#26【俺たちの結果】
5位 一ノ瀬 翔 107点
窓際最後列に座る金髪の男の子。接点はないが記憶にはある。オリエンテーションの時に手を挙げて先生に質問をしていた男の子だ。
「さっすが一ノ瀬、やるー」
テストの結果がでると席を移動し、結果を聞くと同時に一ノ瀬くんの肩を肘でつつく青色の髪の男の子。
一ノ瀬君は笑みを返しながら、ふぅと息を吐く。
「やれるだけやったから。結果が伴っただけ。…まぁ流石にあの問題の質量にはビビっけど」
「だよなー、俺初めて絶望ってのを体感したー」
そんな青髪の男の子を皮切りに集まり出す、一ノ瀬君のチームメンバーらしき生徒たち。
「…やっぱ俺よりお前がリーダーになるべきだって」
黒髪の男の子は長身でガタイがいい。
あそこのリーダーらしい。
「鏡音何点よ」
「81点」
「一ノ瀬様、ポジションがガラ空きになりました。どうぞお座りください」
「や、やめてよ顎城くん…絶対鏡音君がリーダーの方がいいよ。俺リーダーポジ向いてない人間だからさ、どっちかというと参謀とか左腕とかで輝ける人間だから」
「左腕は初めて聞いた〜、でも私的にも〜一ノ瀬くんはNo.3とかそれくらいの方が気楽に頑張ってくれそうでいいなぁ〜って思う」
「そう。そんなんだよ、笹山さんの言うとおりなんだよね。責任が重いと能力発揮できないってやつ」
笹山…。
オリエンテーションの際に橋田先生と口論になっていた女の子だ。
ピンク色の長髪、耳にピアス。メイクがっつり。
それは2週間経った今でも変わっていない。
前はトゲトゲした雰囲気だったが、今日はポワポワした雰囲気だ。糖分満タンっぽいな。
「難儀だなぁ、リーダー適正って」
鏡音くんが腕を組んでそう言っていると、一ノ瀬くんは後から来たもう1人の男の子に目をくべた。
「それこそ青田君の方が適正あるでしょ」
青田くん。
髪の色が紫色で、白いメッシュが入ったもの。
長身で細身の様相。
「え、僕!? い、いやぁ適正ある…か。うんあるなぁ。なんだったらピッタリだなぁ」
そんな青田君の発言に、ガタイのいい鏡音君は豪快に笑いながらーー
「お前のその自信は確かにリーダー適正あるわ」
ーーその背を叩いていた。
3位 青峯 葵 112点
「あーーよかっだぁ"あ"焼肉奢り無くなったぁ"あ"」
「お、おい皆んなの前でそれ言うなよ…」
青峯さんの半分号泣しているところに慌てて肩を叩いて現れた雷斗くん。
そのお姉さんである加隈寧々さんは、そんな雷斗くんを青峯さんから勢いよく引き剥がした。
ギッと強く向けられる目。
寧々さんは青峯さんを守る様に腰に手を回すと言った。
「そんなしょうもないプライドで安心した子の休息を邪魔しないで」
「寧々ちゃん…」
「……それは…ごめん」
「ごめんねアオちゃん、雷斗にはまた言い聞かせておく」
「んーん。別にいいんだよ全然気にしてないから」
「アオちゃん心広い、好きっ」
「もー寧々ちゃん距離近ーい」
とてもワチャワチャと楽しそうな女の子の空間。
秘密の花園を見ている様な気分になる中、桃色の髪…特に前髪をユタンユタンさせながら歩みを寄せる一人。
「…あんな約束したとは言えここまで結果出せるのは素直に脱帽しちゃった」
吾妻音さん。
男にもなれる能力の人だ。
「へっへっへ、私のことを見直すと良いぞ」
「ごめん、評価はするけどそこまでは…」
「なんでよ!! 大和ちゃんのばーか! そう言う大和ちゃんは何点なの!」
「111点、かな」
「ビ"」
「どう言う声」
吾妻音さんは笑いながら「まぁ僅差だから、見直すにはまだ早いかな」と言った。
「2人ともレベル高いね……」
お茶の葉のような鮮やかな淡い緑色。
ホワホワした雰囲気の割には力が強いらしい女の子。
鳥田さん。
そんな鳥田さんの発言に青峯さんは真剣な眼差しを近づけると。
「京子ちゃんったら間違いだよ。私の方がレベル高いんだよ」
そう言った。
「なんで私と張り合おうとするのよ…」
「ガルルルル"」
「焼肉奢るから」
「クゥーン」
「アオちゃんチョロくてかっわいぃーナデナデさせてー!!」
「ガウッ」
「イダッ!? 愛犬に噛まれた!! でも嬉しい」
「姉さん流石になんかキモいよ」
そうして軽く開催される姉弟喧嘩に一番呆れ顔をしている吾妻音さんは、2人の頭の上に手を置いた。
2人は一瞬で口と動きを封じた。
吾妻音さんはその態勢を維持しながら鳥田さんに話しかける。
「レベル高いって言っても、正直京子ちゃん凄く頑張ってたし京子ちゃんの模擬テストの点数もほぼ100点だったじゃん」
そんな優しい言葉に彼女は首を振りながら言う。
「私、お勉強得意じゃないから…頑張ってもちゃんと身に付かないとね…」
伏せがちな目。
少し潤んでいる様にも見える目。
「…おっとぉーこれは、もーしーやー。京子ちゃんっ、欠点とったってぇーこぉーとーー???」
ニヤニヤしながら青峯さんは鳥田さんをツンツンと指で突くが、鳥田さんは全力で首を横に振った。
「あ、じゃあ例の件に則り点数開示しようよ。俺89点。あ、ねぇさんは77点ね」
「ちょ、雷斗!」
「私111点よ」
「私は112点ね!」
次々と挙げられる点数の波に、流石に抗えないのか鳥田さんは少し恥ずかしそうに言った。
「私は…90点だった、よ。全部の模擬テストでいい点数取れてたから調子乗ってただけに、恥ずかしくって…」
途端、鳥田さんを囲み出す吾妻音さんと青峯さん。
青峯さんに至っては鳥田さんを抱き抱えた。
「はーはっはー我ら鳥田三人衆、下位2名の愚民共にはジュースの奢りがある件、忘れてないだろうなー!」
青峯さんの奇行は時々面白い。
鳥田さんを両手で担ぎ上げ、目の前でフラフラと揺らして踊る。吾妻音さんはそんな2人の背後でピースをカニの様に繰り出している。
そんか光景を、寧々さんは写真に収めて口角を上げていた。
みんなの喧騒を真似するように俺も班の元へ歩いていくと、ちょうど古賀君が米田君に肩を組んでいた。
「さぁーテストの結果はっ…なんてん、何点だー何点っ」
「……じゃかじゃんっ96点!!」
「96点! おめでとうございます欠点回避です!!」
「ありがとうございます…」
「やるやんけー、このー。なんやあのテスト前の絶望してた顔は」
「いやあれは普通に緊張してて」
「顔面蒼白やったから記憶飛んだとか言われるんかと思ってたで」
「流石にそうなったら休む」
「戦略的撤退やな」
「そうそれ」
どうやら米田君も問題なくクリアしたようだ。
俺はそんな2人を見ながら、綺麗なノートを見せてくれた上に色々教えてくれた灰田さんーー師匠に声をかけることにした。
「ねぇ師匠」
「もぉ…。はい、なんですか昇也くん」
「やぶさか抄子…」
「うっさい古賀!!」
「ぅぐっ」
近づいてきた古賀君の脇腹に師匠はチョップした。
「私は119点だったわ。論述がちょっと物足りなかったみたい」
119点。
100点を…超えた点数……。
遥か高みの彼方景色。
「師匠……俺、一生ついてく」
そんな純粋な気持ち100%をグーっと向けると、師匠は少しもじもじし始めた。
「や、やめてよそんな…。そ、それよりも乃々愛の点数、私より凄いの。満点よ満点」
「え、そうなの…?」
「ええそうよ!」
1位 蘇我 乃々愛 125点<満点>
「え、すげぇええ!!!!! なにこれ金色の文字だ!!!!」
「えっへん!!!」
「文字の色は先生の計らいだと思うわ」
「蘇我さん天才だ!!!!! すごい!!!!!」
「流石我らが二大頭脳の1人やわ。シンプルえぐい」
「僕も流石にびっくり。すごいね」
「蘇我ファミリーの当主だもの! これくらいできなきゃ示しがつかないわ!!」
そんな当然という姿勢はとても眩しげだ。元からの能力の高さが伺える。
「でも、蘇我さんも凄いけど師匠も十分凄いよ。こんな点数普通取れない。だからやっぱり師匠は師匠たるし、俺は師匠に一生ついていく」
「もぉ……勝手にしてよね」
「私にはついてこないのかしら!」
「蘇我さんとは家族なんでしょ? もうとっくについていってるよ」
「昇也! 愛が深くて嬉しいわ!!」
あっ凄い、蘇我さんの明るさが増した。
そんな折り、蘇我さんは古賀君に目を向けた。
「ちなみに虎宇治は何点だったのかしら!!」
「106点」
「ちゃんと100点超えてきたじゃない! 凄いわ! 流石よ虎宇治!!」
「おう」
古賀君はかなり照れくさそうにしていた。そんなところに挟まれる蘇我さんの伸ばした小さな拳。
そこに古賀君は優しく拳を突き返した。
「蘇我ファミリー!!!」
「ごめんそれはパス」
「残念だわ!!」
そして、そんなみんなの発表を終えたところで揃えて向けられる目の玉8個。
ドキッとする目線と、どうなのかと問われた声。
破裂しそうな鼓動を胸に、俺は思い切って口にする。
「78点です!!!!」
俺の声が漫然と響き渡り、みんなの耳にその声が届いた。そうしてすぐ。
爆ぜ響く一挙喝采。
「欠点回避おめでとう。ここ2週間で30回くらい倒れちゃうほどすっごい頑張ってたもんね。最後の2日は日に五回保健室だったし」
「いやぁほんと、ホッとしてる。米田君保健室までいつもありがとう」
「どういたしましてー」
そして突き出される拳。呼応するように伸ばした俺の一手。
「「蘇我ファミリー!」」
「え、お前らその悪習残すつもりなん?」




