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(旧:幻惑のアレース)10年間森の中でじっちゃんに稽古をつけられたあと、友達を作ってこいと能力者の学園に入学させられた  作者: MRプロジェクト
<< 1章 1節 >>【芽吹く入学1日目】

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#7【オリエンテーション】(2)

「7月の模擬仮想戦闘を終えれば8月。夏休みです」


小休止を挟んだあと、橋田先生はそうした切り口で話し始めた。


「そして、夏休みといえば宿題ですが、宿題のようなものはありません。その代わり、クラスメイトとの交流を主とした活動をするに際して学園に申請をしていただければ、学園から一度、交際費を支給することが出来ます」


そんな話を聞いて各々から感嘆の声や話し声が少し出た。


「あくまで交際費です。私用は認めませんし、余れば返還していただきます。逐次領収書など発行していただき提出もしていただきます。不正利用だけはしないでください。罰則と罰金があります。……まぁ、詳しい話は夏休み前にまたお話しします」


学園側からの交流の援助がある、ということは本当にクラスにおける各人との関係性が重要であると言っていると同義。


……俺、みんなと馴染めるかな。


一抹の不安。


周囲を見渡し、少し悩んで、けれど山田や高貴、隣の女の子のフランクを思い出しちょっとばかし焦りが落ち着きを見せる。


「夏休みは8月1日から9月4日まで。講義は5日から再開。そして、先んじて伝えておきますが10月上旬に文化祭を開催します。これは追ってお話ししていきます」


それを言い終えて、先生は言った。

強く、息の張った声で。


「夏休みが開けると同時にこの学園の最大の意義、団体規模の仮想戦闘訓練が始まります。実技訓練よりも規模が大きく、また他クラスとも交流が発生する訓練です」


先生は「その解禁に伴い」と続けて話す。


「各人、好みのギルドに加入していただきます。勿論チームメンバーと同じギルドがいい、と言うのも理由として構わないません。…が、先生としては個人の感性にあったギルドを選ぶべき、だと考えます。それで、改めてギルドとはと言う話ですがーー」



【ギルドについて】

○大会出場を前提とした、各自毛色の違う方針を掲げている能力者の集まり。

○1〜4年生の学園生で構成されている。

○ギルドにはギルドランクが存在しており、それにより最大加入受け入れ人数が決まっている。


【ギルド加入の注意事項】

○ギルド加入後は原則1か月脱退できない。

○2年時に上がると原則ギルドの変更は不可能。

○2年次までにギルドに所属しない場合除籍処分。



「いいところがあって悩む、なんて悠長に構えられる訳ではないことは肝に銘じておいて下さい」



じっちゃんは言っていた。

このギルドでの成果が大事だと。


だから選ぶギルドが大事なのだけれど、強い能力を持っている人がいるからそのギルドを選ぶのではなく、その中の人たちと交流を深められそう、深めたいと思ったところを選ぶべきだと強く言われた。


「ちなみにですが、この仮想戦闘訓練が始まると授業日程が変更されます。午前に座学や集団および団体訓練。午後にギルド内訓練と言う形態です。また、こちらが指定する日時にギルドにて模擬試合を執り行っていただきます」


要するにギルドでの訓練に比重が傾くということだ。


ギルドの性質は把握できたがどう言った事をしているかは想像つかない。

早いところ見学させてもらわないとだな…。


「9月からはこの日程に変化して4年次まで続きます。次に、1年に2回行われる大会についてです」



【大会】

○クラス大会。

・同学年の中で最も強いクラスを決める大会。

・11月下旬に開催。


○ギルド大会。

・数あるギルドから最も強いギルドを決める大会。

・12月上旬に開催。



「どちらも1週間かけて行います。そして、各優勝チームには褒章として2月下旬に開催される日本の公式大会、日本能力者大会に出場する権利が与えられます」


公式大会。

その響きにみんなどこかそれを楽しみにしている様子。


「日本能力者大会は、当学園含め3校のうち各校から優秀な4ギルドを選出。その後トーナメント形式で進め、優勝ギルドを決める大会となっています。みんなも知っていると思いますが、この大会の優勝ギルドには、学園で優勝する以上の褒章が与えられます」


その説明がされて、みんなの食いつきの意味がよくわかった。


「じゃあ1億円が欲しいって言ったらもらえるって事ですか?」


そんな俺の素朴な質問に先生は頷く。


「はい。願い事といえども幾つかの質問と要望理由を尋られますが…1000億円クラスでなければそうそう変更を求められない願いだと思います。ちなみに前例として100億円を要求した生徒もいます」

「100億…」

「お金だけじゃなく権利も願いの一つです。無形のものも考えておく事をお勧めします。あと、再認識していただきたいのですが、この公式大会へ出場ができるのは人生において4回だけです」


そう聴くと多い、と思ったが先生はそんな俺たちの心に釘を刺すように言った。


「4回のチャンスを多いか少ないか捉えるのかは自由ですが、はっきりいってとても少ない機会です。この4年で一度も優勝できない、惜しいとこまで入ったがダメだったで優勝に届かない人はごまんといます。君たちもその1人になり得ることを忘れないでいただきたい」


この学園に入学した一年生は約500人。

これを各学年に当てはめたとして単純計算2000人。


ギルドの数はわからないけど、例えば1ギルド20人として100ギルド。

3学園が集まれば300ギルド。

その中からの12ギルド。


人数で言えば6000人中240人しかその優勝に干渉できない。


と、考えれば確かに残りの5760人になることの方が多いと言える。


「あと、言い忘れていましたが学園主催の方。ギルド、クラスも多少なりの褒賞がでます。勿論規模感は落ちますがお金でも1000万とか位までは出せるはずです。まぁ宝くじとスクラッチくじの違いみたいなもんですね」


そんな願いが叶えられると言うことを前面に押して説明していた先生に、1人の生徒が言葉を吐いた。


「…クラス対抗戦なんか運ゲーじゃねぇの」


やさぐれた声。


俺の席の斜め後ろで足を組んで座る子の表情は、期待のないつまらなそうなもの。

桃色の長髪に、色白い肌の女の子。


耳には幾つかのピアスを。メイクはがっつり。


ため息を吐いた時に見えた、舌が輝いたところから推察するに舌ピアスというやつもしているのか。



なんか、ドギツイ。



そんな彼女の言葉に、先生は言葉を返した。


「まぁ半分その通りです。一応組み分けは入学前測定での結果から、能力の系統を均等に振り分けている。何処かが突出して強いとかはないようになっています」


ですが。


「能力によっては全体の戦力を引き上げることもあります。そこに関しては本当に運です」


しかし。


「その能力を従前に使う状態にするには信頼や積み重ねた仲も大事になる。…チームワークです。運の半分を補うのは全員のチームワークなんです。なのでそこを忘れずに努力してください」


そうした先生の教鞭が彼女の不満を抑えることはなかった。


「なんだよチームワークチームワークってうっせぇなぁ。仲良くする事を急かしてくんなよ気持ち悪い」

「ですが意識しない事には始まりません。自然に形成されるには時間がかかるものです」

「だぁかぁら、んなんじゃ中身がねぇーだろって言ってんだよ」

「笹山さん、ここは上っ面で終えられる学舎ではない。結局早いか遅いかの違いにしかなりません」

「はぁーーー、話になんねぇ。もういい」


ガリっと、固いものが噛み砕かれる音が響いた。

途端、強く、そして全てを包み込むように広がった甘い香り。


「笹山さん、授業中です。飴を食べないでください」

「はぁ〜い」


そんな折。

注目が集まっていた彼女の様相は一変する。


彼女を中心に異様に漂った甘い香り。

いかめしい表情はやんわりと優しいものへと変化した。

返事をした声色もまた、柔らかい。


「……能力…スイートチェンジってそう言う…」


先生は自前のホログラマーアルファを用いているのだろう。そこから何かを見ながら納得してる顔をしていた。


ーーー


「さて、じゃあ通して話します」


【年次予定】


4〜6月 ー 「座学中心」


7月 ー 「午前座学」「午後実技訓練」


8月 ー 「夏休み」


9月 ー 「午前座学・実技訓練」「午後ギルド内訓練」


10月 ー 「文化祭」


11月 ー 「11月下旬 学年別クラス大会」


12月 ー 「12月上旬 ギルド大会」


2月 ー 「2月下旬 日本能力者大会」


3月 ー 「春休み」



【夏休み特別支給】

・申請すれば交際費を支給。


【注意する事】

・年次を通して2週間に一度小テストを行う。

・小テストの合格点数は7割、補習時は8.5割。

・クラス内チーム単位での連帯責任補講。

・学期末テストは7月下旬、1月中旬。

・ギルド加入後1ヶ月は脱退できない。

・ギルド選択の猶予は3月まで。それ以降は除籍処分。



(あぁ…だめだ覚えきれないっ、脳が…脳が破裂する……熱い、痛い……)


こう言う時、どうしても能力を使いたくなってしまう。でも常態的な使用は禁止だ。


頑張れ俺っ。


「…お目目グルグルだね華園くん」


そんな時、隣の女の子が少し朗らかな顔をしながら俺に声をかけてきた。


「うん…話全然覚えられなくて…」


体たらくそのものというべきか。


自身の能力の無さに呆れるばかり。

落ち込み気味のそんな俺に、隣の女の子は「ふふん!」と一つ息巻いて俺を指差した。


「よぉし、それなら神である私が助け舟を出してしんぜよう…!」

「お、おぉお! おぉお……?」

「神託を授ける。ホログラマーが届いたらこの私、青峯葵を頼りなさい。さすれば、手取り足取り教えてくれるだろう。つまるところメモを渡してしんぜようということだ…ということだ……とだ………だ…」


こう、窮地に追いやられた時に助けてもらえるとどうも涙腺に熱いものが駆け出してくる。


嬉しい限りだし、頼りになる。

こう言うことをされた人が神を信じるのかな。

なんかちょっと神として崇めたくなるのわかるな。


「じゃあホログラマーが届いたらお願いします…俺もうダメほんとに」

「うむ、まっかせなさぁい」


女の子はぐっと張った胸を叩いて誇らしげな表情を浮かべた。


「ありがとう」


このクラス、本当にいい人ばかりだ。


初めは緊張もあったし、赤髪の女みたいな人もいるんじゃないかって身構えてたけどなんてことなかった。


むしろ良い。


めっちゃいい。


全体数的に良い人が多い気がする。


多分赤髪みたいな人は珍しい部類なんだろう。


実際セレモニーの時の列の避けられ方はあいつだけだったし……だとしたら身構え過ぎだったのかもしれないな、俺は。


(友達……か…)


友達を作るのってどうすればいいかわからないからなんとも言えないけど、今こうやって普通に話すことが出来ている。


交流関係を深める上での第一段階で俺はまだつまずいていない。頑張れる、頑張れている。

だから友達以前に仲良くなれないなんてことはなさそう。


こんな良い人たちとならもっと仲良くなっていきたいし。


(頑張ろう)


俺は強く、そう思った。

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