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(旧:幻惑のアレース)10年間森の中でじっちゃんに稽古をつけられたあと、友達を作ってこいと能力者の学園に入学させられた  作者: MRプロジェクト
<< 1章 2節 >>【炎天無比】

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#27【綺麗な髪の毛】

テストが終わり、一通り落ち着きを取り戻してやってきた休み時間。


俺は西条さんにテストの結果とメッセージを送っていた。


西条さんにはこのクラスでのテストの話をしており、応援してもらっていたのだ。

そして今、テストの大変さを吐露しているところ。


「お、誰と連絡してるん」

「隣のクラスの子」

「ホーン、女か?」

「女の子」


俺は通常時の並列思考が得意ではない。


だから返信する事、言葉を返す事、どちらも成し遂げようとすると片方がどうしても淡白になってしまう。


今淡白なのは古賀くんへの返事だ。


自分で話しておきながら起伏のない声色に申し訳なさを感じている。


「おー! 学校生活2週間目でついに女かぁ! お前見た目にそぐわず肉食やな!!」

「は、は!?」


前言撤回、申し訳なくなんか全くない。


「いや、ち、ちがうから! 友達で、友達だし! 仲良いだけで別にそんな! …はぁあ!?」

「そんなきょどるなよ怪しいな、そもそも連絡内容見えてないんやからそんな否定してこなくても……。おっとぉ? て事わぁーアイタッ」


そう古賀くんが俺を弄んでいると、米田くんがスッと現れて古賀くん頭に軽くチョップを落とした。


「昇也くんはピュアな子なんだよ? 虎宇治くんと違って」

「まるで俺が食い散らかしてるみたいな言い方してくれるなぁ。俺は見た目はアレやけど一途で尽くす男やぞ」


古賀くんが前髪をパサーっとあげながらそう言うと、健二は軽く笑って「まぁね、性格は生真面目だよね」と言った。


「性格は、ね」


そんな俺たちの話に歩みを寄せた師匠。

含みしかない発言に、古賀くんは少し不機嫌そうに顔を窄めた。


「あのなぁ、自分で言うのは良いけど他人にそこまで言われると俺も傷つくんよ」

「知らないわよ本当の事だもの。それが嫌なら黒染めすると良いわ」

「地毛のせいで…俺はチャラい……」

「顔立ちもチャラいわよ」

「お前容赦ねぇなぁ……。でもまぁ黒染め自体はやったことあるよ。ただあれやったな、染めたら毛がバサバサになって嫌やった」

「トリートメントしたら良いじゃない。ま、高いし染めた髪にはあんまし意味がないけど」

「てか俺はそもそも髪に金をかけるのあんま好きやないからな」

「そう」

「そうだよ。ま、そこんとこお前はしっかりしてるよな」


焦点を当てられる師匠の髪の質。

実際古賀くんのいうその通りで、髪の毛はとても艶やかで綺麗だ。潤いがあり、明るめのブラウンの綺麗さが失われていない様子。


毛先や髪の流れも見る感じ、かなり手入れが行き届いているのは読み取れる。


(そういやぁ髪の毛事情で言えば、全部じっちゃんに任せてたなぁ)


家からそこそこ離れたとこに流れる滝。


お風呂場や飲み水の場、野生動物が寄ってくるので狩場として使っていたあそこで髪を切ってもらっていた。


切ると言ってもハサミなんてないわけで、何でやったのかと言えば石ころだった。ただ、ちゃんと加工した物。滝周辺に落ちている石でもしっかり研磨すれば、問題なく毛を切り落とせる。


じっちゃんは髪を結んでいたが、俺の場合は問答無用であそこに連れられてバッサーっと適当に切り落とされた。


特別髪型にこだわりのなかったし、他人の目なんて気になる環境でもなかった。


だから毛先がバラバラだったりしても構わなかったが、気を遣ってる人を見ていると自身の髪の毛の雑さがよくわかる。


今は放置して半年未満、自由にのびのび生えている。

そろそろ髪の毛を整えてもいいかなと思う。


「女の子は髪の毛命だから」


師匠は周りの賞賛の声に当然と言った口調でそう言った。その言葉は女性界隈ではどうやら間違っていない様でーー


「そうよ! 肌も大事だけど髪の毛の美しさから女性の魅力は爆発するのよ!!」


ーー蘇我さんが盛大に声を上げた。


その声は目の前に映っている姿から出ている声なのに、背後からも同じ声量で投げかけられているかのよう。声量の板挟みだが、けれどみんなそれそれ慣れてきていた。


「…確かに蘇我の髪の毛もいいよな。すっごいトゥルントゥルンって感じ」

「綺麗よねぇ。それに髪型かわいくない? 私乃々愛の髪型好きなのよ。私のできない髪型だし」

「ふふん!!!」


その嬉しそうな顔を見て理解する。

まるで背後からも聞こえてくると錯覚した先の声の大きさ。あれは自分も見て欲しいという思いから来た、声量だったのだろう。


心底嬉しそうにドヤ顔を浮かべる蘇我そん。

そんな姿を米田くんは優しい目で見つつ、師匠の発言に声をかけた。


「できない髪型ってあるんだね。灰田さんのは肩までだけど、蘇我さんのは背中までで、僕にはここまできたら同じにしか思えないな」


確かにそうだ。

俺からしてもそんな感じにしか思っていない。


しかし師匠は「チッチッチ」と言いながら指を振った。


「まぁ厳密にはできない、というより流石にここまで伸ばす気にはなれない、ってことなんだけど……やっぱり男の子には分からないよねこの髪の毛の管理の大変さ」

「あーまぁ俺もずっと短めやしなぁ。昇也と健二は耳とか目に髪掛かるくらいやけど、ずっとそんなもんなん」

「そうだね」

「俺もずっとこんな感じ、伸びたら切ってるだけ」


案外みんなそんなものらしい。


「髪の毛を綺麗にするためにはドライヤーは欠かせないし、ヘアオイルも大事。ドライヤーの使い方も、タオルドライも大事。時間は私ので15分くらいかかってるわ。あんまり温風とか使い過ぎちゃうとバサついちゃうから基本冷風にしてるのよ」

「へぇー手が込んでるなぁ」

「俺は風呂から上がったら髪をサッと拭いて終わりにしてるなぁ」

「僕も正直昇也くんと一緒」


けど、と師匠は言う。


「この長さの倍となると、3倍は手入れに時間かかるわ。トリートメントもロング料金で7000円は少なくともかかるわね」

「ちなみに言うと私の通ってる美容室でのトリートメントは38万5千円よ!」

「「「「たっか」」」」

「ほぼ美容師の指名費ね! 金持ち相手の商売だからこんなものよ!」

「金持ちってすげぇなぁ、俺も金持ちになりたいわ」


古賀くんの小さな吐露は人間臭い願望そのものだった。そんな願望に米田くんは言う。


「起業せず金持ちになりたいなら、ここでの大会に優勝しなきゃだね」

「あー……そういや願い事を叶えてくれるんやったっけ。いやぁでも願い事が金ってのもなんか嫌やない?」

「…そう?」

「もっとこう…なんやろ、夢のある話とかさ」

「でも大概の夢ってお金で買えるから良いと思うけどね」

「あー確かに。んー…」


悩む古賀くんはみんなを一瞥して、問うた。


「なぁ、お前らはさ…ギルドの大会…優勝したら何を願うん」


と。

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