EP18:日暮と狭霧と双子の真相
《1》
ここは籠目市の住宅街エリアの中。変わり映えのない同じような見た目の住宅が立ち並ぶ背景の中では、今も誰かが生活の営みに勤しんでいるのだろう。しかしそれを外から知ることはできない。互いに互いの干渉を許さない、隔絶された生活環境が並んだ空間、それが現代の住宅街である。
そういう特性を持っているために、一般人たちはその壁の向こう側、すぐそこで如何なる非日常が起きていようと、それを知覚する手段を持たない。その「非日常」たる存在——二人の少年は、碁盤の目状に広がる道路の真ん中で立ち止まった。
「ここなら心置きなく話せるだろう、日暮飛路」
私服にしては固い印象のシャツと裾が細いズボンを着た、真面目っぽくて頭の硬そうな少年。彼は自分の隣で息を荒げる、年も背丈もそう変わらない、一人の少年の名を呼んだ。
「はぁ……はぁ……いや……いきなりここまで連れてきて何のつもりだよ……てかそもそも、あんた誰だよ……!?」
名前を呼ばれた少年、ヒロは少年へ問うた。その口調には怒気が滲み出ていた。
「ああ、自己紹介がまだだったか。これは失礼したな」
少年は腕を組み、その凍てつくような視線をヒロの眼窩のど真ん中に向けて、ドスのきいた声で己の名を名乗った。
「俺は狭霧真……オウル様の忠実な『止まり木』、つまりは依代にして、《焚書図書館リコール》の一員だ」
マコトは一ミリも笑わずに、その右手をヒロへ差し出した。それが握手を求める姿勢だと理解するのに、ヒロは少し時間を要した。
(——こいつが、俺と同じ《サイダーズ》の器?)
ヒロは己の目で見たオウルの姿を——ローブによって誤魔化されたシルエットと不気味な仮面を身につけた、人を嘲るような甲高い声で話す奇怪な男の姿を。
(——あの梟と、同じ人間なのか?)
眼前の少年は、それとは何もかも正反対と感じられた。
《2》
——「日暮飛路」は、「欠月大夢」である。
そのことをヒロ自身が理解することはない。そうオウルが確信するのに、そう時間はかからなかった。
人間が最も不得意とすることの一つが、自らに降りかかった災難を、そのままの形で受け止めることである。人間とはそういうものだという自論を、オウルは掲げている。「欠月大夢」だった「日暮飛路」もまた、そういう特性を人間が持つ故に生まれてしまったのだと、オウルはフェニックスの言葉から想像することができた。
「——現実を退け、夢想を眺める。その夢想に飛び込めば、その人間は、まるで自分が強大な神になったかのような、稚気に塗れた錯覚を覚える……日暮飛路という人間は、まさに《ツインズ》能力者に相応しい価値観を持っているようですね」
梟は仮面の表面を指で弾きながら、そう語って聞かせた。
この「双生のインプロア」という物語が始まってすぐの時、《ツインズ》とは、二つの人格、そして強大な魂の力によって生まれるものだとした。
しかし、あの言葉だけで《ツインズ》を説明することはできないだろう。その要素らの意味を、正しく理解しなければ。
「《ツインズ》を成り立たせるために必要なこと。あなたなら、全て答えられてもおかしくはないはずです」
梟の問いかけに、不死鳥は頷く。
「……自分が生命体であることを自覚すること。自分が固有の世界観を持っていることを認めるとともに、それによって超えることのできない『普遍的な現実』の存在を切り離して考えること。最後に、その『普遍的な現実』の絶対性を拒絶して、己の固有の世界観、つまり『自分一人の現実』を『普遍的な現実』よりも上位の存在として再定義すること。……確か、これで合っていたはずだよね?」
「……素晴らしいですね、ホホホッ」
梟は笑った。
不死鳥の言葉を言い換えるならば、《ツインズ》の成立に必要なのは、自分が生き物で、「現実」に縛られていることを自覚すること。そしてその事実を信じないことだ。さらに踏み込んで言うならば、《ツインズ》が目覚めることとは、「自分は超常的な力を持つ、常人とは一線を画した存在である」と本気で信じること。その揺るぎない「空虚な妄想」によって、《ツインズ》は現れる。現実を簡単に上塗りし、起こりうるはずのないイメージを現実に呼び起こすのだ。
己を嫌い本性を覆い隠す者や、高い理想を持つ者は、《異形系》の《ツインズ》を生み出し易い。本当の己を覆い隠すようにして、あるいは殻を破るようにして、彼らの肉体は人外の様相に早変わりする。
置かれた環境に不満を持ち、その不遇な立ち位置からの脱却を望むものは、《変質系》の《ツインズ》に目覚めることが多い。文字通りに「環境を変える」形で、彼らは己を不幸に追い込む世界に反逆する。
自分から見える世界と他人の見る世界のギャップを感じる者は、《認識系》の力を身につけるだろう。自分の想像する世界、理想の世界の像を押し付けることによって、彼らは他者に幻覚を見せる。
ありもしない幻想に憧れる、あるいは奇跡の力でしか突破できない逆境を感じている者には、《事象系》の力が似合っている。超自然を操るまさに「異能力」と呼ぶに相応しい力は、全てを思うがまま支配する鍵になる。
読み難い他人の心へ関心を寄せ、しかしながらそれの操り難さを知る者には、《精神系》の《ツインズ》が寄り添ってくれるだろう。その力は精神を読むまでもなく、感情の渦によって他人を自らの支配に貶める。
過去の後悔を覆したい、あるいは今ある世界の事実に納得できない者には、《改変系》の《ツインズ》が手を貸すかもしれない。過去に遡り今を書き換える力は、誰も抗えない絶対の効力によって世界を歪めるだろう。
孤独を恐れ、他人の言葉を求める者には、《召喚系》の力の手助けが要るだろう。自分の求める形、あるいは自分そのものに似た形の無数の仲間が常に寄り添い、必要な助けを与えてくれる。
未来の訪れに恐怖し、絶対的な安心が欲しい人間は、《因果系》の力に目覚めるかもしれない。あらゆる出来事を束ねて一つの未来を導くその力によって、不幸な結末は絶対に避けられるだろうから。
——たとえそれを願ったのが一瞬だったとしても、そういう「空虚な妄想」を現実に起こりうることだと狂信してしまったならば、人は《ツインズ》に目覚める可能性を持つ。
「過去の自分」、「理想の自分」、あるいは「空想の友達」や「今まで見てきた人の幻影」……現実と空想のギャップは「人格」という形で現れ、宿主に深く《ツインズ》の存在を信じ込ませる。
彼らは宿主の「生命力」という、存在すら不確かなスピリチュアルなエネルギー……あるいは、《ツインズ》の存在によって裏打ちされた人間の「神秘」、願いを実現する能力を象徴する力を糧として、あらゆる人々の相違によって成り立った「平均的な現実」を打ち壊すのだ。
「《ツインズ》能力者にとって、『奇跡』とはこの世で最もありふれた概念であり、『現実』とはこの世で最も脆いものです。彼らはすでに完成し、価値のある絵を、我儘な理由で塗り潰し書き換える。それも日常的に。しかし限られた技能ではその一部分を書き換えることしかできず、結果的に絵全体のバランスは壊れてしまう……こうして言葉にしてみると、愚かだとしか思えませんね……ホホホッ」
オウルはそう言ったあとに「欠月大夢も、そういう世界の見え方を持っていたのでしょう」と続けた。
「自分が人を殺したという、耐え難い現実を拒絶した。そして自らの命を絶とうとしたことで、自らの命の灯火が、ゆらゆらと燃えていることを実感した。たまたまアナタの介入があったから発現には至らなかったとはいえ……それがなかったら、欠月大夢はまた別の力を手にしていたことでしょうね」
「ああ、そうだね……普通、俺たち《サイダーズ》が器に選ぶのは、そういう素質を持ってない人間だ。立ち塞がる現実を自分のものと受け入れ、その中で窮屈な思いをしながらも、一生懸命に生きているような人間……その美しさを破壊して、《サイダーズ》は顕現する」
フェニックスは言う。そして、ヒロはそれとは真逆だとも言って、自分の胸に手を置きながら、その言葉を語った。
「……ヒロは、自分が本来抱えるべき苦しみから逃げるために、己の身を焼き滅ぼした。でもそれが失敗したと知るなり、俺という悪魔との契約にあっさり首を縦に振って、恐怖の対象となった。そうしているうちに本来の自分の姿を見失って……でも、これがヒロの、いや、欠月大夢の思惑通りなんだとしたら、恐ろしいね」
「……しかし、フェニックス。アナタがカレを依代に選んだことで、他の将来有望な人間の命が喰い潰されることは無くなったんですから、良かったということにしようじゃありませんか」
オウルもまた、フェニックスと同じように、自分の借り物の胸に手を置いた。そして、自分の依代の顔を思い浮かべた。
「……ワタシの依代の狭霧真は、誰よりも頑固で真面目で、そして誰よりも可哀想な人間ですからねぇ」
《3》
狭霧真という人間は、公には存在しない人物となっている。
彼がオウルの依代として選ばれたのは、実に四年ほど前の出来事である。ちょうど「狭霧」という姓を持つ女性が、《ツインズ》を用いた犯罪に手を染めたことがきっかけだった。
彼女は普通の専業主婦で、とある政治家の男の妻だった。彼女は当時中学生だった息子の面倒を見ながらも、政治家である夫を全力で支えていたのだ。
しかしある日、とある週刊誌にて、夫の汚職が報じられる。当然彼は責任を取られ辞職を余儀なくされたのだが、これを認められなかったのが彼の妻……マコトの母親であった。
絶対に自分の夫は真っ当な政治家である、そう信じ続けた彼女はとうとう発狂し、自らの《ツインズ》を発現させた。その力は敬愛する夫のため、彼の汚職を知る人間を、一人残らず殺すことに使われようとしていた。
しかし彼女の望みは叶わなかった。《焚書図書館》の『館長』を名乗る老人によって、彼女の存在はこの世界から消されてしまったからだ。その老人こそ《クロノサイド・オウル》だった。
その《ツインズ》の強大さを恐れたオウルは、衝動的に自らの力を使ってしまった。彼女が幼い頃に死んだという現実で上書きすることによって、全てを無かったことにしたのだ。
だが遠い昔の事実を改変したことによって発生する負荷は尋常ではなく、使い古した老人の依代では絶えられなかった。その依代は能力を使った直後、その場で命を落としたのだ。
そうして体を失ったオウルは、次の依代を求めてしばらく彷徨っていた。そこで彼は、驚くべき光景を目にしたのだ。
「親父、どうして俺のことが分からないんだ!?」
「私には息子はおろか妻もいないと言っているだろう! 一体何なんだ君は!?」
「俺は狭霧真、お前の息子だと言っているだろう!? お前は息子の顔も名前も、存在すらも忘れたとでも言う気か!?」
なんと、母親の存在が無かったことになったために消滅したと思われていた彼女の息子が、正しい歴史では父親だった政治家へ、なぜ自分のことを忘れたのかと問いただしていたのだ。
狭霧真、彼はごく稀にこの世界に現れるとされる、あらゆる歴史改変、現実改変が効かない人間だったのだ。これに興味を持ったオウルは、自らが母親の敵であることを明かした上で、彼の体を依代とした。彼の激情を引き出し、力とするために。
しかし、彼は激しい抵抗を見せなかった。母親が計らずとも悪になってしまったことを受け入れ、自分はその報いに巻き込まれただけなのだと納得してしまったのだ。
この時にマコトが放った言葉を、オウルは今でも忘れていない。
「この世界に真の意味での悪は存在しないが、ある立場から見ると、必然的に誰かが悪になってしまう。俺は常にその争いを俯瞰して見届け、より納得できる正義に力を貸したい。もし母さんがその悪になってしまったのだとしたら……俺があんたを恨むことはできない」
《4》
「……より納得できる、正義」
「ああ。納得できる正義だ」
ヒロは、マコトの口から語られた彼の過去を聞いた。
「あんたにとって……《焚書図書館》の掲げる正義は納得できる正義だ、ってことか」
マコトはその言葉に、迷うことなく首を縦に振った。
(——納得できない)
ヒロはそう思った。人攫い紛いのことをして、さらにはある人が生きていた事実を、記録や記憶ごと葬り去って、それでも何故、堂々と正義と言い切れるのだろうか。
(——それが正義を名乗ることを許されるなら、俺みたいなクズだって正義になってしまうじゃないか)
そう思った直後、マコトが顔を上げた。
「……おっと、俺たちに過去語りをしているような暇は無いんだった……日暮飛路、協力してほしい。稲葉瑠璃を守るために、しなければいけないことがあるんだよ」
「ルリのために……? いきなり、何しろって言うんだよ」
「簡単に言えば、囮だな」
「……はぁ?」
マコトは言うには、千賀藪蛇の出した声明においては、あくまで一般人であるルリよりも、戦闘能力の高い《焚書図書館》のメンバーや、『不殺人鬼』であるヒロの方が報酬金が高く設定されているらしい。よって、ヒロがあえて目立つ場所で隙を見せることによって、ルリへ向くヘイトを全てヒロに集めるのが狙いらしい。
多くの《焚書図書館》のメンバーが、直接的なルリの護衛や《羊飼い》の足取りを掴むことに力を注いでいる今の状況において、囮になりそうなのはヒロだけだという。
「でも、弱ってるところなんてどうやって見せるつもりだよ? 相手がこっちの動向をどれだけ探ってるかなんてまだわからないし、そもそも俺の再生能力じゃ、弱るもクソも無いんじゃ……」
「それについてはもう考えてある。引き続き、俺についてきてくれ」
「……どこにいくつもりだ」
「来れば分かる。お前はただ、俺についてくればいい」
《5》
「……なんだか雰囲気のあるトンネルに来てみたわけだけども、本当にマコトの言うところの『怪物』がいるのか……?」
疑いの目を向けるヒロに対して、小さな咳払いの後、マコトは「ああ、間違いない」と言い切ってみせた。
「このトンネルの周囲では、複数の白骨死体が目撃されている。《ツインズ》絡みの事件だったため、彼らには別の原因で死んだことになってもらったが……多くの死人が出ているのは確かだ」
マコトの言葉を踏まえて、もう一度ヒロはトンネルを観察してみる。二車線が通ったそのトンネルの、左右に一列ずつ設置された蛍光灯はまばらに点滅しており、アスファルトの壁面を冷たく照らしている。日が落ちているのも手伝って、「ここに人は通らせまい」と主張しているようにも見えた。
「……で、結局ここに出る『怪物』って何なんだ?」
「ほう。天下の『不殺人鬼』なら競合相手のことくらい知っていてもおかしくないと思っていたのだが……案外無知なのだな」
「あ?」
さらっと馬鹿にされた気がしたヒロは、柄にもなく一瞬だけ目から光を消した。どうにも最近、気を失ったり乗っ取られたり発狂したりと忙しかったために、バランスがおかしくなっているらしい。
だがマコトはそれを意にも介さず、トンネルの中へと歩を進めた。
「おい待てって、おい!」
「稲葉瑠璃を守りたいのだろう。それならば時間を惜しまずにできる事をすべきだ。仮にお前が蘇生の力を持っていたとしても、彼女が『死』に対して恐れを抱いているという事実は変わらない。病気にかかってから治す方法を考えるよりも、まずかからない努力をするのが望ましいというだけの話だ」
「あんたの論は確かに筋が通ってるけど、それにしても急かしすぎだろ……それに俺はまともな説明だって受けてねぇんだぞ!?」
「……説明せずとも」
マコトはトンネルの中程で立ち止まり、ヒロの方を向いた。
「命の危機が迫ったなら、対処せざるを得なくなるだろう」
「あんた何言って……ッ!?」
その時、ヒロは足裏に、確かな振動を感じた。
「俺がお前と『怪物』との戦闘を撮影し、インターネット上にアップロードする。それを見た《羊飼い》の手先を呼び寄せるのが作戦の狙いだ。程よく苦戦してくれよ、『不殺人鬼』」
「流石にその説明じゃ分からねぇって!?」
「分からなくてもいい。ただ、己の欲に従って戦えばいい」
震源は地面の奥底から、徐々に地表へと近づいてきているように感じられた。そしてその振動が最高潮に達する直前、仁王立ちでヒロの方を見ていたマコトの姿が、「ジジッ!」とノイズにかき消されるようにして消えた。
それと入れ替わるようにして、ヒロの目の前に現れたのは——
「——グォォォォォォン!」
「……うっそだろ」
それを一言で形容するならば、まさに『怪物』の二文字が相応しいと言えるかもしれなかったと、ヒロは感じた。
より細かく言葉で表すなら、それは俗に「ワーム」と呼称されるような、蛇のように長い、自動車ほどの幅の胴を持つ顔のない捕食者だった。その体は段になった白い外骨格で覆われ、隙間から本来の色である赤い肉が覗いている。先端には、まるで花弁のように三つに開く口があった。地響きのような鳴き声をあげるとともに開いたその中には、おびただしい量の牙が、入った獲物は絶対に逃すまいと内側に向かって伸びていた。
「——ッ」
それを見た途端に、ヒロの足は独りでに動き出していた。だが彼のことなので、一目散に逃げ出したというわけではなく、
「《スーサイド・フェニックス》!」
怪物に向けて剣を振るうべく、その足を踏み出したのだ。
(——人間相手だったら腕とか足とか切り落とせばすぐ無力化できるけど、この大きさじゃ頭……頭? も切り落とせなさそうだ……とにかく、攻撃を与えてみて反応を確かめるか)
戦闘の時だけは冴える自らの頭を頼りに、ヒロは飛び上がってトンネルの天井に足をついた後、剣を下向きに構え、全体重をかけた突き技を繰り出す。
「《血落・隼》!」
ドゴン! という衝撃音とともに、剣は外骨格に強烈な一撃を加えた。しかし音の割に効いている様子はなく、外骨格への影響は精々、フローリングの床にアイロンか何かを落とした時くらいの、小さな凹みが見られた程度だった。
(——見た目通り堅牢な鎧みたいだ。じゃああの装甲の隙間から見える、肉の部分を切り付けないといけない感じか……別にあの口に腕かなんかぶち込んで内側から爆発させてもいいけど、それで体が戻ってこなくなったら困るのはこっちだしな……うおっ!?)
外骨格の上に立っていたヒロは、バランスを崩す。ワームがとぐろを巻くように動き始めたのだ。すぐさま彼は跳躍してワームから離れようとした。だが。
「グォォォォォォン」
再びワームが咆える。すると、外骨格のうち数枚が、ハッチのように跳ね上がった。これだけでも奇妙だったが、その裏側から襲いかかってきたものは、さらに奇妙なものだった。
それは、ワーム本体と同じ姿をしたミニサイズ——といっても人の胴ほどの太さはある——の三本のワーム、あるいは触手だった。
まっすぐ伸びてくるそれを、ヒロはそれぞれ裏拳、蹴り上げ、踵落としで軌道を自らから逸らした後、腰を大きく捩った回転斬り、《血風・鳶》によって切断した。こちらに本体ほどの堅牢な装甲はなかったようで、先端部は切り落とされると、そのまま落下しながら炎に包まれ、灰になった。
(——でも、俺が切ったってことは)
しかし、その灰は風も無いのに舞い上がり、燃え上がる触手の断面へと戻っていく。断面に灰がまとわりつくと再び燃え上がり、触手の先端に三つに開く口を復元した。
「だ・よ・なァッ——!」
間髪入れずに、ヒロは斜め前方に飛び上がる。それを迎え討つようにして、ワームの方もさらに多くの触手を展開した。
(——やっぱり一撃でとどめを刺さないと難しいか……相手は人じゃないから精神の消耗の具合も分からない、というかそもそも消耗する精神があるのかどうかも分からないし……ッ!)
いつの間にか本来の目的——ある程度激しい戦いを演じて、《羊飼い》の手下を誘き寄せること——も忘れ、ヒロはこの怪物から白星を奪い取ることだけを考えていた。
《6》
昨夜は男たちの拳が飛び交い、近寄りがたい熱狂を生み出していた廃工場、その中の薄暗い電灯の下にて。
「テメェら……何言ってんだ? ア?」
千賀藪蛇は、その短い言葉にありったけの苛立ちを乗せ、自らと同じくらいの年の三人を威圧した。
一人目、安条蹴。ごく普通の大学生。高校時代までサッカーをしていた経験から、秀でた身体能力を持っている。
二人目、熾羽灯火。動物飼育係を目指し専門学校に通っている。警察官の兄が失踪しており、現在まで行方不明。
三人目、手枕後光。インターネット上で配信者として活動中。生活リズムが完全に昼夜逆転している。
彼ら三人は全員、《羊飼い》の誘いに乗り、闇バイトに加担した《ツインズ》能力者である。しかし今、彼らがヤブヘビに向かって放った言葉は、あまりに無知で滑稽なものだった。
「……このバイトを、辞めさせて欲しいんす」
シュウが文言を復唱し、より深く頭を下げる。それに続くように、トモシビとウシミツも頭を下げた。
「……別に聞こえなかったわけじゃねェよ。ただよォ……お前ら自分の立場分かってんのかって聞いィてンだよ」
ヤブヘビが肩に担ぐ《コンカッション》を少し動かすだけで、三人は額から汗を吹き出した。その様子から見て、相当思い切った決断だったらしい。それを彼が知ったところで、高圧的な姿勢を止めるきっかけにはならないのだが。
再びシュウが顔をあげ、メガネの奥の今にも泣き出しそうな瞳でしっかりとヤブヘビのことを見た。
「お……俺、人殺しするなんて聞いてなかったんっすよ……今月カツカツだったから友達に相談したら、『いいバイトあるよ』って教えてもらって……それで、特に考えなしに応募したら……したら……」
「俺だって……本当は別のバイトに応募したはずだったんだ……でもどっちにしろ学費でキツかったから……来てみたら、こんな……」
「……僕は、配信のネタにでもなるかなって応募した。でも、こんな法に触れるような行いに手を染めるわけにはいかない」
彼に続けてトモシビとウシミツも、それぞれ自らの思いを正直に告白した。だが、千賀藪蛇という男は、彼らが思うほどの人情を持ち合わせている人間ではなかった。
「そういえばよォ安条くん。テメェのお友達、どこ行ったと思う?」
シュウは息を呑んだ。彼をこのバイトに誘った友達。彼は元々《ツインズ》を宿していなかったから、「初期投資だ」とかなんとか言って、闇市場からありふれた《ツインズ》を買い上げていた。しかし、昨日の集まりがあってから、シュウは彼の姿を見ていなかった。
「えっと……昨日から見てないっす、けど……知ってるんすか」
彼は「ある可能性」のことを考えずにその言葉を口にした。するとヤブヘビは悪趣味な般若の面のような笑いを浮かべ——
「へぇ。まだ生きてると思ってたみたいだな」
——その言葉を言い放った。
「……は?」
「あいつは使えなかったから死んだ……というか、俺が殺したっつった方が正しいよなァ。……そうだ、せっかくだから証拠も見せてやるよ……おい、モカ!」
彼は背後に向けて怒声を上げる。するとその暗がりの中から、一台のショッピングカートを押した少女が現れた。彼女は昨日の集まりで、裏切った「仲間」を殴り飛ばした直後のヤブヘビに抱きついていた少女だ。
「はいは〜い、呼ばれて飛び出て参上、伊佐久萌香ちゃんで〜す☆」
「くだらねぇ口上言ってねェでさっさと見せてやれ」
「んなー!? せっかく愛しのヤブヘビさんのために、特別きゃわいく登場してあげたのに、なんて薄情な!」
きいきいと場違いに騒ぐ彼女へ、「さっさとしろ」と小さく呟くヤブヘビ。それは少女の放つ騒音に呑み込まれそうなほど小さかったが、モカは「は〜い」と残念そうな声をあげて、ショッピングカートの上に乗っていたレジ袋の中身を、三人の前にぶちまけた。
ビチャビチャビチャ! と撒き散らされた中身を見た三人は、
「——」
言葉を失った、という表現が美しいほど似合う表情で固まった。
「ちょうど今のテメェらみてぇに、この仕事がヤベェもんだって気づいちまったみてぇでよォ。しつこかったからデコピン一発でぐちゃぐちゃにしてやったんだよ」
「流石ぁ、私のヤブヘビさんッ!」
「抱きつくなモカ、今はちと機嫌が悪ィんだよ」
二人の狂人の織りなす喜劇は、三人の観客には見えていないし、聞こえてもいない。ただ目の前に撒き散らされた、赤いゲル状の何かが何であるかを理解して、理解したくなくて、信じたくなくて、それでも信じる他に道はなくて、堂々巡りになった思考に囚われ、そこから一歩も動けなくなっていた。
「しつけェぞモカァ! ……つまりよォお三方。俺が言いてェのは、そーゆー惨めな姿になりたくなかったら、大人しく日暮飛路とか稲葉瑠璃とか、それか《焚書図書館》とかゆー奴らの臓物ぶちまけてこいってことよ。分かったんならさっさと殺しに行け」
ヤブヘビは言いたいことを言い終わると、モカに絡みつかれながらその場を立ち去った。
三人がただそこに立ち尽くす他にできることは、言われた通りにさっさと赤い白星を勝ち取りに行くこと以外に無かった。
《7》
「《血突・啄木鳥》ッ!」
目にも止まらぬ連続突きが、襲いかかる無数の触手をズタズタに引き裂く。それが再生を終える前に、ヒロは一気にワームとの距離を詰め、その外骨格の隙間を縫うように、一発の突きを放った。
「《血刺・百舌鳥》!」
白い鎧の下、グロテスクな赤に鋭く襲いかかる剣先。怪物は悲鳴のような咆哮をトンネルに響かせた。
一見ヒロが相手の弱点を見抜き、優位に立ち回っているように見えるが、彼は怪物との戦闘を続ける中、微かに違和感を覚えていた。
(——おかしい、さっきよりも動きが鈍っている)
ヒロの能力は、単に傷を治療したり、切り離されたパーツを復元するものではない。彼の血の中の、生命にとって最も原始的で根源的な力、「生命力」を注ぎ込むことが、その全てのトリガーになる。
その「生命力」は傷だけでなく全身に回り、生命体の活動をより活発なものにする。先日のヒッテが自身の《ツインズ》の使用限界を超えて活動できていたのは、この効力によるものだ。
つまり、普通の人間や生物がヒロと戦い、それが長丁場となった場合、そのパフォーマンスは衰えるどころかむしろ向上するはずなのだ。治療の痛みが精神にダメージを与えたために動きが鈍る場合もあるが、少なくとも眼前の怪物のような、知性を持たないものではそういった現象は見られないはずなのだ。
だが一部の「特殊な例」の場合は、過剰な生命力が毒となり、その活動を停止するまで追い込まれてしまう場合がある。ヒロがかつて相手にした、ペンパルという男がその例だ。つまり——
——この怪物は《ツインズ》能力者である。
戦闘中の頭では、それをただの攻略ヒントとしか捉えられなかったヒロだったが、もしこれをシラフの状態で聞いていたなら、思わず腰を抜かしていたであろう。相手は人間を捨てているのだから。
(——どういうことか考えてみよう……あの触手を展開する能力は、確かに《ザ・ピンク》とかそういう《ツインズ》とよく似ていると思ってた。でも、全身が触手と同じ姿になるなんてあり得るのか……?)
ヒロは訝しみながらも、触手を弾き、切り裂く。徐々にこの怪物を相手取るのに慣れてきたのか、その動きも最小限のものになっていた。戦闘マシーン、そう呼ぶのが相応しいのかもしれない。
(——生命力の蓄積、それが一定の値を超えた時、生命力の塊である《ツインズ》は弾き出される……ね)
ヒロはふと気になって、瞳に力を込めた。
「《血眼・大鷭》」
彼の虹彩が一瞬にして緋く染まる。それによってヒロの視界には、サーモグラフィのような生命力の濃さを色で表現したものが、いつもの視界に覆い被さるようにして出現した。彼が《血眼・大鷭》と名付けたこの技は、フェニックスから見よう見まねで習得したものだ。
その視界で、ワームを見てみる。当たり前と言えば当たり前なのだが、ワームの全体が緋色の色彩に包まれていた。もちろん、それから伸びる触手も。
(——やっぱり一体の怪物だよ……な?)
その思考が澱んだのは、その長く伸びる体を前から三対七ほどに分けたあたりに、やたら色が強い箇所があったためだ。その輪郭はどことなく、体を丸めて胎児のような格好になった人間のようにも見えた。そしてその背中から伸びた 太い管状のものが、そのままワーム体内の肉壁に繋がっているようにも見ることができた。
(——まさか)
ヒロはその「まさか」を思いついた途端に、全身を寒気が駆け巡っていくのを感じた。ワーム本体とよく似た形状の触手、《ツインズ》と同じように生命力のオーバーロードを起こしている点、そして彼の知る《ザ・ピンク》という《ツインズ》……全てが根拠になり得た。
(——だったらやる事は一つだ)
際限なく迫ってくる触手。ヒロは次来る触手に、剣を構えた。
「——ハァッ!」
ヒロの手元から、「ブォギン!」という音がした。次の瞬間には、彼の体は中空にあった。
(——「本体」を、引き摺り出す)
彼は自由落下で落ち切る前に、《スーサイド・フェニックス》の刀身を、左手で直に掴んだ。その表皮が浅く切り裂かれ、血が漏れ出す程度の絶妙な握力で。
同時に、全身を巡る血液を、左手の一点に集中させるようなイメージによって、生命力を左掌の一点に凝縮する。当然それは血と共に彼の体外へと溢れ出した。漏れ出した先にあるのは、《スーサイド・フェニックス》の黒地に血管が張ったような緋い模様を持つ刀身だ。
「《血閃——」
その構えは、抜刀術に近い。
外骨格も、厚い肉の壁も。
一撃で、仕留める。
その決意を、溢れる血に乗せて。
「——・燕》ェッッ!」
……図らずも、その威力は生半可なものではなくなってしまった。
振り抜かれた剣に付着した血液に込められた生命力は、軽く十人以上を一瞬で蘇生できてしまうほどの量だった。それはもはや血液という実体のある存在に収まらず、純粋なエネルギーの塊として出現していた。
煌々と燃え盛る炎にも似たそれは、本来の刀身の長さよりも長く伸び、怪物に襲いかかった。そしてヒロの言うところのワームの「本体」に当たる部分の少し上を、外骨格ごと両断したのだった。
そこから溢れ出すのは赤茶けた血液や、得体の知れない粘性を持った液体。さらにはヒロの切断が届いていない部位までもが、大量に込められた生命力が暴走したことによって悲鳴を上げる。まるで海上で腐敗しガスが溜まった鯨の死体のように、両断されたワームは爆発四散した。
「——グオォォォォン!」
最期に怪物の咆哮が、上下左右を覆う冷たいアスファルトに響き渡る。それが身を傷つけられたことによる怒りなのか、耐え難い痛みに対しての絶叫、つまりは断末魔なのかということは、ヒロの立場からすればさほど大したことではなかった。
「さて……どう出る」
ヒロは切り付けた怪物を振り返り、剣道における中段の構えによく似た体勢をとった。彼の剣技はアニメや映画の受け売りでしかない陳腐なものなのだが、「残心」の概念は知っていたらしい。
それが功を奏したと言えるだろう。
「……ヤメロ」
「!」
その声が聞こえたと同時に、ヒロは剣を持ち直し、思い切り横に振っていた。剣を握った手には、何かを切った感覚が伝わる。見てみれば、例の装甲に覆われた非生物的な質感を持つ触手が、真っ二つにスライスされて彼の前に力尽きていた。
それは怪物の欠片で滅茶苦茶になったトンネルの奥へと引き摺り込まれる。その中心には触手の塊のようなものがあり、そこから伸びた数本が、己の肉片を呑み込んで、自らの糧としていた。
「やっぱりか」
その「触手の塊」のように見えるものを見て、ヒロは呟いた。
「オ マエ」
触手の塊の中から、ぎこちない日本語が聞こえてくる。それに合わせて、絡み合っていた触手が解けるようにして、中から何者かが現れた。それは、少女だ。
儚げな白いワンピース一枚だけを着ている彼女は、一般に「アルビノ」と呼ばれるような、肌も髪も白い、色素の薄い姿だった。ただ一点だけ、彼女の血の色がそのまま現れた赤い瞳が、本能的な攻撃性を剥き出しにしてヒロを睨んでいた。
そしてそんな容姿に全く馴染まない要素が一つ。それは、彼女の左肩から生えるようにして突き出た、機械を継ぎ接いで作ったかのような歪な形状の弓。おそらくは、あれが怪物の「本体」だったもの。
(——白い触手を操る、《ツインズ》)
それが怪物の正体であり、あの弓が持つ力だ。
「よクもヒきハがしてくれたナ」
少女は右手で弓を掴むと、それを自身の体内へと押し込んで取り込む。完全に弓の姿が少女の中に消えると、その赤い目が光った。
「ワタシは《ホワイト・ハッピー》、このニンゲンの《ツインズ》ダ」
《8》
熾羽灯火は、夜の道を一人歩いていた。
(——俺にはできない、できるわけがない)
共に頭を下げたシュウとウシミツは、放心状態のまま彼の元を去ってしまった。どうやら、あの言葉に従うことを選んだらしい。そう待たずとも、彼らは『不殺人鬼』との戦闘を始めるだろう。
トモシビは一応、不良である。金髪で全身黒ずくめ、その外形は完全に不良のそれである。だが彼の内面は、一般に不良と言われて想像するようなものとはだいぶ違うだろう。
彼が不良を続けているのは、単にそのレッテルが便利なものだからという、何のこだわりもプライドもない理由からだ。少しナイーブな気分だからと授業を欠席しても、苛立ちに任せてゴミ箱を蹴り倒しても、世間が彼を見る目は全く変わらない。彼は周りからの視線が少し蔑むようなものになることを対価に、「不良だから」という免罪符に手を伸ばしただけに過ぎない。
そもそも、盗んだ二輪車で高速道路を駆け回ったり、路地裏で余所者と殴り合ったりするような人間は、専門学校に通って動物園の飼育員を目指すような穏やかさと優しさを持ち合わせていないことが多いだろう。
彼は服装や口調といった「うわべ」だけなら、かろうじてガラの悪さを演出できている。が、その本質は不器用ながらも人を思いやる心を持った好青年だ。おそらく、不良は向いていない。
そんな彼だからこそ、このバイトだけは絶対に辞退しなければいけないと思っていた。自分は決して、大切な人が消える苦しみを与える側になってはいけないからだ。たとえ顔も知らない誰かが相手だとしても。
「みゃー」
ふと、塀の上から鳴き声が降ってきた。目を向けてみれば、若草色の瞳を持つ白い猫が、じっとトモシビの方を見ていた。猫はひょいと塀から降りると、トモシビの足に近づき、彼に体を擦り付けて、文字通りの猫撫で声で鳴いた。どうやら彼のことを気に入ったらしい。
「君……こんな夜中にどうしたの?」
トモシビは元来から、異様に動物に好かれやすい体質だ。飼育下にあろうと野生だろうと、彼を見た途端に引き寄せられるようにして彼の前に集まってくる。
かつて、その姿がまるで御伽話のプリンセスのようだと言ったのは誰だったか。一年前に死んでしまった愛犬と共によく会っていた、小麦肌の女性だったか。それとも年が十も離れた、艶やかな銀髪と左目の泣きぼくろが特徴的な、己の兄だったか——。
「……兄さん」
彼は屈んで猫の頭を撫でる。しかしそんなものでは絶対に温まりきらないほどに、己にひどく冷え切った場所があることを自覚させられた。
その時だった。
「——待ち侘びたぜ、トモシビ」
彼の怯えで弱々しかった声音が、突如として狂嬉に満ちた厚みのあるものに変わった。加えて彼の全身からは、怒気や殺意に似た悍ましい感情がオーラとなって溢れ出した。冷たい月明かりに照らされ、色彩を奪われた髪が銀糸のようにも見えた。
その変わりようを感じ取ったのか、白猫は怯えた様子でそそくさと走り去って行ってしまった。その姿を見てトモシビは——否、トモシビの《ツインズ》は、口をニギィと歪めて笑う。
「お前が俺のこと考えてくれねぇと乗っ取れねぇから困っちゃうよなぁー……ホントは俺もこんなことはしたくねーんだけどさ、他に方法がないから許してくれよ? ……んで、可愛い可愛い俺の弟クンを人殺しにしないために、俺がブッ殺すべきなのは、っと」
彼はトモシビのスマートフォンを起動し、SNSを開く。普段滅多に投稿をしないトモシビの投稿履歴の一番上には、その「クソ野郎」への事務連絡が表示されていた。
「……《羊飼い》……ってことは、アイツか。ったく、アイツと俺はとことん腐れ縁だねぇ……ま、絶対ェこれで最後にしてやるが」
トモシビの体で、彼は全力で走り出す。彼の名前は『遺志』の《ツインズ》、《フラクチュアド・エンジェル》。またもう一つ、真の名前として——トモシビの兄、熾羽篝火を名乗っていた。
二月最後の投稿です、クロレキシストです。
今回は新キャラ大量投下&久々のヒロの戦闘、そして設定開示と、とにかく情報量が多い回になりました。読者の皆さんに伝えられる内容になっていることを祈ります……特に《ツインズ》の設定のところなんかは、ちょっと哲学的思考入ってたりして作者も混乱するレベルなので。
今日取り上げるのは、新キャラのうち二名、「安条蹴」と「熾羽灯火」についてです。実はこの二名、作者の友達……もっと具体的に言うなら「作家の卵仲間」から骨組みをいただいたキャラになっています。自分では思いつかないような魅力的なキャラクターを頂けて、嬉しい限りです。彼らをどう活かしていくかというのも、腕の見せどころだと思ってより一層筆が乗ります。お二方、本当にありがとうございました。
そんなこんなで三月中も毎週投稿がんばるぞー、と決意表明をしたところで、今日の後書きを終わらせていただきます。また来週の日曜日に、ここでお会いできることを楽しみにしています。