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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第二章~エンジェルディセント~
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2-22 乗り物の怖さ

「うぷっ、もう無理……、何なのよあれ……」


「あはははは、世界が回って見えるよ」


「お前ら大丈夫かよ……。うっ、……俺も少し気分悪い」


 フィア、空、雷人の三人はベンチに座り込んでダウンしていた。

 あれから色々なアトラクションに乗ったがどれもなかなかにひどいものだった。


 最高時速三百キロでぐるぐる回るジェットコースターに、自由落下どころかさらに加速して地下深くまで落ちるディープ・デス・フォール。


 通常の三倍の速度で回転するというスクリュー・デス・マグカップや途中でレールが切れてコースターが空を飛ぶフライング・デス・サーカス。


竜巻に飛ばされているのをイメージしたという、クリア素材や光学迷彩などの力で何もない場所を高速で移動しているように見えるインビジブル・デス・サイクロンなどなど。


これ本当に遊具か? 拷問(ごうもん)道具じゃないのか? と思うようなアトラクションが満載(まんさい)だった。


 唯一、誰でも大丈夫そうだったのは勇者クエストとかいうゆっくり走るトロッコに乗って現れる敵を銃で撃ちまくるというゲームだったが、これはこれで馬鹿じゃないかと思うくらいたくさんの敵が出現した。


 全部撃ち倒したのは俺達が初めてだったらしく、凄く称賛(しょうさん)された。

 最初は多少規格外でも問題無いと高を(くく)っていたのだが、正直乗り物の速さを()めていた。


 時速三百キロなら秒速で言うと八十メートル以上だ。

 一秒で八十メートルを走るなんていうのは、いくら身体強化をしていても簡単なことではない。


 もしかしたらフィア達はそのくらいの速さで動けるかもしれないが、俺は仮に出来たとしても助走ありで無理やり出した最高速といったところだろう。

 もちろん、普段の戦闘や訓練でそんな速さに到達する機会はないし、正直現状では出来る気はしていない。


 それに加えて、自分で動くのと乗り物に乗るのでは全くもって勝手が違った。

 自分の予想通りに動くのと、誰かに無理やり動かされるのでは体感が違うのだ。


 現にフィアは俺達と一緒にぐったりしている。

 驚くべきは……。


「三人とも大丈夫ですかー? 飲み物を買って来ましたから、これを飲んで落ち着いて下さいね」


「はいはい、タオルもありますよー。もう、お兄ちゃん達は情けないなぁ 妹よりも先にヘタるなんてさー」


「兄さん達は仮にもお兄ちゃんなんですから、もう少ししゃっきりとしてもらいたいですよね」


 唯と芽衣、哨の三人がぴんぴんしていることだろう。二人で声を(そろ)えて(あお)ってきやがる一体どんな(きた)え方をすれば耐えられるのか、さっぱり分からない。


「うーん、何か元気付ける方法はないでしょうか……はっ! 思い出しました。こういう時はこう言うのが良いと聞いた事があります。ざぁこ♡ ざぁこ♡ お兄ちゃんなのに恥ずかしいんだぁ♡」


「ぶほっ!」


 いきなり何言ってるんだこの妹は! びっくりし過ぎて噴き出しちゃったじゃないか。

 一体どこでそんな知識を……それで元気になるのはごく一部の人間だけだぞ。


「えっ! (ちまた)では元気付けるためにそんな事を言うんですか!?」


「そ、そうなんだ。ざ、ざぁこ。ざぁこ」


「あ、あぅ。……ざ、ざぁこ。ざぁこ」


 ダ、ダメだ。純粋(じゅんすい)過ぎて二人がとんでもない非常識を受け入れようとしている。

 気分が悪いとか言っている場合じゃない!


「いやいやいや、芽衣と唯は(だま)されるなよ。それ間違った知識だからな」


「え? あ……そ、そうですよね! 違いますよね! あはははは!」


「あれ、違いましたか? 何かで見た気がしたのですが」


「あー、やっぱり? びっくりしたよ。雑魚って励ましじゃなくて罵倒(ばとう)だもんね。元気になるわけないよ。(みはり)ちゃんはおっちょこちょいだなぁ」


「……おっちょこちょいなのかな。僕の妹の知識が変な方向に(かたよ)ってる気がするんだけど」


「もう何でもいいよ。さらに頭痛くなってきた。……それにしても、三人ともよく平気だな。あんなに激しいのに乗ったってのに」


「……そうよね、尊敬するわ。私はもうダメかもしれない……」


「あはは、途中までは大丈夫だったんだけどね……。うぷっ、スクリュー・デス・マグカップ……恐るべし」


 さっきの流れで一声も上げないほどだからな。フィアは相当まいっているようだな。

 そんな俺達がそれぞれ賞賛(しょうさん)の視線を送ると、俺達を見て三人は楽しそうに笑った。


「絶叫系は初めて乗りましたけど、スリリングで面白かったです。速いっていうのはどうしてか、それだけで楽しいですよね」


「そうだよね。お兄ちゃん達が乗り物に弱いだけだって」


「はい、そうですね。だってほら、他のお客さん達もぴんぴんしています。私達が特別というわけではありません」


 三人はこんなことを言っているが、俺は知っている。


 確かにこの付近には気分が悪そうな人は少ないが、それはダメだった人達が休憩所に運び込まれているだけだという事を……とはいえ今周りにいる人達は皆大丈夫なのかよ。(きた)え抜かれた兵士か何かなの……?


 そんな事を考えていると突然、腕時計型端末が振動した。

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