2-3 引っ越し
「はああああぁ! 良かったよおおおぉぉ!」
住まいが見つかって喜ぶ空を横目に雷人は驚愕していた。
確かに言葉では聞いていたが、連れて来られたそこはかなり大きな一軒家だった。
一階が三LDKにバスルーム、トイレが完備。
二階もあって、間に廊下を挟んで三つずつの六部屋もあった。
これほどの立派な家ならばかなりのお金が掛かった事だろう。
それにしても……。
「……やっぱり手際が良過ぎる。わざとだったんだろ?」
「んー? 何のことかしら?」
俺はジト―っとした目でフィアの方を見るが、フィアは澄ました顔で答えた。
どうやら白を切り通すつもりらしい。
「まぁまぁ、フィアさんが来て手狭だったのは事実だし、僕達に実害は無いんだから、いいじゃんいいじゃん」
「……はぁ、まあいいか。確かにあのままってわけにもいかなかったもんな」
こんな立派な家なら間違いなく部屋に鍵はかけられるはずだ。
流石にフィアが寝ぼけて入って来る事は無くなるだろう。
決して、毎朝フィアが布団に潜り込んで来なくなるのが名残惜しかったりはしない。しないとも。
「とりあえず、部屋を決めて荷物を運び込んじゃいましょ。終わったら一階のリビングにでも集まればいいわね」
「了解」
「オッケー」
俺と空はフィアの指示に従って自身の部屋へと入っていく。
それぞれの部屋には二階の部屋を使う事になり、話し合いの結果、階段から一番遠い部屋に廊下を挟んで雷人と空、雷人の隣の部屋がフィアの部屋となった。
雷人と空の部屋は元々の寮での配置が楽だということですぐに決まり、わざわざ部屋を離す必要も無いという事でフィアが隣の部屋になった感じだ。
部屋は以前の部屋よりも少し広くなっていて、だいたい八畳程の広さだ。
俺の荷物と言えばベッドと本棚、丸い机と棚が一つ程度しかないので、細かい物を持ち込んでもあまり時間は掛からなかった。
思いの外早く済んでしまったので、一階のリビングに向かう。
そこには大きな正方形のカーペットとその上に長方形の机。
三人掛けのソファが直角になるような配置で二つ置かれており、テレビも設置されていた。
もう既に設置されているのは元からそういう物件だったのか、フィアが前もって用意していたのか。
そういえば、フィアは俺達が学校に行っている間は暇なわけだが、そういう時間にこういうのを準備していたんじゃないのか? などと考えてみるが、別に悪い事をしているわけでもないし、どっちでもいいかと思い考えることを止めた。
ため息を一つ吐くとソファの方へと歩いて行き、横向きに寝転がる。
柔らかいソファの感触に眠気に襲われながら目を閉じる。
最近は訓練続きで結構疲れた。ちょっと横になってもいいだろう。
そして俺は、襲い掛かる眠気に身を委ねたのだった。




