第6章 蠅野レイの地上大冒険 〜まさかの女子高生たちと公園で再会編〜
夜の公園。
少年と別れた蠅野レイ(イケメンVer.)は、
月明かりのベンチでひとり物思いに耽っていた。
「……この地上で、
私の居場所は……どこだ……」
背中の翅が静かに鳴く。
そのとき――
公園の奥から聞き覚えのある声が響いた。
「まどか、こっちこっちー!
夜桜、意外と咲いてるじゃん〜!」
蠅野の耳(複眼)に、
あの地下迷宮で共に生き抜いた
3人の声がはっきり届く。
「まさか地上でも花見するとは思わなかったよ……」
「だって卒業前にもう一回お花見したかったんだもーん!」
まどか、華、柚葉――
迷宮を共に脱出した、かけがえのないお嬢様たち。
蠅野は思わず立ち上がる。
「……お嬢様方……!!」
声をかけようとして、
自分の今の姿に気づいた。
スーツ姿のイケメンのまま――
だが背中のシャツからは
微妙に翅がのぞいている。
「キャーーー! 屋台だ屋台! 花見団子あるー!」
「お腹すいたーー!」
「ちょっと! 夜中に食べすぎは太るって言ったの誰ー!」
3人の無防備な笑い声に、
蠅野の胸が……いや、胸板が熱くなる。
「……会いたい……
だが……ハエだとバレたら……
また嫌われる……!」
蠅野は木陰で葛藤した。
そのとき――
柚葉がふと背後を振り返り、
蠅野と目が合った。
「……あれ……?」
まどかと華も振り向く。
「……あっ!!」
3人の目が一斉にまん丸になる。
「蠅野……レイ……さん……!?」
蠅野はスッと一礼した。
「……お嬢様方……
お久しゅうございます……
地上でもお元気そうで……!」
一瞬の沈黙。
「……何してんのアンタ!!!」
「えっ、なんで公園!?」
「ていうか、その格好なに!? ホスト!? ハエのホスト!?!?」
矢継ぎ早のツッコミに
蠅野の顔(イケメンVer.)が真っ赤になる。
「でも……会えてちょっと嬉しいかも……」
「……そ、そうだね……」
「……うん、やっぱり変なハエだけど……元気そうでよかった!」
蠅野の胸(板)が熱くなった。
「……お嬢様方……
お慕い申し上げております……!」
背中の翅がブゥゥと唸った。
「やっぱハエじゃん!!!!」
3人の爆笑が、公園の夜空に響き渡った――。




