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(旧:幻惑のアレース)10年間森の中でじっちゃんに稽古をつけられたあと、友達を作ってこいと能力者の学園に入学させられた  作者: MRプロジェクト
<< 1章 1節 >>【芽吹く入学1日目】

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#11【青峯さんの指先は冷たい】

スッと手渡された、白く清潔で高級な雰囲気をこれでもかと奮う紙袋が2つ。


2つとも何かのご神体として崇めてもバチは当たらないだろう美しさ。


材質はスベスベしている。

袋の表面中央には金色でロゴが描かれている。

手下げ紐の手触りも柔らかく質がいい。


そんな非日常的様相の紙袋を握っていると、どうも自身がお金持ちになったと錯覚する感覚に陥る。


「………?」


袋の表や裏、中を確認。

一つは中にミルキーな白さの四角い箱が3つ入っている。そのうち2つは手のひら半分くらいの大きさの箱。


箱の質感はスマホ購入時に入れられている箱のようなスマートな様相。


もう一つの袋には、包装された変な形の容器とケーブル、手のひらサイズの冊子が少し整えられた形で入っていた。


「ホログラマーです、貸し出し用のやつ。右手に持っている方が機械本体。左手のものが充電器、コンタクトレンズを洗う為の液体。洗ったコンタクトを乾燥させる使い捨ての除菌容器です」

「あー…これが例の…」

「そうです、例のやつです。ホログラマー自体の充電は満タンにしてくれているそうなので即日使えるとのことです」


そう言われて、ついに来たと頬を緩める。


やっぱり周囲の環境と足並みが揃わないと言うのは、中々精神的にも実態的にも厳しかった。


席替えしかり、資料しかり、メモしかり。

朝方の件だってホログラマーを持っていれば赤髪に頼らずとも対処できていただろうし。


「……あ。相川先生、ホログラマーを渡すの遅れた事すっごい申し訳ないって謝ってましたよ」

「え!? いや、そんな……。貸してもらえるだけありがたいですのに。……相川先生って普段どこにいらっしゃいますかね」


そう尋ねると帰ってきた言葉は生徒指導室、と言うところだった。


生徒指導室。

何処にあるかは記憶に新しい。


「わかりました、ありがとうございます」

「どういたしまして。……それでホログラマーについてなんですが、コンタクト式とメガネ式、どっちがいいか聞きそびれてたみたいでして、いっその事どちらも使用してとの事でした」


あー、そういやぁ驕田くんが言ってたな2型には種類があるって。


「それと、貸し出しについては1ヶ月ごとに現物を持ち合わせて書類的に更新する必要があるので、忘れずに相川先生を尋ねてください」

「わかりました」


諸々の注意事項を聞いて、一旦話に一区切り。

取り敢えず蘇我さんのとこに戻ろうと踵を返すと、青峯さんが通りすがる俺の肩を叩いた


「ホログラマーの付け方分かる?」


そう問いながら。


その言葉に俺は首を横に振るう。

振るうしかなかった。

ほんとに分かんないから。


そうすれば少し笑みを浮かべながら班員に「ちょっと話リダーツ」と声をかけてから俺から紙袋を受け取った。


「この青峯葵さんが救われない子羊の救済を行ってあげよう。あぁなんて慈悲深い」

「流石マイゴッドです」

「左様左様、であろうであろう〜」


満面と頬を緩める彼女は2つの箱を開けて中身を確認すると、メガネの形をしたホログラマーは箱に戻し、コンタクト型というホログラマーの箱を残して準備し始める。


包装などはすでに取っ払われた後のようで、箱の窪みの中で鎮座する手のひら半分の大きさのホログラマー。


フレームの色は箱と同じくクリーム色を基調とした色味で、耳の後ろ側に当たる場所にはシュシュっと、メッシュのような模様が刻まれていて今は水色に発光している。


全体的に丸みを帯びていながらも、凹凸を意識した滑らかな曲線で描かれた形状。

近未来的と言うか芸術的な雰囲気の方が強い。


じゃあホログラマーを早速と取り付けよう、と話なのかと思えば青峯さんは先生から除菌シートをもらい、コンタクト型の箱の中に同梱されていた箱を開封した。


それはちゃんと包装されたままのようで、青峯さんはテキパキと、けれど丁寧に包装ビニールを開けていく。


「さて、迷える子羊よ、一旦私の席に座りたまえ」

「え? あ、ああうん。じゃあ…お邪魔します」


なんとも状況を掴めないまま、席の利用者である青峯さんを差し置いて着座する。


青峯さんは除菌シートでしっかり手を拭っている。

指先を入念に、指の間、手のひら、甲を丁寧に。


「私冷え性なの、冷たかったらごめんね」


青峯さんは俺の瞼に指を当てた。


「んっ…」


柔らかく細い指。

少し冷ため。

冷たいのに固くない感覚はかなり不思議だ。


目の骨、その輪郭に触れられてるのがよくわかる。優しく押し上げられる瞼と目の下の部分。

外気にさらされる目玉。


瞼が目を覆い隠そうと力が入る。


「だめ、閉じないで。我慢して」


2人だけの空間。

そう錯覚してしまいそうな空気感。


教室内のざわめきは死んでいない。

別に俺たちのことを気になんてしてやいない。


むしろみんな、個々人の能力や勉強能力について話をしている。


2週間に一度の小テスト。


その次第によっては今後の予定が崩れる可能性が大いにある。故に把握する事を急いでいるんだろう。


だから、そう。

こんなことをしている俺たちを揶揄う奴もいない。


「っ……」


ピタッと眼球に引っ付く感触。

水や砂が目に入るのとは全然違う、知らない感覚。


「ホログラマーのコンタクトはソフトレンズだから装着後の異物感は少ないから気持ちが楽だよ。…つける時は目をしっかり出して、黒目の部分に乗せるの」

「うん…」

「それで、はい。…じゃあ昇也くん。ゆっくり瞬きして」


青峯さんの指先が俺から離れる。

どこか、名残惜しい。


俺は言われるがまま指示に従い目を瞬かせる。


「はい……。うんー……。うん、多分おっけ。じゃあもう片方いくね」

「お願いします」

「任セロリィ………。んっ。目を閉じてぇー……開けてぇ……オッケイッ。後は耳にホログラマーつけるだけ!」


コンタクトレンズが両目にひっついていて離れない。


てっきり視界が白く濁ったりするものなのかなと思っていたのだが、実情は水のように綺麗に透き通った景色を俺に見せてくれている。


普段と見える景色と変わらない。


なんだったらつけてると言うことすら気づけなくなるほど。コンタクトレンズをつけてる感覚も、青峯さんが言うように異物が入ってる感覚みたいなものが希薄で、むしろ時間を追うほどに馴染んでいく。


さて。

あとは本丸、ホログラマー。


「どう付けるの…耳に乗せるだけじゃ落ちそう…」

「はい、その通り。…なので、耳ベルトがガチって言うまで閉めるんです」


そう言いながら手取り足取りと手伝ってくれる青峯さん。


コンタクトの時も思ったけど近い。

いや、致し方ないと言うかそりゃそうなるよなという距離感なんだけど、なんだろう恥ずかしい。


それに、なんだろう。


いい匂いがする。


美味しそうなお肉の匂いというより、木や花とかそう言う綺麗な匂いの類。すっごい、落ち着く匂いなんだけど、すっごい心臓の鼓動が早い。


なんなんだろうこれ。

全力疾走した時くらいに心臓が唸ってる。


「…はい、かんりょっ。で最後、デバイス触ってみて」


だからかな。


「……こ、こう…?」


口にする言葉が変に裏返ってしまった。


その声がおかしかったのか、青峯さんは少し笑った。


笑いながら。


「そうそう、なでるように。そしたらどっかに明らかな凹凸があるから、そこ、強く押し込んで」


装着の手伝いを進めた。


「……あ、これかな」


指示に従って見つかった明確な凹凸。


押し込む場所は間違いないなと、沈み込みから判断して押し込むと、カチッと言う音と共に。


『ホログラマー2型が起動しました』


そんな音声が頭の中に響き渡った。

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