第14章 迷宮の案内人は超イケメン(正体:ハエ)
「……どっちに行けばいいの……」
無数に枝分かれした白い廊下。
三人は泣きそうな顔で立ち尽くしていた。
「右? 左? 上? 下? ……階段まであるし!!」
まどかが頭を抱える。
そのとき――
コツ、コツ、コツ……
静寂の迷宮に、誰かの足音が響いた。
「……っ!!」
三人が振り向くと、
白い迷宮の奥から、ゆっくりと歩いてくる影。
やがて姿を現したのは――
漆黒のスーツにシルクのシャツ、長身で彫刻のように整った顔立ち。
切れ長の瞳が、微笑むと同時に人を惑わせる妖しい輝きを放つ。
「お困りのようですね――お嬢さん方。」
その声は低く、柔らかく、耳元で囁くようだった。
「……イ……イケメン……!!」
柚葉が目をハートにして叫んだ。
男は恭しく一礼する。
「私はこの迷宮の案内人。
……名前は……そうですね――蠅野レイ と申します。」
「蠅野……?」
まどかが眉をひそめた。
「えっ、イケメンなのに名前に『蠅』って……」
華が小声でツッコむ。
しかし柚葉は完全に舞い上がっていた。
「蠅野さん! わたしたち、地上に帰りたいんです! 道を教えてくださいっ!!」
蠅野は口元を柔らかく歪めて笑った。
「もちろんです。
私の後ろをついてきてください――
……必ずや、光の出口までご案内いたします。」
ヒュー……
彼が歩き出すと、どこからともなく微かに羽音のようなノイズが廊下に混じった。
「……今、なんかブーーンって……?」
まどかが呟いたが、華は気のせいだと思って首を振った。
柚葉は蠅野の背中を追いかけ、頬を赤くしていた。
だが――
蠅野の黒いスーツの袖口をよく見ると……
小さな複眼が、光を反射して怪しく光っているのだった――。




