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妖魔冥命  作者: caffeine
3/3

決断

「……ッ!」

 目が覚めると、どこかのベッドの上だった。

「だいじょーぶー?家が襲撃されたんだってね」

 紫音がすぐ側に座っている。

 昨夜の出来事を思い出す。

「そうだ母さんは!?」

「命は無事。ただ、瓦礫のあたりどころが悪かったのかもね。まだ、意識は回復してないよ」

 とりあえず命は無事だということだ。それだけでひとまず安心だ。

「で?命君、決めたかな?私たちの想定が甘かった。思ったよりもはやく巻き込まれちゃった。ごめんね」

「たしかにめちゃくちゃな目に遭ったけど、まだ普通に生きたいと思ってるよ」

「……そう?まぁ、とめはしないよ」

「でも、俺だけじゃなくて、俺の周りの人には純人ばっかなんだ。その人たちにまで被害が出たら耐えられない」

「それで?」

「俺じゃなくて、他の人のために妖術師になるって言ったら駄目?」

「さぁ?決めるのは私じゃないしー?でも、私の従兄弟が言ってたけどね、自分のために戦う人は確かに強いが、他人のために戦う人は最悪の状況でも諦めないんだって」

「なんかうまく言いくるめられてるだけな気がする」

「気のせい気のせい」


 と、ドアが開く音がして、瓢が入ってきた。

「目覚めたって聞いて。具合はどう?」

「痛いだけで問題ないです」

「そう……謝るわ。ごめんなさい。こちらの判断ミスよ。あなたとお母様を大変な目に遭わせてしまった」

「大丈夫ですよ。死んでないですし」

(そう、死んでない。ただ問題は、これからも死なないでいられるかどうか)

「あの瓢さん」

「はい?」

「強くなりたいです。せめて、自分と自分の周りの人だけでも守れるくらい」

「それは……妖術師になるってことかしら?」

「そうなるんですかね。別にならなくても鍛えてくれるならなりたくないですけど」

「残念。妖術師でもない人に情報は与えられないわ。じゃあ、決まりね」

 そうして妖術師になった。


二週間後―

「退院おめでとう命君!」

 病院を出ると、紫音が出迎えてくれた。

「ありがとう。それで、なぜここに?」

「なぜって……そりゃ、君もう妖術師なんだよ?言っとくと強制的に転校だよ。ついでに引っ越し」

「へ?」

「知らなかったの?」

「エェー!?」


 そうして必要最低限の荷物を持って車で二時間揺られ、かの有名な東都妖術学園に到着した。東都妖術学園とは、西都にある天覧妖術学園と並ぶこの国の二大妖術学園だ。

「じゃ命君は今日からここの生徒だよ」

「どこに住むの?」

「命君が妖術師になるなら二択なんだよねー。この学園の寮か、本部にある妖術師がもらえる部屋か」

「紫音はどっち?」

「私は本部だけどー、オススメは寮だよ。ちょっと本部からは遠いしね。寮なら八時まで寝ても間に合うよ」

「ふーん、じゃあ寮で」

「はいよー。まぁ森羅と犬神は寮だから困ったら二人に訊いてー」

「りょーかい」


 そして紫音は手続きのようなものを済ませて、すぐに寮の部屋に案内してくれた。

「ここだね。あ、よかったじゃん、犬神隣だ」

「じゃあ挨拶しとこうかな。なんだかんだ一回も喋ってないし」

「あぁ今はいないよ。みんな学校行ってる。命君?今日は平日ですよ」

「あそっか。あれ、紫音は?」

「私はいーの。命の案内役だから。それに私成績いいからね。勉強はできない教科もあるけど」

「勉強以外に成績があるの?」

「そうだね……今日は学園について教えてあげる。ついてきてー」


 そしていよいよ、寮からすぐの校舎に入った。

「この学校は東都妖術学園。実質、妖術師育成機関。でも生徒は妖人だけじゃないよ。勉強の質もなんか高いらしいし、将来有望な妖術師がたくさんいるここはある意味どこよりも安全で、純人のお嬢様とかお坊ちゃまとかもきたりするよ」

「へぇー、確かに頭いいイメージはあるけど、勝手に妖人だけだと思ってた」

「やっぱそうだよね!?私も知らなくてさー。名前が悪いよね」

 ドアが開いている教室の横を通る。

「あ、あれ久我紫音じゃない?」

「すげー。なんでこんなとこに?」

 紫音への尊敬の声が多く聞こえる。

 悪口ではないが、そんな大層な人間なのかと思ってしまう。

「紫音ってそんなにすごいの?」

「はぇ?私が?そんなわけないじゃん。そりゃCクラスの子たちからしたらすごいかもしんないけどさ」

「Cクラス?」

「あぁそっか。えとね、まずそもそもこの学園はね、二種類のクラスがあるの。一個は命君もよく知ってる同じ年齢の中で分けるやつ。まぁようは学年だね。普通科目の授業はそのクラスで受ける。でもう一個は、妖術師としての能力で分ける。上からSクラス、A、B、C、Dクラスまで」

「その分け方はなんか、いじめが起こりそうだけど」

「それがね、起こんないの。そんなくだらないことする奴いないってこと。まぁ多少いるけど」

「紫音はSクラス?」

「なにゆってんですか。Sクラスは学生でもう中級以上の人だけ」

「中級?」

「妖術師の階級。上から最上級、上級、中級、下級、劣級の順に。でね、さっき言ったとおり、Sは中級以上。Aが下級。Bが劣級。Cはまだ妖術師になってない人たち。Dは純人か妖術師になるつもりの無い人たち。まぁだからDクラスといってもちょっと別なんだよね」

「へぇー、それで紫音は?」

「私は高等部一年一組、Aクラスの久我紫音!」

「なんか……楽しそうだね」

「いやーゆってみたかったんだよねー」

「そりゃなにより」


「あれ紫音、サボりじゃないの?」

 また教室の近くを通る。

 そのときに知らない声がする。

「ありゃAまで来ちゃった。バレちゃう。命君!走るぞ!」

「え?なんで逃げるの?」

「私だけ合法的にサボってるんだからバレたら絶対グチグチ言われる」

「仲悪いの?」

「そーゆー意味じゃないよ。ただ、Aの一組はサボりたい奴が多くてサボったらイジられるんだよ」

「なんか……大変なんだね」


 そうしてまた寮に戻り、明日から初登校ということになるらしい。

(えーと俺の部屋は)

「よっ、ここやろ。お前の部屋」

「え?あぁそうだ、ありがとうございます」

「やめてや。タメなんやからタメ口でええで」

「え、あ、うん。えと、犬神さんだよね?」

「そ、犬神でええよ。おれも命って呼ぶし」

「わかった犬神、おやすみ」

「おう、おやすみ」

 そうして各々の部屋に入り、疲れていたのかすぐ目が閉じた。

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