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(旧:幻惑のアレース)10年間森の中でじっちゃんに稽古をつけられたあと、友達を作ってこいと能力者の学園に入学させられた  作者: MRプロジェクト
<< 1章 2節 >>【炎天無比】

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#6【蘇我乃々愛は対等を望んでいる】

病気も能力も何もなかった遠い昔。

幼少の頃。


お金持ちとは世間一般にとって羨ましい存在であり、優雅で、暇を持て余すような暮らしをしていると思われがちだ。


けれど、お金を稼ぐと言うことは簡単な事じゃない。


時間はとられるし、泥臭い努力も責任も必要だ。

いつ何時であっても(・・・・・・・・・)会社に向かう覚悟もなくてはならない。



それは蘇我乃々愛の両親共に、例に漏れなかった。



そんな忙しいはずの両親は、けれども自身の子供に目がなくって、小さな休み時間や休日は体調を崩していない限り外出したりなどしてたくさん遊んでいた。


両親の愛情は本物で、それは幼児だったといえど蘇我乃々愛の心にしっかり届いていた。



それに終止符を打ったのは、金持ちを集中的に狙う反グレ能力者集団による襲撃だった。



蘇我家は能力者がいないため国営派遣部隊の能力者を雇っていたのだけれど、その日は丁度派遣を呼ぶことができていなかった。


いきなり能力という概念が世界に生えてきた頃なのだ。そうした公的サービスに人員が足りていないと言うのは当然と仕方なく、現状、長期的な配属というのは困難だった。


そのため、警備員はランダムな日ごとに派遣されていた。


その派遣されない日が、狙われてしまった。


のちに情報漏洩からくる事態だったと知れたのだが、そんなことは蘇我乃々愛にとってはどうだってよかった。



夜。



団欒とした空間。

丁度大きなベッドの上で3人並んで寝転んでいる頃。


真ん中にいるのは蘇我乃々愛で、紙の絵本を読み聞かせてもらっていた。


そんな折り、この豪邸の清掃や用事の手伝いをするメイドの嬌声が轟いた。


その声は鬼気迫るもので、断じて食器を割ってしまったから出た声なんかではなかった。


そんな異変にすぐさま警察への連絡や避難行動を起こす両親であったが、金持ちを狙うと言う性質上いい家の散策が得意な反グレ集団。


また、能力を用いて人の位置までも把握していたようだ。


的確に開けられたドア。

武装して見えない顔。

武器、拘束具、スプレー缶、5歳くらいならすっぽり入る大きなボストンバック。


緊迫する状況を前に、蘇我乃々愛は幼いといえど理解した。



殺される。



それと同時に、この楽しくて愛おしい日常が壊されてしまう、と。


それは、嫌だった。


『なんでもします! なんでもあげます! だからみんなが怪我をしないで生きられるようにしてください! お願いします神様!!』


そんな必死な願い。

求める力。

全てを捧げた懇願。


差し迫る凶悪な魔の手を前にした時、それは、発現した。



能力は、その時に必要とされた力となると一説ではされている。そして、能力には発現した時点で使い方をなんとなく理解できる、と言う性質があった。



蘇我乃々愛は瞬時に流れ込んできた感覚を元に、ただ一心不乱に暴れ回り、齢5歳にして。



ーー8人の人間を殺害した。



まるで運命だったと思えてしまうほどに都合のよかった能力の覚醒。


でも、だからこそ当時は特に自身が持つ全てと等価交換されてしまったのだと思えてしかたなかった。


その後すぐに心臓病に罹ったことがその考えに拍車をかける。


自分にはもう運命力がないから、これから先いいことは起きえない。

逆に自分にとって悪い事ばかりが身の回りに起きはじめる。それは仕方ない事で、受け入れるべき代価。


諦めという名の納得。


でも、そんな気持ちのままだと心が壊れてしまいそうで。


だから形成されていく、不思議なポジティブさと、どうにもならないなら自分が納得する道を自分で切り開くんだという強情さ。


しかし、蘇我乃々愛と言う人物像が凝固していく一方で、周囲の人間にあまりそうしたキャラクター性は受け入れられる事はなかった。


天真爛漫、大きな声を上げながら我が道をゆく一歩間違えなくてもワガママで頑固なお嬢様。


蘇我乃々愛。


ピタッと当てはまれば仲良くなれる、なんて人間関係は甘くはない。ましてや、そんな強烈な自我を持つ彼女を受け入れられるほど、小中学生の精神は強固ではない。


いつしか離れていく友人、クラスメイト。

簡単な連絡ですら話しかけてくれる人もいなくなる。


そんな彼女の周りに残るのは両親や執事達だけだった。


残った人たちだけは、蘇我乃々愛の性格を個性として受け入れてくれ愛を注いでいた。


ただ、過去の事件に心臓の病気、芳しくない交友関係の事もありみんな心配症になっていく。


それはそれで蘇我乃々愛にとって好ましくはなかった。



家族ならばもっとフラットな関係でいたかった。



そう、思っていた。


「……ねぇ健二」

「…ん?」

「健二は……私が変だと思わないの?」


そんな、なんとも答えにくい問い。

けれど、米田は包み隠すこともないだろうと深く悩むことはしなかった。


「んー…まぁ、オブラートに包まなきゃ少し変わってはいるなぁと思うよ」

「そっか……。でもその感性は普通よ!」

「うん。僕もそこは疑うつもりないな」

「……なにかこう…真正面から肯定されるのもなにか、なにか悔しいわね!」

「あはは、でも本当のことじゃん」

「本当の事だから心底悔しいわ!」


実際にその顔には、苦渋ほどではないがあまり納得がいっていないと言う表情が浮かんでいた。

それは蘇我がしなさそうな新鮮な表情。


その様子を米田は冷静に見て、ただ自分が伝えたい事を口にした。


「……でもね」


とても、優しい口調。


「……なに?」


蘇我は、少し何か求めてる言葉があるかのような、可愛らしい声で米田に目を向ける。


期待される目線。


米田はやはり少し脚色のある話に変えようかと思ったが、やっぱり伝えたいままの方がいいと思いそれを口にする。


「蘇我さんが変って言う性格は……蘇我さんの良いところの一つだと僕は思うよ。確かにエグ味みたいなのは強いけど」

「えぐみ……」

「でも芯があるって事だし迷わない感じはカッコよくて魅力的に見えてる。それにいろんな気遣いとかしてるし、人としてよく出来てるなって思ってる」


米田が気づいている蘇我の気遣いや優しさというのは、特段目立った行動によるものではない。

どちらかといえば真にサポート的で、主役が立ち回りやすいように手を貸す黒子のような動き方。


だから案外気づかれない。

もはや風と一緒、無味無臭。


それも、蘇我本人がそれを当然としているのだから気付きにくいのは仕方なかった。


だが、米田健二という男は何かとめざとくて、蘇我の良いところとしてその心の綺麗さを理解していた。


「まぁ、なんにしても蘇我さんのことを変人だとは思えないかな。言っちゃえばただの個性としか思ってない」


米田の一言。

過去に言われた両親の言葉と被る一面があった。


「まぁまだ出会ってすぐだから、もしかしたらこれからドンドン蘇我さんの事変人扱いするかもしれないけど」

「ちょっと! 最後までフォローしなさいよ!」

「あだっ、暴力反対だってー」


そういやこういう話を人に聞いたことがないな、と蘇我乃々愛は振り返る。


いつも人とは体当たり的に話すだけで、こう言う自身の中身をどう思っているのかと問うた事がない。


いや、問うよりも先にみんながいなくなってしまっていた。そこにいないなら、聞きようがない。



だから、とても新鮮だった。



こんなポジティブな言葉をかけられたのは、両親や身の回りにいる大人達以外に初めてだった。


その上、心の底から渇望していた気遣いのない対等な関係性も築いているようにも思えた。


だからとても、蘇我乃々愛の頭には米田健二という男の子の造形が本当にしっかり、刻まれた。


この帰り道は運命か、はたまたただの日常か。


それはよく分からない。


そんなこと、気にしていない。

蘇我乃々愛はただ、そんな間柄になれたことを心底嬉しく思っていた。


「健二もいい人ね!」

「そりゃあ……蘇我ファミリーなので」


出会って二日目。


普通の交友関係はまだぎこちなさが残るという。


でも今の2人にはそんなものはない。


「ふふ。健二っておかしな人っ」

「えー!? ……蘇我ファミリー…」

「やっぱり蘇我ファミリーをいいように使っているじゃない!」

「ごめんなさい…」

「ふふっ」


ただただ、好ましい。

心の底から楽しいと思える時間だなと、蘇我乃々愛は感じていた。

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