第2章 クレープと謎の雑貨店
「柚葉ぁぁぁぁっ! 走るなって言ってんでしょぉぉぉ!!」
地下通路にまどかの叫びが響く。
人混みをかき分け、華とまどかはパン袋を片手に柚葉を追いかける。
その先には、淡いピンク色のテントを構えた小さなクレープ屋さんがあった。
「いらっしゃいませ〜。お姉さんたち、今日は特製いちご生クリームがおすすめですよ〜。」
エプロン姿の店員さんが、にこやかに手を振る。
柚葉はもう、笑顔で財布を握りしめていた。
「いちご生クリーム3つください!」
「いや待てって! さっきパン食べたばっかでしょ!?」
「別腹!!」
「……まどか、諦めよ。私も一個頼むわ。」
華が無抵抗でレジに並んでいる。
まどかはため息をつきながら、結局同じ列に加わった。
数分後。
3人は地下街の片隅でクレープをかじる。
頭上の蛍光灯が少しチカチカしていて、どこか心細い。
「……やっぱり新宿の地下って、深いね。」
華が、クレープの先端をかじりながらポツリと言う。
「深いっていうか、出口がどこか分かんないのが問題なの!!」
まどかが怒鳴った直後――
柚葉が、口の周りを生クリームだらけにしながら、唐突に指をさした。
「あそこ! なんか面白そうな店あるよ!」
指の先には、ちょっと暗めのアーケードの奥に、小さな雑貨店があった。
金色のランプがぶら下がり、店先には外国の絨毯や謎の壺が無造作に積まれている。
看板にはこう書いてあった。
《地下街のなんでも屋 ランプの魔女》
「……なんでも屋? なんか怪しくない?」
まどかが眉をひそめる。
「でもさー、こういうとこに出口のヒントあるかもだよ! 地下街マップ売ってるとか!」
柚葉はすでに吸い込まれるように入口へ。
「……もういいわ。ここまで来たら付き合うしかない。」
華とまどかも、半ば諦め顔で雑貨店の扉をくぐった。
カランカラン……
店内は思ったより広くて、空気が少し埃っぽい。
所狭しと置かれた壺、アクセサリー、小さな仮面……。
「いらっしゃいませ〜。迷える子羊ちゃんたちかしら?」
カウンターの奥から、派手なターバンを巻いた女性がゆらりと現れた。
長い指には、じゃらじゃらと指輪が光っている。
「出た、なんかいかにもヤバそうな人……」
まどかが小声でつぶやく。
「アナタたち……もしかして、地下から出られなくなってるんじゃない?」
女性の目が細く光った。
3人の背筋が同時にゾッとしたのは、言うまでもない――。




