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(旧:幻惑のアレース)10年間森の中でじっちゃんに稽古をつけられたあと、友達を作ってこいと能力者の学園に入学させられた  作者: MRプロジェクト
<< 1章 1節 >>【芽吹く入学1日目】

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#8【くじ引き】

「では早速クラス内でのチーム分けを発表します」


重要事項の連絡を終えてすぐ、先生はそう言ってホログラマー1型を教壇側の机において表を展開した。


そんな折り。


「先生、ちょっと、席分け歪じゃないですか……?」


誰か1人が声を上げた。


1-10は総勢50人のクラス。

席の並びは縦6人、横9列。

それ故のあまり4席。


つまるところ、5人構成のチームを無理やり作ろうとして歪な形になっていた。


そうした変な形の組み分けに浴びせられた、これは納得のいかないという声。

チーム内能力バランスを考えて作られたのかという不安の声。


その不安な声にのっかって、仲良くなった人と離れるのが嫌だとか、ドラフト選択したいだとか、再構成してほしいだとかポツポツとそんな抗議の声が舞った。


そんな惨状を見て先生は頬をかいて苦笑いを浮かべていた。


「一応伝えておきますが、敢えて能力のシナジーは加味していません」

「不公平だー」

「無責任だぞー!」

「職務を全うしろー!!」

「メガネー!!」

「ナハッ、メガネ呼びは流石によくねぇぜ青木ぃ」

「す、すまねぇ小倉坂…」

「ナッハッハ! 気をつけろよぉ」


騒ぎが加速する辺り一体。

俺はそんな増していく喧騒を前にアタフタするしかなかった。


その時、橋田先生は、一度手をパンっと強く叩いた。


「組み合わせが最適化された環境は勿論好ましいと思います。ですが、今後そうした状況に常に置かれるとは限りません。みなさんには能力の偏りや扱いの難しい能力者がいる中で自ら最適化されたチームを築き上げてもらいます」

「席をかえろー!」

「そーだそーだー」

「この組み分け嫌ですー!」

「道理があればいいと思うなー!!」

「まじかぁ…」


もしかしたら近くの人と仲良くなりすぎた人が多いのかもしれない。それくらい島離れの人間と組み合わされる事に対する強い反感。


騒然とした様相に一変した中、教壇に手をついて少しうならせる先生の喉声。


時間にして10秒程度。


「……わかりました。…正直不服ではありますが、皆さんの同意も重要だと考えています。なので、こうしましょう」


ーーー


「と、いう事でぇー! 第1回!! ちきちーきくじびーき大会を開催しまーす!!」

「いぇーーーーい!」

「青峯さん、少し静かにお願いします」

「あい…」


先生の好意により席分けはくじ引きですることになった。


ただ、それはホログラマーにアプリにて機械的に行われるようで、それを有していない俺は隣の席の青峯さんの協力の元くじ引きをすることになった。


「いやぁー、くじ引きなんて久しぶりだ〜。夏祭りの屋台以来だよぉ」

「夏祭りといえば射的とかくじ引きだもんね」

「そうそー。…あ、私ねすっごい射的が好きで祭りがあったら絶対飛びついてたんだ! だからかなぁ、10回のうちに3個は景品を落とせるくらい射的上手いんだよー」


とても自慢げに語る彼女の顔は愛らしい少女そのものだった。


「景品3個か…すごいね。俺…多分一つも落とせたことない」

「ふっふっふ、ど素人だねぇ」


いやらしい笑みだ。


「えーでもあれ難しいよやっぱり。落としやすいのは的が小さいし、逆にいい景品はぬいぐるみとか大きいものだし。背が小さいと持ち上げてもらわないとだし、夏で暑いから手元が滑るし」

「ふっふっふ、大人しくど素人であることを認めたまえ昇也くん…」

「はい、ごめんなさい」

「すっごい素直」


いや素直と言うか、適当な言いがかりに過ぎなかったからだ。俺の論理は上手くできない言い訳でしかなくて、それ故に素人。


別にムキになるような話でもないし、元より冗談のきらいは感じている。

それに乗っかっただけ。


逆を言えばこれ以上白熱させるのは多分悪手だ。


「いつかお手並み拝見してみたいな」

「ふっふっふ、いつかを楽しみにしてなされ」


そうしてすぐのこと、青峯さんは「よっしくじを引くよー!」と声を上げた。


「昇也くん」

「はい」

「手を前に出して」

「う……うん」


なんとも要領を得ない指示。

ただ俺は虚空に手を差し伸べるだけの様。

こっから何をするのか、見当がつかない。


「じゃあわたしの合図の後昇也くんには今だ! って思うタイミングで手をグーにしてもらいます」

「は、はぁ」

「それに合わせてこっちでくじ引きのボタンを押すから」

「なる、ほど」

「おっけー? じゃあいくよー、スタートー!」

「はい」

「!!?」


開始に合わせてさっと拳を握った俺を見て、青峯さんは戦慄に近い表情を浮かべていた。


「あー…いやぁ……なんというか、多分ね、この教室の人みんないい人っぽいからさ。まぁ…その、誰と当たっても後悔しなさそうだし神頼みしなくてもいいかなって」


そんな俺の見解に「厚い信頼がもう生まれてる…」と青峯さんは呟いた。

そして少し一考を挟んで、俺の目を見た。


「じゃあ、私もその一員として期待に応えれるように頑張るね」


ふんすと鼻息を立てる勢いで頑張る顔をする青峯さん。意気込む手と体の仕草にミディアムボブの灰色髪、その毛先がふらりと揺らめいた。


「えーと、じゃあ昇也くんの番号を伝えます」

「はい、お願いしますっ」

「じゃかじゃんっじゃん! 15です!」

「お。おー…」

「ちなみにわたしは41〜、誕生日ー」


41が誕生日…?

あーなるほど?


「4月1日が誕生日なんだ」

「そうなんです。エイプリールフールに生まれた嘘つきの子なのです」


ん?


「…え、えい、えいぷりーるふーる……?」

「………え?」

「え?」


青峯さんと俺は見つめあって、お互いの意思疎通ができていない自体に硬直する。


俺は、そう。

その言葉を知らない。

いや、思い出せないだけなのかもしれないけど、なんというか常用していない言葉には俺は疎い。


そんな時、後ろの席の山田が俺の肩に手を置くと、何か可哀想な目を見る目を向けて言った。


「バカを通り越して物知らなさすぎ。俺は悲しいよ」

「うっせぇ机に顔面埋めるぞ」

「今のさっきで当たり強くない!?」

「いいねー! 男同士の喧嘩は熱い! いけいけ殺せ殺せー!」

「青峯さん!?」


山田はなんと言うかちょっと、でも、そんな雑に扱われて楽しそうだった。

口角が微妙に上がってるし、少し怖い言い方でも落ち込んでない。むしろそれでいいみたいな感じ。



変態かな。



「ちなみに昇也くんの誕生日はー?」

「え、あー……」


俺の誕生日を俺は、知らなかった。

だからか、じっちゃんが学園入学前によーく教えてくれた。


「俺は8月31日」

「おーなんかすっごい夏だねぇ」

「誕生日が暑苦しくてすみません」

「いやぁ…昇也くんからすっごく眩しい夏の日差しを感じるよ……日焼けしそう。なんだったら燃えそう…あちちち」

「あぁ…俺はなんてことを…! また、近づく人を焼き殺してしまった…!」

「昇也くん……強く…いき、て……がくっ」

「青峯さーーーん!」

「先生、ツッコミ不在の恐ろしさを改めて知れたよ。ありがとう2人とも」

「それはどうも…」

「えへへ、どういたしまして〜」


にへらと笑う青峯さん。


改めてよく見るととても端正な顔立ちをしている。


まだ15歳だというのにどこか大人っぽい。

それは多少の化粧のせいかとも思ったが、やっぱり綺麗な鼻立ちやクッキリとした目、輪郭から成熟している大人感がついてまわっていることに起因した印象なのだろう。


そうして少しして、青峯さんは虚空に向けて指弾きをしながら言う。


「でもあれかぁ、これじゃあ昇也くんとは離れちゃうな。いいコンビになれそうだったのに」


くじ引きで引いた15と41。

それは明らかに端と端に振り分けられた位置関係。


「離れ離れになっても話そうね…!」

「うん…!」


そんな中、先生が一言大きめに声を発した。


「おーい後2人ー、はやくひいてー。と言うかもう確定しますよー」

「「だめです!! 引きます!!!」」

「そうですか…」


くじ引きを催促されている2人は、教壇側の出入り口付近にいる男の子と、一番後ろの窓際の席の女の子。


「席がダメなら…!」

「グループを一緒にするまでよ!!」


気合の入った声。

そして同時に。


「「そして番号でも勝つ!」」


発せられる言葉。


「23!」

「俺のは…よしっ、24!」

「3連続負け……!?」


くじ引き一つにここまで熱量を持ち込めるのは一つの才能なのではいのだろうか。

そんな彼らの一喜一憂を見ていると、女の子は不満げで。


「……雷斗、番号交換しなさい」


そう男の子に声をかけた。


しかし男の子といえばそんな気はさらさらないようで。


「ねぇさん、番号が若いって事は1番に近いんだよ。というかみっともないよ、勝負だってのに」

「……姉弟協定1-5、数字勝負は数が大きい方が勝ちとなる」

「あっ、ごめーん忘れてた。じゃあねぇさんの負けだ」

「っ……」


弟の雷斗と呼ばれた男の子はとても誇らしげで、また勝ったと頬を弛ませている。


反対に姉は苦虫を石臼ですり潰し、濃縮させたものを舌に塗りたくられていると言わんばかりに渋い顔をしていた。


なんというか歪な兄弟喧嘩を見ている気がする。

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