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第1話 愛する妻

 俺たちはいつものように、村の外れの野原で野草を摘んでいた。アイリは、彼女の好きなハーブや花を見つけるたびに目を輝かせる。彼女のそんな姿を見るのが、俺は何よりも好きだ。


 アイリが手に取った一輪の野花を優しく観察している姿は、なんとも言えず美しい。彼女は自然の中で本当に生き生きとしていて、その笑顔がいつも俺の心を温かくしてくれるんだ。彼女の隣で自然の美しさを感じられることに、心から感謝している。


「ねえジュラーク、この花、きれいだね」


 アイリが言った。彼女の声にはいつも喜びが溢れている。


「ああ、本当にな……お前がそばにいると、どんな花よりももっと輝いて見える」


 俺は答えた。アイリははにかみながらも、嬉しそうに笑った。


 こんな風に、俺たちは自然を愛しみながら、平和な日々を過ごしている。何もかもが完璧に感じられる瞬間だ。こんな日々が、ずっと続けばいいと、心から願っている。



 出会ったのは、村の一番賑やかな日、年に一度の祭りの日だった。村中が飾り付けられ、至る所で音楽や笑い声が響いている。そんな中、俺はひときわ目立つ女性を見つけた。アイリだ。彼女は周りを見渡していて、どうやら迷っているらしかった。


 俺は何を思ったか、彼女に声をかけた。


「迷ってるのか?」


 アイリはびっくりしたように振り返る。


「ええ、ちょっと……」


その時の彼女の表情と声のトーンが、なんとも心地よかった。


 その日、俺は彼女と祭りを一緒に過ごした。屋台を見て回り、地元の料理を食べ、祭りの雰囲気を楽しんだ。アイリの笑顔は次第に自然になり、俺たちはすぐに打ち解けた。


 彼女の純粋さが、俺の心に深く響いたんだ。彼女の無邪気な笑い、興味深く物事を見つめる目、そして何よりもその純粋な心。それらすべてが、俺を引きつけた。


 そんな風にして、俺たちの物語は始まった。あの日の出会いが、今の俺たちを作り上げたんだ。



 俺たちが村の小川のほとりを散歩していると、アイリが突然、真剣な表情で言った。


「ジュラーク、私たちずっと一緒にいようね」


 彼女の声には、深い愛情と少しの不安が混ざっていた。


 俺はアイリをじっと見つめて、心からの言葉を返した。


「ああ、一緒にいよう。お前となら、どんな未来でも、どこへでも行ける」


俺たちはお互いの手を握り、その瞬間、すべての言葉が不要なほど強い絆を感じた。


 アイリの目が輝き、彼女は俺の手をしっかりと握り返してきた。


「ジュラークとなら、どんな困難も乗り越えられる……私たちの愛は永遠だね」


 その言葉を聞いて、俺は何もかもが正しい方向に進んでいると確信した。アイリとの未来を思うと、胸が躍る。俺たちの愛は、どんな障害にも負けない。そう信じて疑わなかった。



 村の静かな夜、星空の下で、俺たちは永遠の約束を交わした。アイリの目を見つめながら、俺は言った。


「この先、何があっても、俺はお前を守る。お前との日々が、俺の一番の宝物だ」


 アイリは優しい微笑みを浮かべて。


「ジュラーク、私も同じよ。どんな時も、あなたのそばにいるわ」


 彼女の言葉には揺るぎない決意が込められていた。


 俺たちの愛は、確かなものだと信じていた。未来がどんなに不確かであっても、お互いへの愛情は変わらない。その信念が、俺たちを強く結びつけていた。


 だが、その時はまだ知らなかった。この約束が試される日が、もうすぐ訪れるとは。




 俺たちはゆっくりと家に向かう道を歩いていた。夕日が空をオレンジ色に染め上げ、その美しさが二人の心を和ませていた。


「ジュラーク、私たちの未来、どんなのがいい?」


 アイリがふと聞いてきた。彼女の声には、夢と好奇心が込められていた。


 俺はちょっと考えてから。


「家族を持つのもいいな。お前と子供たちと一緒にいるのを想像するだけで、俺は幸せだ」


 アイリは嬉しそうに笑う。


「私もそう思う。それに、一緒に世界中を旅してみたいわ。色々な場所を見て、新しいことを体験するの」


 そんな風にして、俺たちはさまざまな夢を語り合った。家族を持つこと、世界を見ること、共に歩む人生の中でさまざまな経験を共有すること。それらすべてが、俺たちの未来の夢だった。


 未来は不確かだが、お互いの夢を共有することで、俺たちの絆はさらに強くなっていく。そんな未来を思うと、俺は何もかもが順調に進むと信じて疑わなかったんだ。




 アイリはセレンディア村出身だ。彼女が育った村は、都会に近くて開放的な文化が根付いている。彼女の純粋さや好奇心は、そんな環境の中で育まれたんだろう。


 俺の出身は、もっと遠くの辺境にあるエンバース村。森に囲まれた静かな村で、俺の性格はそこで形成された。幼いころの魔物の襲撃という厳しい経験も、俺を強くした。


 俺たち二人は、全く異なる場所で育った。でも、その出身の違いを超えて、俺たちの愛は育った。アイリと出会ってからの日々は、俺にとって新しい発見の連続だった。彼女の視点は、いつも俺に新鮮な驚きを与える。


 出身地がどこであれ、俺たちの愛は本物だ。異なる背景から来た二人が出会い、愛し合う。それが、俺たちの物語の美しいところさ。




 結婚してから早くも2年が経った。この2年間、俺たちは様々な困難に直面した。村での暮らしは時に厳しく、生活のために多くの努力が必要だった。しかし、そのすべてをアイリと二人で乗り越えてきた。


 たとえば、昨年、大雨で作物がダメになったときも、アイリは不平を一つも言わず、一緒に解決策を探してくれた。アイリのそんな強さに、俺はいつも励まされる。


 また、俺自身が少し病気になった時も、アイリは一晩中、俺のそばで看病してくれた。その時、彼女の優しさと愛情を改めて感じたんだ。


 困難を一緒に乗り越えるたびに、俺たちの愛はより強固になっていった。苦しい時期を共に過ごすことで、俺たちの絆はより深まり、お互いをより深く理解するようになった。


 俺はアイリとの毎日に感謝している。彼女との結婚は、俺の人生で最高の決断だった。これからも二人でどんな困難も乗り越えていけると信じている。




 しかし、数日後のある朝、俺たちの小さな家に、王国の使者がやってきた。手渡した封筒には、アイリを王国に招聘する公式の書状が入っていた。


 これが俺とアイリの運命を大きく変えることとなる。


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