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(旧:幻惑のアレース)10年間森の中でじっちゃんに稽古をつけられたあと、友達を作ってこいと能力者の学園に入学させられた  作者: MRプロジェクト
<< 1章 2節 >>【炎天無比】

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#24【俺たちは友達なのだろうか】

時刻は午前11時。


絶妙にお昼と評しにくい時間だったこともあり、赫糸からご飯食べにいくわよ、と強引に誘われた。


その場で解散しようと思っていたので思わず顔が超変形してしまったが、もうそんな俺の顔に対して文句を言ってこなくなった。


俺のスタンスに本当に慣れてきたんだろう。


慣れってすごい……いや、慣れられていいのか?


それに、この話に俺はそこまで抵抗しなかったから簡単に引っ張られてきた。


というのも狙いが二つ。


一つ、奢り飯だということ。二つ、嫌いな人との交友関係を一度持って見るのもありがとう考えたからだ。


父さんの声を聞いて思い出した、人との交友の紡ぎ方。縁を大きくしていく為の付き合い方。


嫌いな人とも付き合っていければ、世渡りが上手くなる。本当に欲しい縁を勝ち取る時に必須なこの能力を、俺は身につけたいと考えた。


戻ってきた大型集合施設区画、その広場から歩いてすぐにある大きなアーケード。


色んなお店が立ち並び、芳しい匂いが所狭しと漂ってくる。赫糸が言うにはどれも有名店の出張店らしい。


目に映る、ホログラマー1型で投影されている客引き用の大きなメニュー表。

様々なジャンルが混在する中で何を食べようか迷っていた俺を見かねて、赫糸が行く場所を選んで入店した。


そこは大人用お子様ランチで有名なお店らしい。


あんたにお似合いよ、なんて言われたがそんな事でいちいち腹を立てていては、本当にお似合いになってしまう。


こういう風に自然に嫌なことを言ってしまう人と関係を続けるのだとしたら、ひとまずは受け流す力を身につけた方がいい。


そして。


「ほんとに、ほんとに食べていいんだよな! 奢りだよな! 嘘八百じゃないよな!!」

「え、ええ。し、心配せずに食べればいいわ…タダになるクーポンあるし。うん」


少し引き気味の赫糸であるが気にする程でもない。

どうでもいい相手の好感度など気にしたら負け……と思ってたけど、そうか。


嫌いな相手でも今後を見据えるなら大切か……そういうのも。


「ごめん、ちょっとはしゃぎ過ぎた」

「流石お似合いなだけあるわ」

「うるせー」


目の前にドンっと殿様のように腰を据えるのは、まさに名前通りのもの。


特製! 殿様盛りお子様風ランチ!!


顔が収まりきらない大きさのワンプレート!

でっかいオムライス!

迫力満点のエビフライ3本!!

小さいけどまるっくて弾力のすごいハンバーグが2個!

ぶっとくて皮が張ったソーセージが3本!

新鮮なサラダの上には根菜が!

小さな器に乗ったグラタンやデザートのホイップが東京タワーみたいに高いプリン!!

添え付けのポトフ!!


「いたっ、いっ、いただきます!!」

「いただきますで噛む人初めて見たわ」


そんなの知らないもう食べる!!


特別お腹が空いていたわけではない。


朝ごはんもちゃんと食べてきたし、仮想戦闘施設で運動したとはいえあくまで仮想的な話。現実の体にはなにも起きていない。


そんな俺の腹の食指を温めるのは何を隠そう俺の好奇心。


今週のうちにもたくさん知らない物を食べてきた。どれも美味しくて、満足のいく食事。


こんなにご飯が美味しいと思える生活をしたのは初めてかもしれない。少なくとも森の中では調味料のない淡白な味だった。ここまで複雑じゃない。


「ほんとに食べきれちゃいそうね」


感心する声色の赫糸が口にしているのは両手で簡単に持ててしまうような皿に乗った、特製デミグラスハンバーグ。白いソースがチロチロ掛けられているやつ。


近くにはスライスされたバゲットと、小さな皿に入ったオリーブオイル。それとポトフ。


「……んぐ。うめぇもん」

「それでも入らないわよそんな量」

「そう?」

「ええそうよ」


それから会話はなく、夢中なまま口に運んで完食した。


満腹感が体を支配する。

ふんわりとする頭、程よい店内の熱気が気持ちいい。


「赫糸」

「ん?」

「テスト、大丈夫そう?」


リラックスする身体。


心地の良い沈黙の中で俺はふと、赫糸にそんなことを投げかけていた。


赫糸の答えは頷きだった。


「あんたの友達のノート凄く見やすくていいわ。良い友達持ったわね、助かってる」

「だよなっ、すっごい見やすいよな! 俺もあれには毎回助けられてるよ…さすが師匠ってだけある。あ、それに勉強なんだけどな! 放課後勉強会開いてるっていったじゃん? 数は少ないんだけど班員以外にも何人かいて、そのみんなと仲良くなったんだ!」

「そう」

「だから今俺っ、すっごい充実してて楽しいんだ!」


加隈姉弟、鳥田さんに吾妻音さん。

彼、彼女らの下の名前はまだ全然呼べないけど、間違いなくコミュニケーションを取る機会が多くなってきている。


この前なんて雷斗くんに気に入られたのかパピコ一個もらっちゃったんだよね。なんか古賀くんと同じ顔してたけど、優しくされて嬉しくないわけがなかった。


「仲良くなるのはいいけど、変な奴とは距離を置いときなさいよ」

「………」


そんなことを言われて、勝手に目線が赫糸に固定される。別に、他意はない、なんてことはない。


それは事実だからだ。


そんな目に細めて返すショッキングピンク瞳。


「……てか、仲良くなるのはいいけどーとか言ってるけど、そもそも赫糸って友達いるの」


不意というか、いつもの流れで言ってしまった言葉。その言葉に赫糸は。


「い、いるわよっ、失礼ね…」


怒るよりも、口を結んで少し目線を下の方へ向けた。


「目を、合わせてもう一回いってくれ」

「ほ、ほんとうなんだって! 私がよく着てる黒のスエット!! あれ! 友達とのペアルックだから!!」

「…ぺあ……るっく……?」

「仲のいい友達と身につけるものを一緒にするの! ただそれだけ!」

「ふーん………ほぉ…ペアルック……」


やけに響きのいいペアルック。

仲がいい証としてもいいと考えれば、是非とも欲しい。今度みんなにに相談してみよう。


「ま、まぁ! 友達は広く浅くより狭く深くよ!」

「そんなに取り乱さなくていいじゃん」

「取り乱してない!!」

「申し訳ありませんお客様、もう少しお静かにいただけませんか」

「……ちっ」


店員さんを前に盛大に舌打ちを鳴らし、腕を組んで赫糸は背もたれに体重を預けた。


「なぁ…赫糸」

「なに」

「俺たちってさ……友達なの?」


そしてまたふと湧いた、疑問が一つ。


いまいちパッとしない友達の定義。


はたしてその条件はなんなのかと考えた時、ひとまず俺は気疲れしない程度に話し合える仲の人、と考えた。


そうした条件を通して赫糸との関係を見つめた時、どうしても当てはまってしまうのではないかと思えてしまった。


もちろんいけすかない相手で、好きになれない人間性。ここにいるのも打算的で、後続の為の経験を積みに来たみたいなもの。


それでも、やっぱりどこか話やすい。


「……わからないわ」


そして、赫糸はそう言った。


「そっか…」

「というか、友達かどうかなんて人に聞くもんじゃないでしょ」

「……そ、そういうものなの」

「そうじゃないの? 友達についてそこまで深く考えた事ないわ」

「そっか……」


そんな話を終えて、しばしの寛ぎ時間。腹の膨れに収まりがつくようになって、俺たちは解散した。


赫糸との交友の強制は、金曜日の時点で解消されている。だから、土曜日などの仮想戦闘施設に行く以外での連絡はしていない。


友達ならそんなことはないのかもしれない。


だから俺たちは友達ではないのだろう。

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