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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第二章~エンジェルディセント~
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2-34 エンジェルディセント

 転送の直後。

 光が収まるとそこには一面の闇が待ち構えていた。


 思えば夜間の戦闘は初めてだ。

 ここは廃墟なので、もちろん街灯は無い。


 しかし、今日は運がいいのか満月だ。

 今の場所はビルの影になっていて真っ暗だが、見えないという程ではない。


「全員いるわね?」


「あぁ」


「いるよ」


「います」


「頑張ります!」


「ます」


 芽衣と(みはり)だけなんか敬礼している。

 普段は夜に出歩くことも少ないだろうし、テンションが上がっているのだろうか?


「じゃあまずは状況の確認だけど……、まぁ見ての通りあれね」


「大きな空間の歪み……。あそこですね。中からたくさんロボットが出てきてます」


「数が分からないな。宇宙人はいるのか?」


 空中に大きく開いた空間の(ゆが)み。

 何度も見てきたゲートだ。


 現在進行形で何かが降りている影が見える。

 なかなかのペースだ。少なくともジェルドーが来た時よりは数が多そうだな。


「ふおおおぉ! あんな風に出て来るんだね。状況も(あい)まってホラー映画みたい!」


「あ、何か出てきましたね。あれは……女の子? 翼が生えてますが……凄く可愛い」


 哨がそう言いながら何やら指で画角(がかく)を確認するかのようにして見ている。

 普段からカメラを使っているし、その仕草は不思議じゃないけど……何かうっすら光ってない?


 バルザックの時も何百メートルも先から狙撃したっていうし、今も可愛いとか言ってたし、何か遠くを見れるような能力なんだろうか?


 そう思いながら手で(ひさし)を作って目を細めて見てみると、(みはり)の言った通りロボットとは異なるシルエットが一つビルの上に降り立ったところだった。


 うん、可愛いかは分からないが、確かに翼が生えてるのが見えるな……。

 奴らは翼があることが条件の組織だったりするのか?


「あれは……また厄介(やっかい)なのが出てきたわね」


「フィアさん、あれが何か知ってるんですか?」


 見た感じ、昔存在していたという古代ギルシア帝国のトーガみたいな格好だ。

 それに、真っ白でフワフワしていそうな大きな翼が一対生えている。


 ビルの上に立つ少女は翼を開いて羽ばたくとみるみるうちに浮かび上がった。

 その目は闇夜(やみよ)に黄色く輝き、満月を背にしているのが非常に絵になる。

 ……頭の上に輪っかっぽいのが浮かんでいるんだが、もしかして……。


「あなた達もなんとなく分かってると思うけど、あれは邦桜で言うところの……天使よ」


「天使……」


 俺は当たってしまった予想に頭を抱えたくなる。

 悪魔の次は天使かよ。


 一体全体、どうしたらこんなことになるんだ?


「あの翼に輪っか、服装、これだけ(そろ)っていれば間違いないわ。あの子、天使族(イジェルタ)よ。宇宙でもそれなりに有名な種族ね。強い個体が多い種族らしいし、弱いわけはないわね」


「でも一人かな? 一人だよね? あっ、ゲートが閉じた!」


「他に人は確認出来ません。宇宙人はあの天使だけでいいかと」


 一先(ひとま)ず敵の増員が止まったことを確認して俺達は安堵(あんど)する。

 しかし、気の抜けない状況だ。

 何しろ敵の数が多い。どうするべきか。


「とりあえず役割分担するわよ。あの天使族(イジェルタ)の相手は私がするわ。空、唯、雷人はそれぞれロボットの迎撃に当たって、芽衣と哨は……マップを使えないものね。迷ってもいけないし、後方で市街の方に敵が抜けないように防衛をお願い出来るかしら」


「ええー! 私も戦いたいよ!」


 芽衣が上目遣いでお願いしているが、そんなことは関係ない。

 こういう時は適材適所だ。


「芽衣。お前の能力は防衛の方が向いてるだろ。お前が移動すると無駄に被害が増えそうだしな。なにより最終防衛ラインなんだ。かなり重要な役回りなんだぞ」


「重要?」


「そうだよ、芽衣ちゃん。僕達が戦っても多分討ち漏らしが出ちゃうけど、芽衣ちゃんが守ってくれれば市街地には被害が出ないんだから。もしかしたら一番重要な役回りかもしれないよ?」


「そうですね。後ろに芽衣ちゃんがいると思えば私達も安心出来ます」


「そ、そこまで言われたらしょうがないね! 大船に乗ったつもりで後ろは任せてよ! 一体も通さないから!」


 俺に合わせて空と唯が説得をしてくれたおかげで芽衣が頷いてくれる。

 実際言っている事に間違いは無いのだが、妹がちょろくて助かった。


「はぁ、はぁ、ちょろ可愛いぃ……」


 ……(みはり)の様子はもはや見間違いと思うのが無理になってきた。

 (よだれ)出てるぞ、頼むから不健全な関係にはなってくれるなよ。


 さて、後は……。


「とりあえずフィアに任せるけど、やばくなったら言ってくれよ。フィア一人で抱え込まなくていいんだからな」


「そうそう、僕達のことも頼ってよね」


「私達も強くなっています。今はまだ頼りないかもしれませんが、出来る事はあるはずですから」


 俺達が言うとフィアは俺達一人ずつに視線を送って、微笑(ほほえ)んだ。


「そうね、頼りにしてるわ。それじゃあ、とりあえずロボットの方は任せるわね」


 そう言ってフィアは満月を背に羽ばたく天使を見つめる。


「それじゃ、行くわよ!」


「おお!」


 その声と共にフィアは天使に向かって走り出した。

 俺達は芽衣と(みはり)に指示を出した後マップを開く、敵の数は想像以上だ。


 侵入不可区画内なので、敵の位置は光点で確認出来るが、光点の数は凄まじく数える気にもならない。そこでシンシアさんの声が響いた。


「皆さん、索敵が終わりました。確認できた敵の総数はおよそ二百九十一です」


 その言葉を聞き、三人(そろ)って息を飲んだ。

 多いとは思っていたが、予想以上だ。


「さすがに多いな……。二人はどこを担当する?」


「あはは、僕は少ない方が嬉しいかな」


「そうですね。範囲攻撃手段がない空君は少ない方が良いと思います。雷人君も疲れてると思いますし……私が一番多い東側を担当しますね」


「悪いな。じゃあ俺は西で空は北な。さっさと全部倒してフィアの援護(えんご)に行くぞ!」


「おお!」


 そして、担当場所を決め、それぞれが走り出した。

 敵はもうすでに侵攻を開始している。

 ここからはスピードが勝負だ。

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