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妖人街  作者: Caffeine
2/2

妖とは

最後まで楽しんでお読み頂けると嬉しい限りです。

 目を覚ましたとき、俺はベッドの上にいた。


(頭いった……ここどこだ?)

 これまでで一番痛い怪我だ。頭から血が出ているのだから当たり前だが。


「あっおはよー。よく寝たねー。丸一日ぐらいかな?」

 あの天使が現れた。意識がちゃんとある状態で改めて見ると、本当に可愛かった。

「助けてくれてありがとうございます。僕は水祀(みずし)(みこと)っていいます」

「はいはい命ね。私は久我(こが)紫音(しおん)だよー。まぁほどほどに感謝してね」

 このちょっと抜けている感じは好ましくないが、可愛いのと命の恩人であるということは変わらないためちゃんと感謝しておこう。

「はい。ありがとうございました」

「あーそれと、敬語じゃなくていいよ。ちなみに何歳?」

「十六です」

「やっぱ同い年だ。これからよろしくね」

「はい。あっっ。うん、よろしく」

「あはは、まぁ少しずつ慣れてってよ」


 自己紹介はこれぐらいでいいだろう。そろそろ俺はどこに来たのか教えてほしい。

「それで? ここはどこ? あの化け物は何?」

「そうだなー。説明するのメンドイからそれもボスに訊いて」

「それも? ボス?」

「あれー? さっき言わなかったっけ? 私たちのボスに会ってもらうって」

 俺の記憶がおかしくなければ初情報だ。言ってないことを言ったと思うのはなかなかマズい。

「初耳」

「ごめーん。まぁ別に嫌な人じゃないから安心していいと思うよ」

「いつ? どこで?」

「これから」

 この子は確かに可愛いが、性格が合わないことがわかった。

 俺に選択権は無く、場所も時間も勝手に決められているらしい。

「え? ナウ?」

「ナウ。てことで行こっか」

「えぇ……」

 頭が意味わからんくらい痛いが、拒否権も無さそうだ。

 まだフラフラするが、なんとか紫音についていった。


「はーい。到着」

 どうやらよくわからないうちに到着したらしい。

 自動ドアが開いて部屋に入ると、アニメや漫画で見るようなオペレーター室があった。

「なんか……アニメみたい」

「あー確かに。慣れてないとかっこいいって思っちゃうよね」

 慣れが関係あるのか疑問だったがそんなこと今はどうでもいい。


「あっ。ボスー。連れてきたよー、水祀命君ね」

 紫音にボスと呼ばれた人を見ると、黒髪ロングの超絶美人だった。

「初めまして。私は妙滑(みょうかつ)(ひさご)。細かい話は後でするけど一応紫音たちの上司よ」

「初めまして。ご紹介がありましたが水祀命です。えっと……その……何の御用でしょうか」

 日本美人特有のプレッシャーを感じる。年上なこともあり、つい固い感じで返してしまった。

「そんなに固くなくていいわよ。ねぇ紫音?」

「うーん。まぁ慣れたら私たちみたいに話せるかもしんないけどね。なんたってボスは威圧感すごいからねー」

「えっっ。怖い顔してたかしら?」

 怖いというよりも不気味だ。触れてはいけないような、近付いてはいけないような、そんな雰囲気だ。

「怖いってゆうかー。ジャパニーズ美人特有の不気味なオーラってゆうかー。まぁ初対面だと近付きづらいよね」

 紫音の言う通りだ。俺が感じたことをそのまま言ってくれた。

「そう……なるべく笑うようにするわね」

「い……いえ! 僕はその雰囲気もいいと思いますよ。それよりも何か御用件があるのでは?」

 このままでは話が全然進まないと思ったため、強制的に話を切って本題に戻らせた。

「そうね。紫音、客室に連れてってあげて。あとお茶を淹れといて。今やってる仕事のキリのいいところで私も行くから」

「人使い荒くない? 命は重傷なんだからなるべく待たせないでよ」

「わかってるわ」


 そうして客室というところに着いた。紫音がお茶を淹れ始める。

「別に嫌な人じゃなかったでしょ? まぁまだどんな人か掴めてないと思うけど」

「うん、いい人だった。俺も手伝うよ」

「いやいや、その怪我なんだから座ってて。なんなら寝ててもいいよ」

 あれだけ歩かせた癖にお茶を淹れることはやらせない。矛盾している。

「お茶は淹れさせてくれないのになんであんな歩かせたの?」

「ゴメンてー。ボスの命令だったんだよ」

「ふーん」

 まぁ紫音がそう言うならと、お言葉に甘えて座らせてもらった。


 お茶と和菓子を三人分並び終えたところでドアが開く音がした。

「はいはい失礼。倒れてないかしら?」

「ちょっとやめて。フラグ建てたらホントに倒れちゃうから」

「酷くない?」

 なんて酷い言い方なんだろうか。まるで倒れることを待ち望んでいるみたいだ。


「ふふふ。じゃあとりあえず、化け物の話からね」

「はい。お願いします」

「まず大前提として、妖怪とか妖っていると思う?」

 子供だと思われているのだろうか。

 高校生でも信じている人はいるかもしれないが、俺は科学的に証明されていないものは信じない

「いないでしょう。あくまで戒めですよ」

 妖怪という存在は子供たちへの戒めだ。教訓ということでもあるが。

「そっちのタイプね。まぁある意味正解。ただ妖怪っていうのは本当にいるわよ」

「はい?」

 大人が真面目な顔をして変なことを言っているとただの頭おかしい人にしか見えない。

「あー待ちなさい。頭おかしい奴だと思わないで。というか実際、君も化け物に殺されかけてるでしょう」

 たしかに化け物に殺されかけて一日寝たきりだったが、いくらなんでも妖怪はおかしいだろう。

「それはそうですけど……だからって信じられませんよ」

「まぁそれはそうなるわよね。うーんと、何から説明しましょうか」


「とりあえず妖人のことからでしょ」

「そうね。えーとまぁ簡単な話、妖怪と人間のハーフ、または妖怪の血を引いてる人を妖人と呼んでるの」

 妖怪と人間のハーフという意味不明なワードがでてきた。何を言っているのだろうか。


「えーと、妖怪と人間って子を作れるものなんですか?」

「それはね、妖怪には人間に化ける能力があるの。それで人間と子を作って死ぬと」

 人間に化ける。とんでもない能力だが、もうそんなに驚かなくなってきた。


「人間に化けたら姿が見えるようになるんですか?」

「というより妖怪側が見せようとしてるから見えるのよ」

 妖怪は自信の意思で人間に姿を見せることができるらしい。


「なんで人と子を作るんですか?」

「人を好きになったからじゃないかしら。確かなことはわからないわ」


「えっ……と、じゃあ妖怪って寿命はあるんですか?」

「ある。種族って言い方でいいのかしら? 要は妖怪の種類でかなり違うけど。それこそ数百年とか生きてる妖怪もいるだろうし。ただ、妖人の寿命は人間の寿命よ」


「ちょっ……と待ってください」

 妖怪は存在し、人間と子を作った。

 そんな奇怪な話だけでも十分混乱するのに、他にも多くの情報が入ってきて頭がもっと痛くなる。

 ただ、頭痛のおかげで逆に受け入れることができた。


「とりあえず妖人のことはもういいです。結局この街はなんなんですか?」

「それは紫音からの方がいいわね」

「えーしょうがないなー。ちゃんと聞いてね。この街は妖人街って呼ばれてて、日本中の妖人が集まるところだよ。もちろん全員ってわけじゃないけどね」


「……つまり?」

「命みたいな何も知らない一般人が来ていいとこじゃないってことだねー」

 それは自分でもよくわかっているし、本当に申し訳ないと思っている。

「それはホントにすみませんでした。すぐ帰りますので」

「いや帰れないわよ。あと君がここに来れたのは結界が仕事しなかっただけだから謝らなくていいわ」

「いやちゃんと仕事してたって! 命が特別なだけ!」

 結界の仕事云々や俺が特別という話よりも最初の言葉が引っ掛かった。

「ちょっ……ちょっと、今帰れないって言いました?」

「えぇ。帰れるわけないでしょう。あなたは国家機密レベルの情報を持っているただの高校生。あなたにはある程度知識と力をつけてからこの街を出てもらうわ」

 いくら国家機密レベルの情報を持っていようが俺にはどうでもいい。

 しかもある程度とはどのくらいだろうか。

「どのくらいかかるんですか?」

「才能次第ね。まぁ多分君は持ってる側の人間だから半年弱くらいじゃないかしら」

 持っている人でも半年弱かかることをやらされるのだろうか。

 というか、その間学校はどうするのだろうか。

「冗談じゃない! 僕は帰らせてもらいます」

 そう言ってドアへ向かって歩き始める。すると、後ろから止められた。


「待ちなさい。その半年はあなたのためなのよ。それとも学校あんまり休みたくないとか?」

 休めるものなら休みたいが、高校ではそんなわけにはいかない。

「休めるわけないでしょう! 中学じゃないんだ。半年休んだら留年することになる」

「言ったでしょう。国家機密レベルって。そのぐらいなんとかなるわ。というかあなたがその高校に特別な思い入れがあるわけじゃないのなら妖人街にある高校に行きなさい」

 こんなところに高校があるとは到底思えない。

「はい? 本当にあるんですか?」

「あるわよ。しかもその高校は推薦で国公立レベルの大学に行けるわ。実際に行く人は少ないけど」

 どんな手を使ったら推薦で国公立の大学に行けるのだろうか。犯罪ではないことを祈る。

「え? え!? 何故!? どういう仕組みで?」

「さぁ? 国が何かしてるんでしょう。ちなみに偏差値はだいたい六十五よ」

 偏差値がそこまで高ければ校名くらいは聞いたことはあるだろう。これ以上に胡散臭い話はあるのだろうか。

「そんな胡散臭い。証拠を見せてください」

「何の?」

「そりゃもちろん大学に行ける証拠ですよ」

 もちろん証拠がなければ信用できない。大学の生徒カードでも持ってきてほしい。

「じゃあ紫音、ちょっと電話してみて」

「誰に? あーはいはい、わかったわかった。ちょっと待ってね」

 詳しく誰か言われなくともわかる人なのだろう。かなり身近な人なのだろうか。


「誰ですか?」

「紫音のお兄さんよ。頭が良い人だから推薦なんかいらなかったけれど」

《はいもしもし。紫音? 何か用か?》

「あーお兄ちゃん。南野(みなみの)高校って国公立の推薦でるの?」

《え? まぁでるけど……なんだ? 紫音が大学のこと訊くなんて》

「でるよねーありがと。じゃあバイバイ」

《ちょっっっ》

自分から電話しておいてなんとも残酷な切り方をすることに純粋に感心してしまった。

「よかったの? そんな切り方して」

「いいのいいの、面倒だから」

「まぁでも今ので納得してもらえたかしら」

 信用してもよさそうだが、あくまで一人だし完全には信用できない。

「……まぁ信用してもよさそうな人でしたけど。でもやっぱりちょっと怖いです」

「「何が?」」

 二人して面倒くさいという顔をしている。こっちの立場になってみてほしい。


「いやそりゃまぁ色々と。そもそも住むとこ変わるってことですよね」

「そうなるわね。一人暮らしでも私の家でもいいけれど」

 選択肢はそれしかないのか疑問だったが、気にしている余裕はない。

「その高校には通わなきゃいけないんですよね?」

「強制じゃないわ。ただあなたが学業に真剣ならそうすることをお勧めするわ」


 ここまできたら自分一人で決めていいことではない。

「……母と相談させてください」

「お母さんだけ? お父さんとは相談しないのかしら?」

「十年前くらいに離婚してます。実質僕の親はお母さんだけです」

「ごめんなさい。訊くべきじゃなかったわね」

 俺の両親は俺が五歳くらいの頃に離婚した。理由は知らない。

 俺は俺と母さんを捨てた父さんが嫌いだし、許すつもりもない。

「いえかまいませんよ。僕は親父のこと大嫌いなので。なんならクソ親父に悪口言っても全然いいですよ」

「そんなこと言わないわよ。あぁそれと、相談するのはもちろんかまわない。ただなるべく早くしてくれると助かるわ。まぁ決まるまでは私の家に泊まりなさい」

「いや、私の家に泊まりなよ。ね? いいでしょ?」

「別にいいけど珍しいわね。紫音が赤の他人を家に呼ぶなんて」

「もう赤の他人じゃないよー。ねー? 命」

 赤の他人ではないのかもしれないが、それでも会ったばかりの男子と女子だ。泊まるわけにはいかない。

「いや流石に女の子の家に泊まるのはちょっと」

「えー大丈夫だよ。一人暮らしだし」

「余計ダメ!」

 何故女性の一人暮らしで会ったばかりの男を家に入れるのか理解できなかった。

 もう少し警戒心を持っていただきたい。

「真面目ね。大丈夫よ。紫音ならあなたに何かされそうになっても殴って気絶させるから」

 とてもこんな美少女がしそうなこととは思えないが、紫音ならやりそうと思ってしまう。

「怖っ。やっぱ行きたくないです」

「いや殴んないって! てかなんなら受け入れるからうちに泊まってよ」

「この子は何を言ってるんです?」

 受け入れるという意味深発言に何を言っているのか意味がわからなかった。


「どうやら好かれちゃったみたいね。おめでとう」

「え? いやあの……え?」

 好かれる理由がないと思うが、たしかに最初と今で態度が違う気がする。

「ねーみことー。一緒に住もうよー」

「えぇ……? ホントにいいの?」

 もし好かれているのなら余計泊まりたくないが、困っているのは確かなため少し心が寄りつつある。

「いいよー。ラブラブな日々を過ごそうねー」

「あのすみません、やっぱ怖いです。帰らせてください」

 前言撤回だ。言っていることが怖い。

 さてはこの子は頭がおかしいのだろうか。

「あーゴメンゴメン! 忘れて! でも真面目に私と住むのが楽だと思うよ。決まるまでだけじゃなくてね」

「え? なんで?」

「結構良い部屋だから。それに本部の敷地内だし高校も近いよ」

「……」

 普通に良い条件でまた心が揺らぐ。

 身の安全をとるか、半年ここに住むことになったときの便利さをとるか。それが選択肢だった。


 どうしようかとずっと迷い、妙滑さんを見る。

「ん? あーそうねぇ。紫音がいいって言ってるんだしいいんじゃないかしら? 立地的にもかなりいいわよ」

「じゃあ……そうします」

 妙滑さんはもうある程度は信用している。ここは信じて紫音の家に泊まることにした。

「やったー! 私結構独占欲強いからね。覚悟しといて」

 独占欲が出てくる理由も覚悟する理由もわからない。

「なんで独占欲の対象が俺なの?」

「え? だって私の彼氏でしょ?」

「え?」

「え? 違う?」

 何故当たり前のように間違ったことを言えるのかわからなかった。

 この子はやっぱり頭がおかしいのだろうか。

「なんで付き合ってることになってるの?」

「いいじゃん。自分で言うのはあれだけど結構私可愛いよ」

 それには全力で同意するし、なんなら結構どころじゃないだろう。

 ただ、そういう問題じゃないはずだ。


「それはまぁ……そう思うけど……お互いあんまりよく知らないでしょ」

「いや? 今日でよーくわかったよ。命は私のタイプ」

 何を基準にしてタイプを見極めているのだろうか。顔じゃないといいが。

「たしかに朱雀(すざく)に性格似てるわね。顔はある意味正反対かしら」

「そうなの! ドライで冷静で頭良い感じがすごい似てるの! 顔は命の方が可愛くて好みだなー」

 どうやら朱雀という人に似ているらしい。


「顔に関しては朱雀も命もカンストしてるから完全に好みの問題やな。俺は朱雀の顔の方がかっこいいと思うで」

 また違う人が会話に参加してきた。しかし見たことがある人だった。

 俺が化け物に殺されかけたときに助けてくれた人だ。挨拶と感謝をしておこう。

「こんにちは。助けてくれてありがとうございました」

「おー。次からは気ぃ付けぇやー」

「随分帰ってくるのが早かったわね。先に報告室に入ってて」

「はいな」

「あいつ、普通本人がいる前で言う? ホント性格悪い」

 別に俺はなにも傷付いてないから問題はないだろう。人によって好みはあるんだろうし。

「別に悪気はないでしょう。ちゃんと俺はって言ってたじゃない」

 俺もそう思う。

「でも本人の前で言う?」

「紫音は朱雀の前で言わないのかしら?」

「言う……かも」

(言うんかい)

「じゃあ犬神を責められないわね」


 説得中申し訳ないが、さっきから所々出てくる気になることを教えてほしい。

「あのー……すみません。朱雀って誰ですか?」

「あっそっか。朱雀知らないのか。私の従兄弟だよ」

「さらに紫音の初恋の相手ね」

「ちょちょっ、別に言わなくていいでしょ。もう好きじゃないんだから」

 今ので紫音の従兄弟で初恋の人ということはわかった。逆に言えばそれしかわからない。

「えーと? 紫音の従兄弟で初恋の人ってことしか情報は無いの?」

「んーとね、フルネームは久我(こが)朱雀(すざく)っていって、今は東京で高校生してるよ。あと東京での名前は違うんだ。まぁ要は偽名だね。今はそれが本名だけど」

「ん? どゆこと?」

 今の言い方だとこんがらがってわけがわからくなった。

「昔は久我朱雀だったんだけどもう久我家じゃないから月城(つきしろ)(ゆう)って名前に改名したって感じかな」

「な……なるほど?」

 まだよくわかっていないが、久我朱雀と月城夕という二つの名前があることはわかった。

「まぁ名前だけとりあえず覚えといて。多分いつか会えるから」

「わかった」


「あーあとねー、まだあった朱雀の情報。最強。天才。怪物。化け物。悪魔」

「え?」

 一瞬混乱したが、多分一番重要な情報だろう。何故一番にこれが出てこなかったのだろうか。

「混乱しないで。これも後で説明するけど、妖術師っていう人たちがいて、その人たちの中で一番強いのが朱雀なのよ。つまりは妖人最強ってことよ」

 よくわからないが、要はとてつもなくスゴい人ということだろう。

「は……はぁ。紫音はさっきそんなスゴい人と俺を比べてたの?」

「うん? そうだよ? なにか問題でも?」

「いや……別に」

 紫音の性格はこっちのリズムを崩しにくる独特な感じだ。


「ふふっ。じゃあ犬神待たせると可哀想だから報告聞いてくるわね。どうするか決めたら教えてちょうだい。それとお大事に」

「はい。ありがとうございました」

「お疲れボスー」

「はいお疲れ様。また今度」


「じゃあ命かーえろ。もう六時だよ。夜ご飯なにがいい?」

 夜ご飯もなにも俺は入院してる身だ。病院に帰らなくてはいけないだろう。

「病院帰んなくていいの?」

「あっっ。……まぁ後で言っとくよー。もうそこそこ元気でしょー?」

 言っておいたらいいのだろうか。絶対にそんなことはないと思うのだが。

 そして本当に元気だと思っているのだろうか。マジで頭が痛いのだが煽っているのだろうか。

「いや全然。今すぐにでも倒れそう」

「え? じゃあ早く帰ろ。で寝て。ご飯食べても食べなくてもいいから」

「はいはい」


 紫音の家に到着した。やっと横になれるだろうか。

「ただいまー。命の部屋すぐ用意するから待ってて」

 それを待ってる元気は無い。今すぐベッドにダイブしたい。

「いやもう無理。紫音のベッド連れてってほしい」

「んー? そんなこと言って私のベッドで寝たいだけでしょ?」

「もうそれでいいから早くしてくれ」

 面倒くさいとは思ったが、反論する元気も無いため諦める。


「はいはい、こっちだよ」

 フラフラするが、なんとか紫音についていく。

「はいここ、この部屋が私の部屋」

 十畳以上は確実にある広い部屋だった。

「すっげー広い。あっベッド」

 そしてベッドがあった。紫音は無視してすぐに向かう。

「でしょー。命の部屋(仮)もこんぐらいだよ。だから家具とか買いに行こうって、え? 命? もう寝たの? まったく。しょうがないなー、おやすみ命」

(おやすみ紫音)

 心の中で紫音におやすみと言って、死んだように眠った。

最後までお読み頂きありがとうございます。

投稿頻度は決して高くないためご了承ください。

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