2-41 赤に染まる
「あぁ、もう本当に鬱陶しいな」
辺りを飛び交う銃弾を避け、防ぎ、弾いて進み、一体一体確実に倒していく。
最初の頃に戦ったような雑魚も混じっているが、適当に攻撃しても避ける個体が意外といる。
大型のミサイルは非常に鬱陶しいし的がでかいので真っ先に倒したが、細かな人型は数が多い。そのうえ、散らばっているために対応が遅れる。
恐らく何体かには突破されてしまったが、その先には自慢の妹達がいるのだ。
恐らく大丈夫だろう。
不安点は連絡を取れないことだが、ここに関しては信じるしかない。
「よし、大分減ってきたな。後は三体だけか。ようやくだな」
マップでは縮尺や高低差が判別出来ない問題で正確な位置までは分からないので、細かい部分は自分の目で確かめるしかない。
しかし、俺には秘策があった。
以前からやっていた事ではあるが、最近また練習していたのだ。
「雷波探査」
周囲へとカナムを飛ばしその挙動から辺りの様子を把握する。
練習したことによって半径十メートル程度ならしっかりと判別出来るようになっていた。
唯と戦った時のような間違いはもう無い。
「後方の壁の向こうに一、右斜め前方廃墟の二階に二、よしよし、カナムを集めて……解放!」
指で音を鳴らすと同時に三つの影が地面に倒れ込むのが分かる。
この程度の相手なら場所さえ分かってしまえばこっちのものだ。
マップを確認するが、近くにはもう敵はいない。
これで、この辺りの敵は全部倒したな。この後はどうするか。
フィアの増援に行きたいが、他の二人を手伝うべきか?
「空、唯、こっちは片付いた。手助けはいるか?」
するとすぐに応答があった。
「こっちは大丈夫!」
「フィアさんの方へ!」
マップで確認する限り残りの敵は五十程度、空の方に多いみたいだが、このくらいの敵に空がやられるとは思わない。行っても問題はないだろう。
「分かった! 残りは頼んだぞ!」
そうしてフィアの場所を確認して走り出す。
ちょっと前からマップ上の点が全く動いていないのが気になるが、話でもしているのだろうか?
何にしても敵がこっちに来ていない以上は大丈夫だろう。
今行くぞ、フィア! 俺は意気込み、全力で走りだした。
少しして、雷人は廃墟の路地を走りながら状況を確認した。
マップで見る限り、あの敵とフィアの位置はずっと変わっていない。
フィアは場所を広く使う戦闘スタイルだ。
だから、今は戦闘をしていない可能性が高い。
もし交渉をしているのならば俺が出ていくのは良くないだろう。
なるべく気付かれないように接近しないとなので、飛んでいくのはNGだ。
幸いにも俺のいた場所からフィアの位置までは大した距離は無かった。
せいぜい四百メートル程度だ。このくらいならすぐに着く。
小まめに位置を確認しながら夜の廃墟を駆ける。
大分近くなってきた。そろそろ慎重に行くべきか。
……居た。真っ白な髪に真っ白な翼。
それに……べったりとペンキでも被ったかのように付いている……赤?
赤と言っても綺麗な赤じゃない。あの色は……。
頭の中を嫌な考えが過る。まさか……フィアに何かあったのか?
しかし、そうだとすればあの天使が立ち尽くしているのが不自然だ。
現在の位置からではフィアとの間にボロボロになった壁があってよく見えない。
そうだ。そんな事があるはずがない。
確認しなければ。位置を変えよう。
なるべく音を立てないように注意しながら側面へと回り込む。
そして見えたものは……。
「……はは、ははは。……嘘だろ?」
足を投げ出してボロボロの壁にもたれ掛かり、力なく座りこむフィア。そして、その全身に掛かった血だった。
背後の壁にも地面にも、バケツに入ったペンキをぶちまけたかのように大量の赤が乱雑に塗られている。人間って、あんな量の血を流して無事だったっけ?
そういえば、フィアは俺達と違って異星人だ。
きっと大丈夫に違いない。そうに決まっている。
「あはは、遅かったね。君」
赤く汚れた真っ白な天使が、必死に自分に言い聞かせようとしている俺を見る。
天使はその目を月の光で黄色く輝かせ、口の端を持ち上げた。
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