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「新宿迷宮女子高生」   作者: 南蛇井


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第5章 蠅野レイの地上大冒険 〜夜の公園で人間と語り合い編〜

居酒屋を追い出され、

スイーツにも振られ、

ナンパも失敗し――


蠅野レイ(イケメンVer.)は

新宿の夜の公園にたどり着いていた。


春の夜風が冷たい。


蠅野は人化を維持したまま、

誰もいないベンチに腰掛けた。


「……人間の世界……

甘くなど……なかった……」


翅がピクッと震え、

彼の背中で微かにブーンと鳴く。


その時――


「……あの、すみません……」


声をかけてきたのは、

制服姿の少年だった。


「……ここ、座っていいですか?」


蠅野は小さく頷いた。


少年はおそるおそる隣に腰かけると、

缶コーヒーを取り出した。


「……さっきから泣いてたんですか?」


「……泣いてなどおらん……

私はただ、世界の小ささを思い知っただけだ……」


少年はクスッと笑って、

自分の缶コーヒーを蠅野に差し出す。


「これ、あげます。

僕もさっき怒られて落ち込んでて……

だからなんか……話したくて。」


蠅野は缶コーヒーを受け取った。


「……人間よ……

お前は何を憂えている?」


少年は月を見上げながら、ぽつりぽつりと話し出した。


・勉強のこと

・親とのケンカ

・将来の不安


それは蠅野にとって、

人間たちの『小さくて大きな悩み』だった。


蠅野は黙って耳を傾ける。


ときどき背中の翅がブーンと鳴り、

少年に不審がられるたびに

「気のせいだ」とごまかした。


「……生きるのって、面倒くさいですよね。」


「……ふむ……面倒だな……

私も面倒だらけだ……

人間に追い払われ、スイーツを奪われ、

擬態も崩れる……」


「……え?」


「いや、なんでもない。」


少年は小さく笑った。


「……ありがとう。

変な人だけど、話せてよかったです。」


「……人間よ……」


蠅野は夜風に髪をなびかせ、

凛とした声で言った。


「お前も私も、命ある者……

迷いながら進むしかないのだ……」


少年が立ち上がり、

小さく頭を下げて去っていく。


蠅野はひとり、空を見上げた。


「……私も……進むしかないか……

この地上で……ハエなりに……!」


夜の新宿公園で、

誰にも知られず哲学するイケメン蠅野レイであった――。

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