二章プロローグ
本日から二章開始です!
頑張って毎日更新しますので、応援よろしくお願いします!
目が覚めるとそこは木々が鬱蒼と茂る暗い森の中だった。顔を刺激する熱と光を感じる。ふと光の方角を見ると、そこには悪夢のような光景が広がっていた。
家は煤を飛ばしながら炎を上げ、人々は苦しみ藻掻き、助けを求めて喘いでいる。僕の隣には、クマの人形を抱いた少女が倒れていた。少年は目に映るその光景に、黒々とした感情が理性を飲み込んでいくのを感じた。
少年は悲しみを、悔しさを感じながらも邪悪な笑みを浮かべていた。
少年は誓った。
許さない。許してはいけない!
必ず、復讐してやる!
その時、普段は優しく朗らかであった少年の心は、暗い闇に完全に包まれた。
微かに近所に住んでいた少女の顔が思い出されたが、それは今となっては心の闇を深くするものにしか成り得なかった。
そうして少年は倒れていた少女を抱えると、ゆっくりと立ち上がり森の奥へと歩き出した。
暗い、暗い闇の中へと……
*****
「……随分と懐かしい夢を見ちゃったな」
「あ、起きたのね。お兄ちゃん」
少年が目を覚ますと、すぐそばに所謂ゴスロリの服を着た少女が大事そうにクマのぬいぐるみを抱えて座っていた。どうやら起きるのを待ってくれていたらしい。
「あぁ、トゥーナか。おはよう、と言っても夜だけどね」
「そうね。でもおはようでいいんじゃないかしら? そうだ、ナクスィアも呼んで来る?」
「そうだね。そうしようか」
「じゃあちょっと待ってて、ナクスィアが新作のケーキを作ってくれてたから一緒に食べましょう? お兄ちゃんが起きるまで我慢してたの」
「そっか、それは楽しみだね」
トゥーナはぴょんと椅子から跳ねるようにして立つとそのまま部屋から出て行った。その足取りは軽く、機嫌が良い事が分かる。トゥーナは甘いものが大好物なのでケーキを食べるのが待ち遠しいのだろう。
「……復讐の始まり、か。いや、終わりの始まりかな? ……こんな時間はあとどれだけ残されているのかな」
少年は窓の外に見える星の海をみつめ、ただ静かに独りごちていた。




