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(旧:幻惑のアレース)10年間森の中でじっちゃんに稽古をつけられたあと、友達を作ってこいと能力者の学園に入学させられた  作者: MRプロジェクト
<< 1章 2節 >>【炎天無比】

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#29【蘇我ファミリー、ボーリングを楽しむぞの会】

みんなして補修を逃れた嬉しさに、舞い踊るように讃えあった。そんな折り、気持ちを高めた古賀くんが一声上げた。


「よっしゃああ!! お前らー! 日曜日遊びに行くぞー!!!」

「「「「おー!!!!」」」


遊びに行くというフレーズに、忌避感を示す人間はいなかった。まるごとみんな話に乗っかって、そしてやってきた日曜日。


「うっしゃぇえいっ、ストライク!!!」

「最先いいねぇ、すごく上手いね虎宇治くん」

「やろー? よう友達とボーリング行ってたから自信はあんねん」

「……フォームが綺麗なのが腹立つ」


灰田さんはそんな一言を古賀君に向けながら立ち上がり、ボーリングの球を手に取った。その球は小さく、4kgと書かれている。


「美しくてごめんな」

「べーっだ」

「最近あいつ返しが適当やねん」

「そうなんだ」

「虎宇治は私に求め過ぎなの! 普通よ普通!」


力一杯に振り抜いた一投は、見事に半円を描いた。ガタンっと脇道に落ち、滑っていくボーリングの球。


ガーター!! っとパネルから音声が流れてくる。


「見たらわかるわよ!」

「パネルに文句を言った時点でお前の負け」

「その通りだから何も言えないわ…はぁ。変な賭けに乗るんじゃなかった」

「賭けに乗る時はちゃんと相手のアドバンテージまで見ろって事やな」

「はぁ……高級レストラン7割負担……お小遣い持つかな…」


どうやら古賀君と灰田さんは秘密裏に特別な賭けを交わしていたようだ。俺たち蘇我ファミリーとしては特にない。普通に楽しもう、ただそれだけの会。


「乃々愛も上手いわね…」

「ストライクはお手のものよ!!」

「ちょっと別の機会で俺お前と張り合いたいわ」

「受けて立つわ!!」


米田くんも投げ終えて各自の点数表が埋まっていき、きたる俺の番。


「これはな、この穴に人差し指と小指以外を突っ込んで、利き手じゃない方で支える……こんな感じで持つねん」

「ほうほう……」


古賀君の仕草を真似ながら球を持ってみる。


一応普通の重さのものにした。

持ってる感じは特に重いと感じないから、慣れてきたら変えようと思う。


「んで、そうやなぁ…体をこう…くいっと……すっと」

「絶望的ねー教え方ー」


教え方に四苦八苦している古賀君に野次を飛ばす灰田さん。


「いつも感覚でやってて上手く言語化できへんわ、すまん昇也。取り敢えず見るより慣れろでいこ。ここ! って思ったとこで玉から指はなして」

「わかった」


初めてのボーリング場。


少なくとも10年以上もの年月の間娯楽に触れていなかったから、こうして確立された遊び場に立つ事自体とても楽しく思えている。


ウキウキが止まらない。

ニヤッと口角が上がる。

そして昂る思いのまま投げる初めての一投。



それは、頭上を舞った。



垂直の飛び上がった玉。


普通のボーリング場よりも高さがあるらしいことで、天井にこそ突き刺さることはないのだが、そこそこ高いところから落ちてくる。


このまま玉を落としたら床が抜けてしまうかもしれない。修繕費なんて出せるほどのお金はない。

それにこのままだと楽しい空気が台無しだ。


(じゃあ受け止めなきゃ)


ただ、ボールには油が塗られてた。普通に受けどめるだけじゃ落とすかもしれない。


(なら、能力を使わなきゃ…)


でも、能力を使うとしてどれだけなら許されるんだっけ。何パーセントまでなんだっけ。

あれ、なんだっけ。


「あっ……」


その時、景色が一転した。


ボーリング場に響き渡ったけたたましい音は、けれど、想像していたよりも軽かった。


「っ……さっ! 流石に! 流石に頭の上にボールがあって立ち尽くしてるんは意味わからんって! 避けてくれ!!」

「こ、古賀くん」


床に倒れ込んだ俺に覆い被さっていたのは、古賀くんだった。

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