第16章 さらなる迷宮の深みに そして正体バレる
蠅野レイ――
黒スーツの完璧な立ち居振る舞いで、三人を迷宮の奥へと導いていた……はずだった。
しかし――
「……おかしい。」
まどかが眉間にシワを寄せる。
「ずっと同じ場所ぐるぐるしてない……?」
壁には、先ほど自分たちが落書きで残した
『華参上♡』の文字が、うっすらと光っている。
「……あれ? 出口って……?」
華が不安そうに蠅野を見る。
蠅野は汗をかいた額をハンカチでぬぐった。
「……だ、大丈夫です。
すぐに……すぐに出られますので……」
「いや、汗の量おかしいだろ。」
まどかが冷たい視線を送る。
「それに……ずっと聞こえる『ブーン』って音……」
柚葉が小声で言った。
蠅野は、スッと指で自分の襟元を押さえたが――
ついに――
「バサッ!!」
スーツの背中が破け、そこから――
透明の翅が二枚、ブブブブッと震えながら露わになった!!
「……あ、ああああああ!!!
羽だ!! ハエだ!! こいつハエだ!!!」
蠅野は観念したように、涼しい顔で微笑んだ。
「……申し遅れました。
実は私は――
『人化の術』で人間に擬態していた蠅でございます。」
「やっぱりハエかぁぁぁぁぁ!!!!」
柚葉はショックを受けつつも、
蠅野の翅を掴んでぶんぶん振り回す。
「嘘つきー!! でも好きー!! でも嘘つきー!!!」
まどかと華は絶句していた。
その時、迷宮の壁が突然崩れ――
巨大な空間が現れた。
そこには、無数の光る道が蜘蛛の巣のように絡まり合っている。
「……まさか……」
蠅野は青ざめた顔――いや、青ざめた複眼で呟いた。
「ここは……『迷宮の最深域』……
私も入ったことのない……最も危険な層です……」
まどかが頭を抱える。
「お前が間違えて連れてきたんだろがーー!!」
華が泣きそうな声を上げる。
「わたしたち……帰れないの……?」
柚葉だけは、蠅野の翅をぎゅっと握りしめ、
ちょっとキラキラした目で叫んだ。
「蠅野さん! ハエでも好きだから!
責任取って絶対に出口まで連れてって!!」
「……お嬢様……!」
人間ハエと女子高生たちの、
果てなき迷宮最終脱出劇が――
今、幕を開ける――!!!




