと笑って、膝を折って目線を合わせてくる。
「私はこの 『スイーツ王国・深層区』 の執事だよ。
ようこそ、甘美なる地下の楽園へ……お嬢さん。」
一方その頃――
「柚葉ぁぁぁぁああああ!!!」
「どこ行ったのーーー!!」
農園で絶叫するまどかと華。
しかし彼女たちはまだ知らない――
柚葉が新たな甘い罠に捕まろうとしていることを……。




