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(旧:幻惑のアレース)10年間森の中でじっちゃんに稽古をつけられたあと、友達を作ってこいと能力者の学園に入学させられた  作者: MRプロジェクト
<< 1章 2節 >>【炎天無比】

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#3【能力 : 両性の天秤】

急速に膨れ上がった全身の筋肉。

骨格も代わってしまっていて、特に胴回りの変化が著しい。あのお淑やかな面影なんて微塵もない、筋骨隆々の大男。


勇ましく、実践的な肉付きの強靭な肉体。


顔や背、足元からきめ細やかな蒸気が勢いよく噴出する。


「優しく止めても話を聞かねぇし、互いに火は注いでばっかでよぉ。ほんとにお前らなんなんだよ。舐めてんのか? なぁ!!! 舐めてんのかって聞いてんだよ!!!」


シャツは伸縮性が高いのか破れそうで破れていない。

それよりも、急激な身長の伸びに対して服の丈が追いついていなかった。


だから視界に映る、豪快に割れている腹筋と腰回りの筋肉の激しい主張。


「お前ら2人でバカ押し付けあってるがな、そもそもお前らどっこいどっこいなんじゃ!! んな馬鹿共が喚く部屋に居させられる俺らのこと考えろや!! えぇ"!!! なぁ!!!!!」


声も大きい。

渋くて野太い。

熊の威嚇よりも鈍重で、覇気が籠っている。


そんな喉を通して発せられる、火焔滾るを体現する怒髪天の言葉たち。教室内に轟く咆哮は、思わずと脚に力が入る程に威圧的だった。


芯まで震えさせられる重たい怒声。

明確に振り下ろされる怒りのエネルギー。


上から押し潰されていると錯覚させられるその声に、2人は目を下に落として席に座り込んだ。


「なん"とか言えやぁ"あ"ああ!!!」


机を強く叩きつけて怒鳴る男性の剣幕に、2人ともビクンっと体を跳ね上げて縮こまっていた。


そんな2人を見た桃色髪の男性は、強い舌打ちをして深いため息を吐きながら仰々しく席に座り込んだ。


「表面上でもええわ、取り敢えず仲直りせぇや」

「「………」」

「はよしろって言ってんだろ!!」

「「はっ、はい!!」」


本当に、ギャップが凄い。

骨のない魚のような弱々しい声はどこへ行ったんだ。


流石に喧嘩していた2人も、この更に爆発しかねない男性を前に不貞腐れた態度を取ることはできず。


「ご、ごめんなさい。雷斗。調子に乗ったわ」

「俺も…ちょっと血が上った。気をつける」


顔を真っ青にしながら謝っていた。

目線は合っていない。


「おう。マジで2度としょうもない喧嘩をするな。喧嘩する事に中身があるならいいがそんなガキみたいなのは見てられん」


そんな発言から感じる、精神的な成熟度合い。

怒りの根底にはあの幼稚さへの怒りがあったことがよくわかった。


「あの子、凄いわね…」


灰田さんが思わずと呟くと青峯さんも頷いた。


机に手を置いてしゃがみこむ青峯さん。俺が椅子を渡そうとすると「ありがと、だいじょぶ」と首を横に振るう。


青峯さんは灰田さんを見ながら言った。


「正直私もびっくり。一応ね、昨日の時点で話には聞いてはいたの、こうなるよーって。でも流石にこの姿を想像するのは無理です、ここまでゴツいとは思わなかった」


青峯さんの予想外の一言には同意だ。

なんだったら俺は、あれを事前に説明されたとしても実際見るまでは信じられないだろう。


「…ねぇ青峯さん、あの子の能力って何なの?」


灰田さんが少し興味深げに尋ね聞く。


「えっと…ねぇ……。あ、まず名前ね。名前が吾妻音大和(あずまね やまと)ちゃん。で能力は…2つ…正確には3つになるのかな?」

「3つ……。2つはそれなりに見かけるけど3つはほんとに希少。逸材ね」

「いやまぁ正確にはって感じで、実際のところ2つと変わんないんだって」



【両性の天秤】

○発動条件 : 目に多くの光を入れる事。

○能力発動後、肉体が男性へ変質する。また、使用できる能力も変化する。


・女性体【拘束】

・男性体【爆発系の能力】



「らしいよ」

「面白い能力ね……。個人的に扱える能力が変わるのが真新しいわ」

「ねー、新しいよね」


そんな灰田さんと青峯さんの話が終わる頃には吾妻音(あずまね)さんは能力を解いており、元の女の子の姿に戻っていた。


前髪も勿論下ろされている。


そんな彼女は今腰だとか腕を痛そうに揉んでいた。


「デメリットは骨の痛みなんだって。まぁ骨格ごと変わっちゃうんだからそりゃそうよねーとは思うけど」

「むしろ急速な変化が痛いで済んでるあたり吾妻音さんが凄いとも言えるわ」

「確かにー!」


大きく頷く青峯さんは、ふと何か思い至ったようで「ねぇねぇ」と灰田さんに声をかけた。


「どうしたの?」

「ウィコネ交換しよ。私の家では賢そうな人とは仲良くしとけって格言があるの」


灰田さんはそんな青峯さんの冗談にふふっと小さく笑う。


「なにそれ。お世辞は結構よ」

「私のモットーは正直に生きる事なのですっ」


立ち上がり、フフンとふんぞりかえった青峯さん。

鼻に届く、そんな彼女のいい香り。


男性と違って女性の匂いがよく鼻に届いてくるのはなんなのだろうか、少し不思議に感じる。


「いいよ、全然」

「やった!! あ。あと蘇我さんと古賀くんのも欲しい!」

「別にええけど、健二のは?」

「米田くんのはもう持ってまーす」

「え、いつのまに」

「さぁーいつでしょ〜」

「へぇ……やるなぁ、健二」

「なんにもやってないよ!」

「えぇーうそぉーしたじゃぁん、昨日のよーるっ」

「青峯さんが言うとシャレにならないよ!!」


古賀くんと青峯さんに挟まれる米田くんは、いろんな言葉で責められては頑張って否定して、そうしてなんとか既成事実を作り出さないように奔走していた。


そんな折り。


米田くんの揶揄いから抜け出した青峯さんは、蘇我さんにウィーコネクトの交換をもう一度打診していた。

それに対して蘇我さんは、嫌な気色を微塵も発さず頷いて交換していた。


「……」


そんな青峯さんを見て俺は気づいたことがある。

それは。



青峯さん、友達作るのすっごくうまい。



ということだ。


誰にでもフランクに語りかけられる物怖じのなさ。

無理を感じない話し方。

普通に話しやすいし、自身のペースを崩す事はあまりなさそうで、いつでも何処でも青峯さんは青峯さんらしい話し方で談話に花を咲かせている。


それはきっと誰もが出来る芸当なんかじゃない。


事ここにおいて言えば、青峯さんのキャラクター性があるからこそなせる技なんだろう。


青峯さんと言えば、よく笑い、ふざけるのが大好きで、楽しい人というイメージ。

このキャラクター性からくる人当たりのよさは、ブレることなくしっかり俺の中で確立されている。


このよっぽどのことがない限り崩れないだろうという安定した安心感が、最終的な話しやすさみたいなものにつながっているのだろう。


(俺もこんな風になれるかな……)


考えるほどに際立つ、その難しさ。

恐らく普通に真似するだけじゃ誰にも受け入れられないだろう。


ひとまずは要研究というところか。


「それでね、この前ねっ」


灰田さんと青峯さんはいつの間にか2人っきりで談笑を繰り広げていた。そんなところに差し込んだ、一つの小さな影。


青峯さんの肩を叩いたのは、翡翠色の髪を後ろで束ねたほんわかした雰囲気の子、鳥田さんだった。


俺くらいの身長の青峯さん。

この子はそんな青峯さんの胸元に届く位の身長。


「そろそろ勉強しようよ。言い出しっぺは青峯さんでしょ? まだ1つの内容しか一緒にやってないよ?」


優しい声色。

けど青峯さんの顔色はかなり悪かった。


「あ、あははぁ、そうです。私が言い出しっぺです、すみません……」

「そうだよね?」

「はい。えっとな、なので、ちゃんと帰えひゃっちょ!? 京子ちゃん力強い痛い肩はずれるー!!!」

「外したらくっ付ければいいんです」

「ほんわかした雰囲気のフリした脳筋め! 雰囲気詐欺だー!!」

「知らないよそんなの。ほら確認テストできたからしよ」

「予習してないからちょっとしか出来ないよぉ…」

「じゃあちゃんと勉強してください」

「はい……」


そんな光景を見て、俺たちも再開するかと机に向かい合い始めた。

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