#1【涼しい風と、あの音が、木霊する】
人は劇的な変化を目の当たりにする事が多いのか。
ひょんなことからいつもの日常が良いものに変わるのか。はたまた、悪いものに変わっていくのか。
それは誰にもわからない。
ある日突然有名な人に出会って一気に人生が好転していくのか。逆に転落していくのか。
それもまた、誰にもわからない。
でも、一つ言えることはそんな劇的な変化を遂げるような事柄が起きることなんてほぼない。
それこそ、突然、明日にでも昇也が好きな子が隣に引越してくるくらいありえない。
それをいくら切望しても、何もしていないのにそうなるなんてことは早々ない。
人生っていうのは起伏はあれど平面的だ。
波を生み出す出会いはあっても、それ自体が大波へと変化する可能性は限りなく小さい。
あくまで0が1に変化した。
ただそれだけだ。
でも、そうした揺らぎっていうのは、人との縁っていうのは……いずれも、自分の変化のあしがかりになりうると言う事。
その変化と言うのは人間にとって、成長するために必ず必要な要素で、だからこそ蔑ろにしてはいけないもの。
如何にして自分で掴みにいくか、如何にして与えられた変化を大きく強くしていくかが大事なんだ。
嫌な事があっても、嫌な人とであっても面と向き合わなくちゃならない場面にでくわす。
そんな可能性も含んでいる。
だからこそそれはとても大変で、疲れる事。
だけど、頑張った分得るものは想像以上に大きくて多い事だってある。嫌いな人と紡いだ関係が、後から考えたらなんだかんだいい判断だったってなることもある。
それに例え得たものが小さくても、その得たものは間違いなく今後に役立つ……それこそとある場面のキーアイテムにだってなりうる。
まぁ、俺が言いたいのはだな。
『昇也』
友達をたくさん作れってことだ。
涼しい風と、あの音が、木霊する。
【次章予告】
ついに始まる新年度。
4月の頭に開かれた入学式。
森から出てきたばかり。少しばかり不慣れな足取りで向かう学園、日本能力者学園。
華園昇也はその入学式当日から幾つかのアクシデントに見舞われる。
様々な人との出会いが紡がれる中で、昇也は何を学ぶのか。
「次回」
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