#16【あの蘇我さんが気品に満ち溢れてる】
「という事で! 蘇我ファミリー結成祝して! いただきます!」
「なんかちょっとごめん。今だけは普通にいえないの蘇我さん」
「いただきます!」
「「「「いただきます」」」」
「つーかお前らガッツリ食うなぁ、特に昇也」
そう言われて周りと見比べてみれば「確かに」と言えた。
灰田さんは【冷やしうどん】【おにぎり】【天ぷら盛り合わせ】
俺は【出汁うどん】【カツ丼】【唐揚げ丼】【天ぷら盛り合わせ】【パフェ】
お腹が空き過ぎている事もあるし、学園のアプリにあるメニューの3D映像を見て食べてみたい! ってなったものが多かったのが原因だ。
俺は今少し冷静になったせいか、これらをちゃんと食べ切れるか不安になってしまっている。
ちょっと古賀くんを恨んだ。
「なんというか、食べた事ないのばっかだから気になって」
「食った事ねぇとかあるんか…。お前ほんまどんな家庭で生きてきたん。ホログラマーも持ってないしさ……」
そう言われて。
「あー…」
どう話そうか、悩んだ。
俺の人生を語る事には問題なくて、森で住んでいたことも隠すつもりはない。
ただ普通に頭が上手く話を組み立てられるのか、と言うだけの話。
実際、今古賀くんに問われて何から順序立てて話そうか、と言う思考の土台は築けたのだけれどその上に話をのせようとしてもあっちの話、こっちの話、と言った風に話題がてんやわんやになって全然まとまらない。
頭も熱くなってきたし、頭痛もひどい。
だから生まれた言葉の間。
それを見て、古賀くんはパンっと強く手を合わせると頭を下げた。
「ちょ、ほんまごめんなっ。こう言うの聞くもんちゃうよなっ。えっとなんか、欲しいもの…あったら、言ってな? 全然友達やから買うで」
「…あー、うんありが…とも、だち……?」
待って、今古賀くん俺のこと友達って言った?
「え、あ、うん。え、嫌やった?」
え、そんなことある訳ない!
全然ない、全然ないよ古賀くん。
ちょっとまって、急に言われてびっくりしたけどすっごく嬉しくなってきた!
「うんん、ぜんっぜんっ」
「あ、あぁ…そう……」
なんか今向けられてる顔が友達に向けるような顔じゃない気がするけど……いや! これこそが友達相手に向ける顔なのかもしれない……のか?
いや、なんかもうわかんないからいいや!
「よろしくっ古賀くんっ」
「う、うん……。てか、え、俺今闇の中にいる?」
「あっ華園くん、僕も友達と思ってるからね」
「よ、米田くんまで……俺泣きそう」
「やばい重力が凄い勢いで俺を呑み込んでる」
「気のせいよ古賀、戻ってきて」
「ただいま」
オヨヨとちびりでる涙を手で掻き分けて視界を掃除すれば、広がる世界はとっても明るく感じます。
世界って美しかったんだな。
(けど……なんか、あっさり友達作るの達成しちゃったな)
あっけない終わりを迎えたじっちゃんとの約束。
取り敢えず果たせたことに喜びがありつつ、どこか重たく身構えてたこともあって拍子抜けでもあった。
『友達になれたなら、次は親友だ。親友の関係になれるよう努力しろ昇也』
と、思ったのも束の間。
そういえば次の目標があったことを忘れていた。
けれど、親友。
「ねぇ古賀くん」
「な、なに…?」
「親友って、なに?」
その一言を発した瞬間のこと。
古賀くんは悲しい顔を浮かべると急に俺の肩を抱きしめた。ちょっと力が強くないかな?
「お前はもうなにも喋るなっ、お前の居場所はここにあるっ安心しろっ昇也っ」
「え、あぁ…うん」
質問をしてみたのだがあまりいい回答はなかったな。
親友とは、どう言う条件で発生する関係なのか。
……謎が深まるばかりだ。
後で辞書を引いてみるか。
そんな話を前にしていた蘇我さんは、優雅に前掛けをかけながら言った。
「昇也、私もなんでも買ってあげられるわ、お金持ちだから。…一軒家となれば話は別だけどある程度湯水の如く使えるの。困った時は助け合いよ。遠慮なく頼ってほしいわ」
そう、彼女は言う。
とても落ち着いた口調で。
その口調はかなり優しくて。
さっきまでの声色と比べて異様なほどまでに静かで。
でも、芯のある声は健在で。
なにより気品のようなものを、蘇我さんから強く感じる。
そう言うオーラが映って見える。
ゴシゴシと目を擦ってみたりホログラマーの電源を落としてみたりするが、そんなエフェクトは外れる事がなかった。
(え、えぇ……)
蘇我さんが、蘇我さんじゃない感じがする。
そう思い古賀くんに目を向けると、同じく絶句していた。
「お、おい蘇我。どうした、頭打ったか」
かなり心配した様子の古賀くんの言葉を受けた蘇我さんは、自分の頭を撫でながら天井を見上げて数秒すると、目線を元に戻して言った。
「多分問題ないわ」
「なんやこいつ誰やねん!!」
「うるさい古賀」
「虎宇治、食事の場よ。静かにしてちょうだい」
「あ、あぁ……うん。すみません…」
もう、今の自分の立場と蘇我さんの雰囲気に気圧されて、古賀くんの言葉がとんでもなく硬くなってしまった。隣の席の米田くんだけは少し笑ってる。
「確かに驚きはあるね。まだ初日の仲なのに」
「驚きどころやないやろこれ、人格変わってるやん…」
「……そうかしら?」
カトラリーを揃え、姿勢を正した蘇我さんは言う。
「私の家、食事は静かに摂る事がルールなの。口の中に物を含んでいなければ多少話す事もあるのだけれど、もしかしたら静かにすると言う意識が影響しているのかもしれないわね」
「その状態まさかの無自覚だったのかよ……」
古賀くんは呆れた様相で蘇我さんを一瞥した後、この状態の蘇我さんを【お嬢様フォルム】と命名した。
「良いわね【お嬢様フォルム】、当てはまる機会があれば是非多用して頂戴」
「おいおいお墨付きもらっちゃったよ…」
古賀くんはたじろぐ一方だった。
「それよりも早く食べましょ、わたしお腹すいた」
「抄子の言うとおりね。据え膳を前に長話は悟りが開けてしまうわ」
「ねぇこの状況まともなの俺と昇也だけ? 昇也も全然状況飲み込めてへんで? なぁ……? ……そっか、もう俺1人なのね」




