2-32 微笑ましい光景?
哨が芽衣の手によってノックアウトされ、何とも言えない空気が流れる。
そんな中、この状況の元凶である芽衣が恍けたように言った。
「あれ? 何の話してたんだっけ?」
「宇宙人がいたって話ですね。すぐに脱線しましたけど」
「あー、そうだったね! いやー、でもトカゲ男が宇宙人っていうのは納得したけど、思ってたのとは違ったね。もっと銀色で目がギョロッとしてるイメージだったからさぁ」
「銀色でギョロっとした目? 何よそれ」
「一般的なグレイのイメージですね。私も最初は半信半疑でした。宇宙人も私達と全然変わらないですから」
「一応言っておくけど、あなた達だって私達から見れば宇宙人だってことは忘れないようにね? 実際あなた達は能力を使えるんだから、私達と大差ないわ」
「言われてみればそうだよねぇ。フィアさん達は見た目も僕達と変わらないし、結構人型の人って多いよね」
「確かに、ジェルド―みたいに翼が生えてたりはあったけど、本当に人の姿をしてないってレベルの人はあんまり見ないな」
体の形も色も全然違う。SF的なイメージな人もいないではないが数は少ない印象だ。
宇宙人なんて言っても、案外見た目は変わらない人が多いものだとは確かに思っていた。
「サリアさんやレジーナさんみたいなドワーフの人は背が小さいだけだしね」
「ドワーフ!? 何それ凄い!」
芽衣のテンションも上がっている。
まぁ、そうなるよな。最初は俺もテンションが上がったものだ。
今ではだいぶ慣れてきたが、いちいち驚いてはいられないからな。
「あんた達、ルーやノイン、フォレオもいるじゃないの」
「そういえば耳が特徴的でしたね」
「いわゆるケモミミって奴だな」
フォレオはケモミミというよりは耳ヒレって感じだったがな。
「ケ、ケモミミ……?」
どうやらようやく哨が回復したらしく目隠しが外れた。
うん、俺達しかいないとはいえ、とりあえず乱れた服はすぐに直そうな。
「ケモミミ!? ほへー、ファンタジーだねぇ。もしかして尻尾も?」
「モフモフね」
「モフモフ! モフモフしたいなー!」
「モフモフですか……、いやいや、私には芽衣ちゃんと兄さんというものが……」
……何か哨のやつ手をワキワキさせてるが、変なこと考えてないよな?
この短時間で哨のイメージがちょっと変わってきたんだが、芽衣の事任せて本当に大丈夫だよな……?
「多分、止めておいた方が良いんじゃないでしょうか? そういうのって嫌がられるイメージがあります。くすぐったそうですもんね」
「あ、やっぱり失礼になるのかな? でも私も会いたいなー」
芽衣がこっちをちらちら見てくる。
確かに今回は助けられたが、芽衣に危ないことをさせるつもりはない。
「ダメだ。芽衣にはこれ以上関わらせるつもりはないぞ」
「えー、何でー? お兄ちゃんより私の方が強いのに!」
「いやいや、お前の力は確かに強いけどな。周りへの被害が大きいだろうが。敵の攻撃よりも被害が出かねないぞ」
「むー!」
芽衣はむくれて見せるがここは我慢だ。
芽衣にこれ以上戦わせるわけにはいかない。
「まぁまぁ、戦うのはダメにしても、訓練するのはいいんじゃないの?」
「おい、フィア!」
「あなただって反対を押し切って入ったんだしね。そのくらいは良いじゃないの」
「わぁ、ありがとうフィアさん! ふふふ」
芽衣がフィアに抱きついて喜ぶ。
俺が反対を押し切って入ったのは事実だし、そこを言われると俺も弱い。
「芽衣がやるなら私もやりますので」
芽衣に触発されたのか哨までがそんな事を言い始めた。
「……空は止めなくていいのか?」
「うん。もちろん心配ではあるけどね。芽衣ちゃんを想う気持ちは分かるし、哨が決めたなら僕が止める事じゃないよ」
「お兄ちゃん!」
空の返事に感動したように手を合わせる哨。
なんだよ。普段は少し頼りないのに、いつになく大人だな。
……これ以上はただの我儘か。俺も大人にならないとな。
「はぁ……」
「そう落ち込むんじゃないの。それに敵も強くなって来てるし、これから先、私達だけで対応出来るかどうかは疑問が残るわ。もし何かあった時には戦力は多い方が良いし、私達だけで守り切れる保証もない。その時のために二人はもっと力をつけておくべきだと思うけど?」
確かにこれから何が起こるか分からない。
邦桜全体で何かがあれば戦場から遠ざけても意味が無いかもしれない。
それならば身を守るだけの力をつけるのは必要だろう。
「……もっともな意見……だな」
「まぁ、あなたの気持ちも分かるし、手が足りない時だけお願いするようにすればいいんじゃないかしら? なるべく危険な事はさせないし、安心なさいな」
「よろしく頼むよ。芽衣、俺は訓練と交流に関しては何も言わないことにする。でも実戦に関しては今回みたいに必要な時以外は認めないからな」
「じゃあ哨、僕からもそういう事で」
「はぁい。とりあえずはそれでいいよ。フィアさんよろしくね」
「はい、兄さんに迷惑は掛けません。それどころか尻拭いすらしてあげます」
「はいはい。訓練は甘くないから、そのつもりなら覚悟はしときなさい。ふふ、妹が増えたみたい」
「これがお姉ちゃんかー……えへへー」
芽衣はフィアに頬擦りをしていて、フィアは芽衣の頭を撫でながら微笑んでいる。
こうして見ていると確かに本当の姉妹みたいだ。芽衣は距離を近付けるのが本当に早いな。
「む、芽衣を甘やかす役目は私のものですよ」
そんな様子を見てヤキモチでも焼いたのか、反対側から芽衣を抱きしめて頭を撫でる哨。フィアは一瞬驚いたようだったが二人纏めて抱きしめていた。
何か、何か……いや、これは微笑ましい光景なはずだ。
哨の目がどことなく怪しいような気もするが、あくまで二人は親友だ。きっと気の所為に違いない。
俺はそうやって自分に言い聞かせたのだった。
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