表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第二章~エンジェルディセント~
61/445

2-7 VS レオン&ニアベル

 その後、俺達は仮想訓練室に向かうと、サリアさんにお願いして舞台をセッティングをしてもらった。カプセルに入り目を開けると、雷人とフィアは砂漠のど真ん中にいた。


「さてと、確か仮想空間ではマップが呼び出せるんだっけ?」


「そうね。基本的にきちんと情報が得られる環境ならマップは反映させてもらえるわ。うちならシンシアの担当だけど、仮想空間なら使えないって設定がなければ例外なく可能よ」


「了解。マップ」


 (とな)えると、立体的な映像が目の前にホログラムで表示される。


 どうやら南が砂漠、西が森、東が湖、北が市街地となっているらしい。

 距離はおよそ二十キロの正方形のフィールドだ。


 結構な広さだが、能力を持つ者達にとってはこのくらいでちょうどいいのだろう。


「どこで戦う? ここは隠れる所も無いし、街か森にでも移動するか?」


「多分、移動は出来ないわね。雷人はとりあえず出来るだけ頑丈な盾を作れるようにして待機しておいて」


「盾? 移動出来ないって何で……」


 俺は疑問を口にしながらも盾を作り始めた。

 自分達が南の砂漠の中央にいることから、相手は北の市街地の中央にいると推測出来る。


 単純に考えて約十キロは離れているはずだ。

 まさか、そんなに早く会敵(かいてき)するとも思えないが。


 その時……何かが遠くで爆発したような音が聞こえた気がした。

 一体、何をしているのだろうか?

 フィアは音のした方を見つめながら、雷人の疑問に対して答える。


「私も詳しくは知らないんだけど、あの二人はホーリークレイドルが始まって以来四番目の早さでA級隊員になったって事で(うわさ)になってたのよね。だから、どんな能力を持ってるのかはざっくりと聞いてるの。どんな戦い方をするのかもね。見掛けはあんなでも油断したらやられるわよ?」


「そうなのか? とは言ってもここでただ待つのもなんだしな。森の方にでも移動しないか? 辿(たど)り着けないまでも遮蔽物(しゃへいぶつ)に近付いておいた方が後々良いかもしれないだろ?」


 雷人がそう提案するとフィアが少し考え、頷いた。


「そうね、じゃあそうしましょうか。移動しながら盾は作れる?」


「大丈夫」


 方針が決まると二人は早足で移動を開始した。

 北を警戒しながら進むが今の所はまだ大丈夫だ。


「そういえば、あいつ等の能力って結局何なんだ?」


「私もさらっと聞いただけなんだけどね。レオンの方が使用する武器の性能の上昇なんだけど……厄介(やっかい)なのはニアベルの方よ」


 フィアがそこまで言った所で遠くからキィィィィィンという音が聞こえてきたのに気付き、俺は空を見上げた。


 その光景に雷人は驚愕(きょうがく)した。

 何と、北側の空から爆音を響かせながら戦闘機が飛んで来るのだ。


「は!? 何だよあれは!?」


 驚く雷人に対して、その理由はすぐにフィアの口から出て来た。


「彼女の能力は万物(ばんぶつ)創造(そうぞう)。レオンと彼女の能力の相性は抜群よ。さぁ、来るわよ! 構えて!」


 フィアは叫ぶのと同時に巨大な氷壁(ひょうへき)を作り出す。

 次の瞬間、猛スピードでこちらに向かってきた戦闘機はその前方、機首に備え付けられたマシンガンをこちらに向けて発砲した。


「やばいっ! くうぅぅぅ!」


 ドガガガガガガガガガガガ! という轟音が響き渡り、氷壁が凄い勢いで削られる。

 数発の弾が壁を越えて飛来し、それを見て咄嗟(とっさ)に作っていた電気の盾を向けてガードする。


 貫通こそしなかったものの大きな衝撃が盾越しに伝わり、数歩後退(あとずさ)った。

 盾には触れていなかったのに、衝撃が伝わるなんて威力が強過ぎる。


 恐らく、これが先ほどフィアの言っていたレオンの能力なのだろう。

 二十メートル程上空を戦闘機が高速で通り過ぎて行った。


「まさか、こんな所で戦闘機を見る事になるなんてな。どうする? やっぱり森に逃げるか? ここにいたらいい的だぞ」


 森に逃げ込む事が出来れば、空からはこちらの位置が分り(づら)くなる。

 そう考えて雷人が視線を送ると、フィアは首を横に振った。


「すぐに旋回(せんかい)して戻って来るはずよ。逃げる事よりも、まずは落とす事を考えて! そのためには、まず攻撃出来る(すき)を作ることね。バラバラに走って、狙われなかった方があれを落とす。相手はかなり速いけど……出来る?」


 フィアが少し心配そうにこっちを見る。

 確かに相手は速いが雷人は普段から速さに慣れる訓練をしている。

 やって出来ない事はないはずだ。


 何より、これくらいは出来なければいつまで経ってもジェルドーには勝てないだろう。


 引くべき時は引かなければならないが、今はその時ではない。

 雷人ははっきりと答えた。


「もちろんだ。やるぞ」


「……うん、それでこそね」


 フィアがとびきりの笑顔で拳を出して来るので一瞬目を奪われてしまうが、すぐに気を取り直して自分の拳をフィアの拳に軽くぶつけ、振り返らずに走り出した。


 旋回した戦闘機は分かれた二人に迷ったのか、一瞬不安定な挙動をとったがすぐに俺の方へと(かじ)を切って飛んで来る。


「こっちに来たか……。よし、釘付(くぎづ)けにしてやる! 雷弾生成バレットチャージ!」


 強化されているだけあって凄まじく速いが、俺も足には自信がある。

 雷人は全力で走りながら自身の周りに青白(せいはく)に光る球を出現させた。


雷弾射撃サンダーバレット!」


 雷人の放った青白の弾丸が、轟音を上げ再び放たれる弾丸の雨に当たり弾ける。


「まだまだぁ!」


 雷人は全力で走りながらも球を次々に作り出し、出したそばから戦闘機に向かって放つ。


 俺からの攻撃は届かないが、それは向こうも同じだ。

 はじけた弾が銃弾を退(しりぞ)け、偶然通り抜けた数発が辺りに着弾するが、俺には当たらない。


「よし、何とかなりそうだ。でもこれを続けるのはちょっとしんどいぞ。フィア! 早くしてくれ!」


「流石に速いわね。反対方向に逃げたのは失敗だったかしら……? うん、もうちょっと頑張って!」


「おいっ! 作戦ミスじゃないのか!?」


 俺は通信機代わりの腕時計型端末から伝わる声に文句を言った。

 ちなみに、この通信は基本的に装着者のみに聞こえるようになっているらしく、設定しなければ音声は流れないらしい。


 だから、俺は(はた)から見れば独り言を叫ぶ変な人だ。

 まぁ状況が状況なので、特に問題はないのだが。


「おわぁっ!?」


 そんなどうでもいいことを考えて余裕を見せていると、何発もの銃弾が背後の地面を叩き、そのあまりの衝撃にバランスを崩して(つまづ)き、派手にすっ転んでしまった。


 その最中に雷人は空を飛ぶ戦闘機の両翼に機銃が付いているのを見た。


「お、おおおおぉぉぉ!」


 雷人は空中に壁を作りだして()り、無我夢中で横に転がる。

 ()き散らされる弾丸の雨が、俺が走っていたラインの延長線上を荒らしていった。


 巻き起こる砂埃とその銃弾が降り注ぐ音に冷や汗が浮かぶ。

 もしも俺の記憶が間違っていなければ、先程までは翼に機銃など付いていなかったはずだ。


 まさか、この戦闘の最中に作り出したのだろうか?

 ニアベルさんの能力、想像以上に厄介(やっかい)なものかもしれない。


 視線の先で戦闘機が再び旋回(せんかい)する。

 その両翼の下部がうっすらと輝いたかと思うと四つの物質が出現する。

 俺は周りに球を作りながら叫んだ。


「嘘だろ!? あれはまさかミサイルか!? くそっ、フィア! あとどれくらいだ!?」


 驚愕(きょうがく)し、叫ぶと返答はすぐにあった。

 こんな状況でも、その声は非常に落ち着いていた。


「待たせたわね、さぁ! 反撃の時間よ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ