第3章 蠅野レイの地上大冒険 〜イケメン姿でナンパ体験編〜
クレープ屋もファミレスも追い出され、
スイーツの亡霊と化した蠅野レイ(ハエ)。
「……くっ……!
人間たちめ……私をハエと侮りおって……」
だが、彼には切り札があった。
そう――『人化の術』。
迷宮の奥で女子高生たちを惑わせたあの擬人化スキルを、
地上でも発動するしかない――!
「……人間の姿さえあれば……
誰も私を追い払えまい……!」
ブゥゥゥゥ……パァァァァ……!
光に包まれる蠅野レイ。
次の瞬間――
そこに立っていたのは――
黒髪オールバックに整った顔立ち、
黒スーツに身を包んだモデル級イケメン。
「ふ……完璧だ……!」
彼はすぐさま、新宿東口の繁華街へと歩を進めた。
女子高生グループがキャッキャと歩いている。
蠅野(イケメンVer.)はゆったりと近づき――
「……お嬢様方、迷っておられますね?」
「えっ……あ、はい……」
女子たちは突然現れた謎のイケメンに
目をパチクリさせて硬直した。
蠅野は甘く微笑んだ。
「良ければ――
美味しいパフェの店、
ご案内いたしましょう。」
「……きゃーーーーー!!!
イケメン! イケメン! 誰!? モデル!? ホスト!? え!?!?」
一瞬でスマホのシャッター音が鳴り響く。
「お嬢様方……お名前だけでも……」
蠅野が滑らかに手を差し出したその時――
ブゥゥゥ……
背中のシャツの下から、
微かに羽音が鳴った。
「……えっ……?」
「今……ブーンって……」
蠅野は笑顔のまま背筋を伸ばす。
「気のせいです……さあ、パフェへ――」
ブゥゥゥゥゥゥゥ……!!!
背中のシャツがぷくっと膨らみ、
小さな翅がチラリと見えた。
「……ハエだああああああああああ!!!!」
女子高生たちは一斉に悲鳴を上げて
逃げていった。
蠅野は人混みのど真ん中で天を仰ぐ。
「……人間とは……
儚くも残酷なものよ……!」
しかし彼の心は折れていなかった。
「……次こそは……
人間社会に溶け込んでみせる……!」
イケメン蠅野レイの新宿ナンパ体験、
あえなく大失敗――。




