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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

別の世界ではただの日常です

貴方の夢を決めるお手伝いをします

作者: 茅野榛人

 私は、努力と言う言葉が嫌いだ。

 夢を持ち、夢を叶える為に精一杯の努力をして、そして潰される。

 努力なんて、私のような者を安心させる為の言葉でしかない。

 夢を持っても、何一つ良い事がない。

 そのような思考になってしまった私を、救済してもらえるかもしれないサイトを発見した。

 サイト名は『貴方の夢を決めるお手伝いをします』である。

 どうやらこのサイトは、ありとあらゆる個人情報や、自分の夢を入力すると、夢を叶える方法、そして夢を叶える事が出来る日を、教えてくれると言うサイトらしい。

 このサイトで、自分に一番合った夢を選び、叶えようとすれば、きっと夢が叶う。

 私はサイトに個人情報を打ち込んだ。

 更に幼稚園・保育園時代の記憶、小学校時代の記憶と言った、現在に至るまでの、細かな生い立ちの情報まで入力させられた。

 流石に入力し終わるまでにかなりの時間がかかったが、最後に自分が叶えたい夢を入力して、結果を見た。

 すると夢を叶える方法がずらりと表示され、夢を叶える事が出来る日も表示された。

 しかし夢を叶える事が出来る日の部分には、今日から四百十四年後の日付が表示されていた。

 更に夢を叶える方法の部分をよく見てみると、寿命が全く考慮されていない内容だった。

 つまり、こう言う事だ。

 今から私の持っている夢を叶えようとして、必死に勉強や努力を積み重ねると、寿命が尽きてしまうと言う事である。

 実は私自身も、絶望を恐れて目を逸らしていただけで、薄々気が付いてはいた。

 まあ冷静に考えれば、今日まで自分なりに努力して、叶えられなかったのだから、当然の結果と言えるであろう。

 こうなったら、ありとあらゆる夢を入力して、どれが一番私に合っているかを決める!


 思いつく限りの夢は全て入力した。

 しかしどれも、今から始めるには遅過ぎると言う結果が出てしまった。

 私の人生の間で叶える事の出来る夢は、無いと言う事である。

 しかし私はこれでスッキリした。

 これでもう、何も思い残すことなく死ぬ事が出来る。

 死ぬ直前になって、もしかしたらこれなら叶えられるかもと思い上がって、トライして、失敗してを何度も繰り返して、何にも夢を叶える事の出来ない無駄な人生を、無駄に引き延ばす必要はない。

 このサイトには感謝をする。

 私の希望を、全て潰してくれたのだから。

 サイトを閉じて死ぬ準備をしようと、『結果を閉じる』と書かれたボタンをクリックした。

 するとその先には文章があった。

『このサイトを利用して、もし絶望した方達がいらっしゃられたら、その方達にどうか伝えたい。確かにこのサイトは、嘘偽りない情報を伝えます。表示された結果は、全て正しい情報です。しかしその情報は、最新の情報をインプットした機械が出したものです。私は、この世の中の全ての生き物には、様々な可能性があると信じています。現にこの世の中には、まだまだ多くの謎があります。つまり、このサイトが出した結果を、突き破る事も可能なのではないかと、私は信じています。どうか絶望をせず、自分に秘められた可能性を見出せるように、努力してみて下さい』

 やはり私は努力と言う言葉が嫌いだ。

 この文章の所為で、私は寿命が尽きるまで死ねなくなってしまった。

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