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白夜の中のわざわい 中編

 

 だが、翌日、目覚めれば部屋に風穴が空いている。


 嫌な予感の当たり、スケーイトは消え、奥に隠して置いた本は、修理代が未知数の大穴となっていた。


「クソッ!! あの黒髪のっぽの、魔術師め覚えていろよ」


 っと、ベットを殴るが、自分の手が痛いだけだ。


 俺も大人だが、今回はない。苛立ちをぶつけても仕方ないってものだろう。

 宿から出て相棒を探す。ちなみに、壁は全財産の半分以上、払わされた。


 そして白夜の空の下を歩きながら、思い返す。


 今回、手順を踏まなければ、この村から出る事は出来ない。

 村自体は小さい。しかし闇雲に、動いている人間を探すのは難しい……。


 ――だが、見つけた!


 本の最初の所有者だろう、俺が最初ぶつかったあの女だ。

 砂漠の民の姿で、耳に月のピアス、そして髪は赤い。


 太陽の色だ。


「久しぶり」

 そう声をかけるが、警戒心の籠る目で見つめて来る。視線が痛てえ。


「貴方は昨日、教会の前を歩いていたよね。その時、貴方はある本を持っていた、間違っているか?」


 彼女は、俺の身なりを素早く観察する。

 でも、それは一般的範囲の無遠慮なそれで、逃げる様子はないようだ。


「もしかして、今、あなたがあの本を持っているの?」


「いや、仲間が持っている。だが……、だが、今日の朝、その本と一緒に、デートへ行ってしまったらしい。どこへか知ってるか?」


「あぁ〜、どうしよう。本当に?」

 彼女は、文字通り頭を抱えた。


「そんなにヤバい、もんなのか?」

「ちょっとこっちへ、来て」


 彼女は、懐から水筒を出すと、コップについで俺に持たせる。


「何だこれは?」

「いいから、いいから」


 そう言うだけでベンチへ連れて行かれ、 座らせられる。


「落ち着いて聞いてね。貴方はここへ来たばかりの様だから、知らないかもしれないけれど、ここへ入ったらもう出られない可能性があるの、死ぬまで永久にね」


「それはだいたい知っている」


「それにしては、ずいぶん落ち着いているのね」

 彼女は、目をパチパチさせて、俺を見る。


「いいから、続きを」


「あぁ……そうね。ごめんなさい。止められた水が腐るように、天空からの光まで濁り始めている。そんな……太陽も隠された空間で、人が正気を保ってられる期間は少ないの」


「は? そんな詩的な雰囲気を混ぜて説明するな。お前はそんな古代からいるのか? と、そこは置いておくとして、お前の言う通り相棒の黒魔術師の様子がおかしい。正気に戻す方法は?」


「それは仕方ないのよ。黒魔術師なのだから」

「じゃー、一体、何が言いたいんだ。もっと掻い摘まんでは話してくれ!」


「私が過去、会った黒魔術師の魔法が、私から白い本を受け取り、貴方たちが魔物を倒したことによって、お友達の黒魔術師の使うべき素材として完成しているはずよ?」

「後、黒魔術師が、神の声を聞き完成させるってやつだな?」


「そうよ。すべてが成功すればって、希望者的観測から導きだされた答えだけれどね」


「しかし、改めて考えれば、女、お前はどうしてそんな事を知っている? 黒魔術師は禍々しく、不幸を運ぶ存在って考えが一般的だろう? 今も、昔も」


「彼ら、任務遂行のためなら手段を選ばないみたい。自分の死を聡ったら私を材料の一部、彼の死によって補えない欠損を、補う道具として、相棒だった私のことを使ったみたい。どうせ黒魔術師の警護に失敗した私が、教会へ帰っても長くは生きられないからいいけど。黒魔術師の死後、自分の命の使い方については、貴女も考えておく事ね」


 彼女は俺の反応を確かめる様に、こちらを見る。


「はぁ……、いやなことを聞いた。大丈夫、黒魔術師の相棒を縛るシステムは未来では、より、見える形で健在だ。選択権は、以前より無いに等しい」


「あら、可愛そう。お茶の飲むなら今よ」

「いや、まだまだ厄介な事があるだろ……」

「まぁ、そうね」


 女はそう軽く言う。そこは否定しろよ……。


「でも、あの本の仕上げは簡単らしいわ。でも、2番めの黒魔術師が3番目がやるだろうとしかいわなかったから……。完成したら、教会の鈴がリンリンて、鳴って誕生の時を教えてくれるらしいわ」


「今時は、リンリンってならないぞ」

「あら、そーう?」


「私たち教会の仕事はそれを現世へ持ち帰り、その本に書かれた人物について暗号か、歴史経過から辿って、後継者と思われる人物のポスト入れさえすれば教会のお仕事は終了。受け取った者も教会に持って行けば終了。教会で邪気は払われるわ」


「呪ったと思われる人物の代行者を探し、呪いのシステムを弱めるってやつか。黒魔術師が絡んでいるのに、そんな簡単なのか? 何かを、隠すのは得意だろ?」


「ここへ至るまでに、何百年もかかっているんだってば、ところで、お茶を飲む?」

「いや、まだだ」


「要点を言うと……呪いを解く過程に、呪いの蓄積って過程があるだけ」

「さすが、黒魔術師様だな。で?」


「巡りめぐったあの本は、この白夜の街の呪いを浄化させるために、この白夜の下で増えてしまっている呪いや、災いを集めるって利点になっている。もう1つの利点が、この世界の根本、呪いの大元の魂も呼び覚まそうとしてるみたい。貴方のお友達が生贄の役割をして、それを倒して終わり。だから、お友達のデートはその過程だと思うわ。でも、黒魔術師なら乗りこなせるでしょう?」


「よし! お茶を飲もう」

「今生、最後の大傑作なのよ」

 そう言って彼女が出したお茶は、タンニンが大暴れしている味だった。


「なんで、こんなにまずいんだ……」

「あー迷い人に、帰られません。永遠に。って伝えた後の、気付け薬なのよ。復活した?」


「おかげさまで、でも、何でそんな危険な物を進んで作るんだ? 俺ならそんな事聞いたら、夢見て過ごすことを選択する」


「それが……黒魔術師を待ちわび過ぎて、暇だったのよ。私の相棒の黒魔術師は、私達に出る方法を教えてくれたけれど、すべての人が帰られるものではないと言う認識はあったの。そして私はそっち側になっていたから……いろいろ極めちゃった」


「さいですか。まぁー、苦いが、後味引く苦さではないから、成功しているぜ。このお茶は」

「ふふふ、お世辞でも嬉しい」


「1人目は失敗して、2人は倍、頑張って、次の貴方のお友達の黒魔術師が、この世界を終わらせる。その時が満ちるのを、待っていたわずっと……」


「だが、今、肝心の黒魔術師が、その本に精神が飲まれかけようとしてるがな……」


「うそ!? 黒魔術師がおかしくなったって、彼らの奇行の事じゃないの?」

「アレはまだ、若いからそういうことはあまりない。白い本に操られているんだ」


「大変じゃない!!」

 彼女は、目ん玉をひんむいて驚いている。


「お茶飲むか?」


「いたただくわ、ってまずぃわぁ……なんなのこれ? 私、覚悟を決めていたから、飲む必要なかったのよ。だから、隠し味を楽しく入れられたのに!」


「じゃ、責任として飲んで正解。……元凶のところまで連れて行ってくれ! 追いついて、本を取り上げる。そしてお前らは次の黒魔術師を探せ!」


 それから女は、大工が使っている資材運び用の馬と。道に詳しい御者を調達して、俺達を元凶の太陽を飲み込んだ魔物のいる、人知れずの谷に誘導した。


「なんで、お前までついて来るんだ?」

「それは……いいじゃない。うるさい相棒に伝えるためよ」

 女は髪を押さえながら、ガタガタガと音をたてて荷台の上で大声を張り上げている。


「お前のするべきことは、終わったのなら、最後くらい、自由にすればいいだろう?」

「えっなんですって!? ってあれ、見て」


 彼女は、ピョンピョン跳んでいるのっぽを指さす。


「どうするの?」


 俺は荷台をよちよち歩くと、「こうする――!!」と言い。

 荷台に置いてあった手ごろな、携帯用のほし草を、狙いを定めて相棒へと投げた。


 そして、それは無防備な背中にヒット!、呼吸が出来なくなったのか、倒れて動かなくなった。


「正気!? 貴方、お友達を殺す気なの!?」


「俺の役目の半分はそれだ」


 馬車を止めて、「こちらには絶対に近寄るな」と告げて、荒縄を持ってスケーイトに近づく。

 まだ、息はある、体も変な風に曲がってないか……。



 ――よし! 大丈夫だ!


 続く




見ていただきありがとうございました。


またどこかで!

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