第10章 甘美なるスイーツ王国
「こちらへどうぞ、お嬢さん……足元にお気をつけて。」
砂糖のローブをまとった執事に先導され、柚葉は夢中でお菓子の街を歩いていた。
道の両脇にはクッキーの家や、飴細工の噴水が立ち並び、
道端ではマカロン帽子をかぶった小人たちがキャラメルの箱を運んでいる。
「……わぁぁ……夢みたい……お腹すいた……」
「ふふ、どうぞ召し上がって。ここのスイーツは、迷える者だけが味わえる特別なものですから。」
執事が差し出したのは、小さなプディングが乗った銀の皿。
ぷるぷると揺れる黄金のプリンに、柚葉は目をキラキラさせた。
「い、いただきます……っ!」
一口。
とろりと口の中に広がる優しい甘さと、ほのかなカラメルの苦味。
「おいしいぃぃぃぃぃ……!!」
思わず両手でほっぺを押さえる柚葉。
執事は薄く笑みを浮かべた。
「ここは『スイーツ王国・深層区』――
迷い人を甘美で満たし、すべてを忘れさせる楽園です。
あなたも……心ゆくまで甘さに溺れてください。」
一方その頃。
「柚葉ーー!! どこにいるのーー!!」
農園を飛び出した華とまどかは、苺畑の奥で不自然に開いた扉を発見していた。
「まどか……これって……」
「また勝手に入ったんだよ絶対……もうアイツは……!」
ドアの向こうから漂う、やけに甘い匂い。
まどかは意を決してノブをひねった。
ズリュンッ――
二人もふわふわの絨毯の廊下を抜け、次の瞬間、目の前に広がったのは――
「……お、お菓子の国……?」
「……夢かこれ……」
砂糖の道を進むと、あちこちにお菓子職人の小人たちが笑顔で手を振ってくる。
「……華、アレ……」
二人の視線の先には――
銀の皿を抱えて、プリンを幸せそうに頬張る柚葉の姿があった。
「……柚葉……!!」
「あ! 二人とも! ここ、すっごいの!!
プリンはとろとろだし、チョコケーキはほろほろだし――
しかも食べ放題!!」
「バカ! だからそういうのが一番危ないって言ってんのよーーー!!」
華が泣きそうな声で叫んだが――
甘美な香りが、二人の鼻にもふわりと届いてしまった。
執事が恭しく二人にお菓子を差し出す。
「さぁ……お二人も、迷いを忘れて一口いかがですか……?」
「ちょっと……一口だけ……」
「華ーーー!!!」




