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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第二章~エンジェルディセント~
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2-27 気張りなさいよ

「う……」


 空の背中から地面に降ろしてもらったフィアは未だにその身を襲う吐き気と戦っていた。

 この遊園地のアトラクションがここまで響くというのは完全に想定外だった。


 アニメの知識で遊園地の乗り物には強い人と弱い人がいるとは知っていたけど、速く動くだけなら普段からしてるし、正直アニメで見た光景を体験出来る程度にしか考えてなかったわ。


 まさか、自分で動いていないって事がここまで響くものだったなんて。

 思えば私は会社から出る機会も少なかったし、移動はほとんどが自分の足か転移。

 (ろく)に乗り物に乗った事なんて無かった。


 どうやら、私は乗り物に()いやすかったみたいね。

 さらに想定外だったのはアトラクションが面白かったこと。


 途中で止めていればここまでひどい事にはならなかったと思う。

 止められない、止まらない。この楽しさはまさに麻薬(まやく)のようだわ。


 後のことは想像出来ても無理をしてしまった。

 私は今、自分を(りっ)することの出来なかった(むく)いを受けているのね。


 目の前には妙な口調で話すリザードマンの男と四体の新型ロボット。

 もちろん一番強いのはリザードマンの男だと思う。


 弱いのならばここにいる意味もないし、本来なら私が相手をしなければならない相手。


 だけど、今の体調じゃ足手纏(あしでまと)いにしかならない。

 回復するまでは雷人達に任せるしかない。


 大丈夫……雷人は以前よりさらに強くなった。

 空はともかく唯は万全の状態だし、二人掛かりなら少なくとも時間稼ぎくらいは出来るはず。そこはもう信じるしかないわね。


「邪魔をするものは排除するようにとの命令でござる。せめてそっちはこなさなければ言い訳が出来ないでござるからな。行くでござるよ!」


 リザードマンの男が飛び出すと同時に四体のロボットも飛び出してくる。

 武器は槍が二体と刀が二体だ。


「空……、気張(きば)りなさいよ」


「うん!」


 気分が悪いとか言っていられる状況じゃない。なんとかしてロボットを倒さないと。

 前方に(てのひら)を向けて冷気を放ち、ロボット達を氷漬けにしようとするが(かわ)されてしまった。


でも、それで充分。ロボットの突進は止められた。

ロボット達はこちらを(うかが)うようにじりじりと周りを囲い始める。


「フィアさん、援護(えんご)は頼むよ」


 そう言って空が走り出し、槍を持つロボットが繰り出してきた攻撃を避けながら一撃を加えた。しかし、ロボットはバランスを少し崩しただけですぐに体勢を立て直してしまう。


「いつものよりも硬いなぁ」


()めて掛かったら……やられるわよ。アイスハウンド!」


 伸ばした手の先から氷の狼を作り出し、ロボット達に襲い掛からせる。

 すぐさま反撃して来たロボット達に何体かやられるが問題は無い。


 空の攻撃も全く()かないわけじゃない。

 外装はどんどん(へこ)んでいっているし、その所為か動きも少しずつぎこちなくなっている。


 どうやら空も上手く能力を使っているみたいだ。

 発破(はっぱ)をかけた甲斐(かい)があったというものね。

 この程度なら大丈夫そう。


「チェーンバインド……、アイスネット……」


 呟きながら目標に手を向ける。すると空中からチェーンが現れロボットを縛り上げ、それを凍らせることによって(いちじる)しく動きを妨害(ぼうがい)する。


 幾ら強くなろうが、この程度のロボットならばどうとでもなる。

 私は(ろく)に動けないけどそれでも戦えるし、空が上手く立ち回ってくれているおかげで敵を近付けさせずに済んでる。


 ……空も成長したものね。

 さて、そろそろ数を減らしましょうか。


「……空、下がりなさい!」


「へ? うわっ、了解ぃぃぃ!」


 手を(かざ)す私を見て顔を真っ青にした空が走って私の後ろへ避難する。

 さぁ強めに行くわよ。


「……バーン・インフェルノ!」


 声と共に前方に高熱量の炎が吹き荒れロボット達を包み込む。

 視界がゆらゆらと揺らめき、その身を赤熱(せきねつ)させたロボット達が力なく(くず)れ落ちた。


 被害を最小限にするため、範囲を極力(きょくりょく)(しぼ)って火力を上げた。

 そこらのロボットが耐えられるはずがない。


 ……範囲を絞ったせいで二体は逃れたみたいね。

 でも、倒すのも時間の問題。そう思った時、リザードマンの男が高らかに叫んだ。


「それでは見るがいいでござる! これが! これこそが拙者の真の姿! 宇宙最強たるその姿! 生きているうちに見る事の出来る幸福に打ち震えるでござるよ!」


 話に聞いたことはあった。だけど、でも、あれはもう存在しないはずじゃなかったの!?


「嘘でしょ……、あれは、あれは、竜人族(ドラグナイト)!?」


 目の前の光景に私は思わず叫んでいた。

 竜人族(ドラグナイト)、その種族は……七年ほども前に滅んだはずの種族だった。

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