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(旧:幻惑のアレース)10年間森の中でじっちゃんに稽古をつけられたあと、友達を作ってこいと能力者の学園に入学させられた  作者: MRプロジェクト
<< 1章 2節 >>【炎天無比】

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#23【帰路に立つ】

ゴムに引っ張られるような感覚が体を強く襲う。その勢いの激しさに、吐き気を催しそうになりながら堪えてみる。けれどそもそも、何かを吐き出すような体はここにない。


俺はまだ、意識の奥底で居座っている。


相変わらず真っ暗闇で、何が何だかわからない。時間の感覚がわからないほどに不安定な意識。


身体から意識が離れ離れになるような感覚に収まりがついたが、どこかまだ、一体感のない感触が残っている。


だが、それも少ししたらピタッと重なり合う一体感が全身を駆け巡った。


それと同時に明瞭な思考回路に理解が及ぶ。しっかりしている意識。それに気づいた時、瞼の先に色がつき始めた。


そうして開く、目の前の扉。仮想戦闘施設の、乗り込んでいた機械。


俺は、帰って、きたのか。


呆然と座りほおけて、暫しの熟考。けれどすぐに体、特に右腕のあの形容し難い苦痛が存在していないことに気づく。体は重たいけど、さっきほどは重くない。

見下ろした腹。


そこには服に穴が空いていなければ、腹筋に焼け爛れたあとなんてものもない。


着ている服も黒から白へ。

そこまで確認して、ようやくさっきまでが本当に仮想世界で起きた事で、今見えている世界が現実なのだと理解した。


そんな折り。


「ねぇ昇也」

「……ぇ…?」


扉の先から顔を出したのは、不機嫌な顔をした赫糸。


「な、なに…」

「あんたのさっきのあれ、なに」

「……さっきのあれ…?」

「とぼけないでよ!」


機械の壁を叩き、怒る赫糸。

けれど、本当にわからない。

俺はただ、溺れてただけなんだ。


その旨を伝えるのだけれど、どうも納得していない症状。


「じゃああんたの能力を教えなさい」

「あー……」


そういえば、今週の金曜日の時点で貸し借りの効力は消えている。だとすれば、言わないというのも手か。今後敵にする可能性しかない相手だ、情報は隠すが吉。


そんな考えでいたら、赫糸はひどく顔を顰めた。


「早く言いなさいよ」

「情報は安売りしちゃダメだからな。欲しけりゃ殺し合いを無効にしてくれ」


無茶振りというか、そうなって欲しいというか、そうであれというか、思うままに出ただけの願望的な交換条件。それが叶わないことはなんとなくわかっている。


「別にいいわよ。あんたの実力は見れたし」


わかっていたからこそ、その虚をつく一言に目を丸くした。まさか、赫糸が自分の意見を害するものを受け入れた、だと、と。


「なによ、嘘じゃないわ。だからいいなさい」

「あっ、ああ、うん。ありがとう赫糸」

「…礼はいいから」

「ああうん」


この戦いの始まりが、赫糸のムカつくからとかいうとんでもない身勝手な感情によるもので始まり、実力が見れたといういつの間にか、元から趣旨があったかのような発言。


やっぱりこいつの考えてることはわからないが、まぁいい。棚から牡丹餅100億個だ。


「えっと、俺の能力は……えっと、なんていうか……えっと」

「……長くなるの」

「いや! いえる、今! えっと、イメージ……イメージしたものの効果を身体に取り入れる能力……じゃない、これは効果か。えっと、本質的には催眠能力って、じっちゃんが言ってた」


そういうと、赫糸はかなり訝しげに睨みを効かせつつもどこか腑に落ちたようで。


「催眠……だからかあんな幻覚が見えてたのね」


口を窄めてそう言った。


「…で、それで?」

「……え、それでって?」

「他の能力、あと一つはあるんでしょ。怪力系の」

「ないよ」

「え」

「ないよ。さっきいったイメージしたものの効果を取り入れる過程で出来上がったのが、その、怪力系? に該当する能力の効果になる」


赫糸はそれから、俺の話の真偽を測るために何個か俺に質問を投げかけた。だが程度や俺の表情、姿勢が一貫していたからなのだろう。


終始腑に落ちない顔を浮かべていながらも詰問は終えることとなった。


「あんたの能力ってなんか、変な能力ね」

「へ、へん!? お、お前なぁ!!」


流石に能力をバカにされるというのは、アイデンティティそのものに釘を刺して壊すようなもの。

失礼な物言いに思わず声を上げた時、赫糸は言った。


「まぁでも本当に催眠能力だったとしたら、あんた相当頑張ってきたのね。あれは普通じゃないわ」

「…………え」


赫糸が、俺を……褒めた。


「えってなに、そんなに評価に満足がいかないの」

「いや、ちがっ、お、お前が、罵倒以外を口にしたから……」

「私のことをなんだと思ってんの」

「理不尽罵詈雑言暴力大量生産機」

「殺すわよ」


そういう言葉に殺意のようなものは乗っかっていない。どちらかといえば、呆れというか慣れ?


「昇也もほんというようになったわね。出会い頭が懐かしいわ」

「お前は相変わらずって感じだけどな。それに初対面の相手ならあれが普通だろ」

「………。私は……舐められると困るのよ、だから威張ってるだけ」

「その割には芯から傲慢な気がするが」

「ぬ、抜けなくなったちゃったのよ!! それに、別にいいの、これで。私は私でやりたい事があるから」

「そう」

「そうよ」


そうして、赫糸と初めてまともに会話をしていると黒江さんがやってきた。


「立ち話中にごめんね。話的に終わりで本当にいいんだよね」

「ええ、それでいいわ」

「わかった。それじゃあはい、更衣室の鍵。本日はお疲れ様でした。また、縁があったらよろしくお願いします」


そうして俺たちは黒江さんと別れ、更衣室で服を着替えてその場で解散ーーのつもりだったのだけれど。


「うわぁあああ!! すっごい美味しそう!! え、赫糸すげぇなこれ!!!」

「は、恥ずかしいからやめてその反応…」


俺たちは今、レストランにやってきていた。

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