#28【優勝したら叶えたい事】
本日18時に<<1章2節>>【炎天無比】
残り2話を投稿します
そういえば、まだ気が早いとはいえ仮想戦闘大会にて優勝した時の事を考える必要がある。
それを踏まえて、俺は何を望むのか。
……やはりすぐに思いつくのは…お金だった。
今はじっちゃんの用意してくれたお金がたんまりとあるから余裕はあるが、何処かで自分で働いてほしいとも言われている。
つまりは賄いきれないと言う事。
能力者がこの学園に入学すれば、補助金が毎月支給される。
入学金はじっちゃんが先に払ってくれていた。
それ以外にあたる寮代、各施設利用料金が補助金を利用する先となっている。
一応手元に残るのだが、それでも2万円程度。
一人暮らし。社会的に支払うものは多くない。しかし、食費や交際費をここから出すと考えると余ると言うわけでもない。
おにぎり100円台、パンは250円台。
お肉は軒並み1000円から。
昔はおにぎり1800円、パン1300円。お肉は15,000円からとか、そんな地獄みたいな時期があったらしい。
今は貿易環境が整ってきている。
物資の流通量が増え、資源の貴重性が下がってきたことから価格が全体的に落ち着き始めている? だとかなんとか。難しい話はよくわからない。
わかっていることは、持ち金をポンポン使っていては何も食べられない日がいつかは来てしまうということ。
ここ最近は散財しすぎたから、もうそろそろやりくりしないといけない。
じっちゃんから仕送りがあるんじゃないかなんて淡い期待を抱いていた時期もあったが、森を出発する時にそんなものはないときっぱり言われてしまってもいる。
俺に取ってのお金の有用性は高まるばかりなのである。
が、古賀くんの言うとおり、確かにほぼなんでも叶えられる事柄にお金を要求すると言うのも何か勿体無いと言う気持ちになってしまう。
かと言ってしたい事も今はないし。
なんでもを考えるならそれこそ橋田先生が言っていた通り権利を願うのもいいんだろうが、どんな権利にするのかというのも難しい話。
(一つだけ法律を変えられる権利、とか…。流石に良識の範疇を逸脱しているか)
何かをする権利。
何かを見る権利。
何かを知る権利。
何かを買取る権利。
(んー……今はやっぱり、何もないな)
みんな考えて、各々難しい顔をして、けれど考えてみれば案外思いつくものだったそうだ。
師匠が真っ先に声を上げた。
「私は……あれね。外食店舗での優先案内かつ無料になる権利が欲しいわね。もちろん1週間前あたりに予約して、を前提にだけど」
「うわぁそれええなぁ、人気店でも入れたりしそう」
「そう! そうなの! やっぱ美味しいとことか人気だとか予約制のお店は人が多かったり売り切れが早かったり予約満杯来季まで待ってねで大変なの! 骨折り損もよくあるの! だからこの権利私絶対欲しいって思ってる! だってこれお金じゃ買えないから! 賢いでしょ!」
「そこは賢いと思うわ。良いとこ行く時は俺も連れてってな」
「え、嫌だけど」
「うわ権力の私物化や卑しぃー」
「は、はぁ!? い、卑しくないもん! 特権だもん! それに卑しいのは虎宇治の方でしょバカ! お金とかあーいやしっ! 卑しんぼ!!」
ぽかっぽかと10発、古賀くんの肩に拳を突き刺す師匠。1秒たりとも苦痛を感じることのない一撃の乱打は、いつもの光景だった。
そして疲弊して、少し息を切らしているのもよくみる光景。
「僕は…。…名高い企業の社長さんとお話ししてみたいな。お金があっても小童に時間を割くなんて出来ないだろうから、権利として叶えたいって欲がある」
「あー、確かにそうやなぁ。金持ちでも社長に会うって無理そうやもんなあんま」
実情を知らない。
だから想像の範囲内で口にした古賀くんだったが、近くに金持ちいるじゃん! という顔で蘇我さん声をかけた。
蘇我さんは強く頷いた。
「そうね! パーティとか人脈がないと普通社長とは話せないわね! 個人的な仲になるにはまず初めに企業的な繋がりや用事がないと機会は与えられないわ!」
「金持ちが言うんや、健二の叶えたいことは理に叶ってるんちゃうか」
「ちょっと楽しみ」
エヘヘと嬉しそうに笑う米田くん。
「ちなみに私は地元を活性化させる事を夢見てるわ! 特別賑わいがないわけじゃないけど大都会と比べるとそうでもないの! だから財源の特別支給だとか、施策の立案とか、いっそのこと国を建てる気持ちで改革に携わりたいと考えてるわ!」
「規模的に許してもらえなさそう…」
「粘るわ!」
「その点で言えば市長と対談するってのが現実的だね」
「私が市長じゃないと気が済まないわ!」
蘇我さんの夢は結構壮大だった。
「……俺は…」
最後の1人になった俺は、みんなの叶えたい事を目の前に口をつぐんでいた。
沈黙が少し流れる。
でもやっぱり、みんなと比べて一切の願い事が思い浮かんでこない俺は唸るしかできなかった。
「え、なに人に言えん事なんか…?」
そんな1人黙る俺に古賀くんは少し悪い顔をしながら聞いてきた。
「え、いや別に…」
「怪しいなぁ、隣のクラスの子といい……。あ、つうことは酒池肉林でもしたいんか昇也は」
「酒池肉林……?」
聞きなれない単語に聞き返すと、すぐさま蘇我さんの口から言葉が返ってきた。
「この場合はエッチな意味ね!」
「え、えっちな意味!?」
「あちょ、ちゃうって! 暴飲暴食的な話やって!」
「嘘ね! 顔がそう言ってるわ! そのいやらしい話をする時の顔が証拠よ!」
「だ、ちげぇって!」
「サイッテー。昇也くんがそんなゲスなお願い事するわけ無いじゃない。ほんと品性のかけらもない。……あーあ、きっと一途も嘘ね。チャラくて変態なのは見た目通りなのよきっと。あーあ、実は下心まみれなのねー」
「いや、だからちゃうねんって!!!!」
「あーちゃうねんちゃうねんちゃうちゃうねん」
「ぁがぁ! もーうっっとぉしぃーなぁ!! ドアホー!」
プンスカ怒る古賀くんを前に、ケラケラと、とても楽しそうに師匠は笑っていた。




