7-52 君の行く道に幸あれ
雷人達がホーリークレイドルに帰った後、機人族の面々は早速後片付けを始めていた。
「やー、それにしても随分と派手に暴れたんだねぇ。ここ地下なのに、壁にあんな大きな穴を空けちゃって。早く修復しないとここが崩れちゃうかもねー」
「謝罪、皆には迷惑を掛けますね。私は人手を集めます。ボタンとククリは指揮を執って修復作業を開始して下さい。よろしくお願いしますね」
「承知しました。ククリ、始めるぞ」
「はいはーい。やりますよー。ウコンとイコウはあっちで瓦礫の撤去してきてー、ガッティーノも頼んだよー」
「おー、任された―、コピー」
「アイコピー! 張り切ってやっちゃうよー!」
「僕は天才ハカーなだけで肉体労働は苦手なのでゲスが、イルミの頼みとあれば仕方がないでゲスね。ゲイン、ムスコロ。やるでゲスよ」
「はーい、イルミちゃんのためにもさっさと終わらせちゃいましょー」
「オデ、力仕事得意、任せロ」
さて、指示を出すとマザーは去って行き、機人族達はそれぞれの持ち場に向かっていった。
しばらくして、ククリも瓦礫の撤去をしていると、何やらボタンが近付いて来るのが見えた。
「あれー? どうしたのリーダー。何かあった?」
「いや、少し話をしようと思ってな」
「話? やー、何だろうなー」
「……今回の一件、ククリもネットワークを通して見ていたんだろう?」
「……あー、そうだねぇ。……やー、まさかこんな大々的に黒歴史を掘り返されるなんて思わなかったよー。我らがマザーもえげつないよねぇ。流石のククリちゃんも穴があったら入りたい気分だよー」
カミン達を巡る事件でマザーは過去のイルミを演じ、機人族達が盛り上がる様子はククリも見ていたのだ。
隠れて見ていたつもりだったが、どうやらボタンにはバレていたらしい。
「お前、まだ夢を捨て切れていないんじゃないか?」
「やー、そんなことあるわけないよ。十分痛い目をみたからねー、もうこりごりだよ―」
「……本当にそうか? マザーはお前が苦しんだことを知っている。カミンを試すためとはいえ、むやみにそれを掘り起こすような真似はしないはずだ。お前だって分かってるんじゃないのか?」
「……やー、敵わないなぁ。そうだねぇ、捨て切れてないのかなぁ。今回の皆の盛り上がりを見てさ、やっぱり昂っちゃったんだよね」
「……八重桜の仕事は重要だ。だが、余裕がないわけではない。完全にとはいかないだろうが、お前にその気があるのなら融通してやることは出来るぞ」
「やー、ダメだよー。ククリはきっとまた機人族の中だけじゃ我慢出来なくなっちゃうからねー。外で受け入れられないことは身に染みてるよー」
「そうだな。お前が受け入れられなかったのは事実だし、それは私も把握している。だがそれは随分と前の話だ。お前もマザーの記録は見ただろう。今回来た奴らは外の人間だが、機人族と共に笑っていた」
「……」
「外には機人族であることを気にしない者も存在する。私は可能性を感じているが、お前はどうなんだ?」
「……そうだねー。ククリもちょっと感じちゃってるかなー」
「それなら一度、奴らの故郷にでも行ってみるといい」
「……いいのかな?」
「いいに決まっている。何なら上司からの命令ということにしてもいいが?」
「やー、そこまで言われちゃククリも断れないなぁ。うん、分かったよ。それじゃあちょっと、行って来ようかなー」
そう言ったククリの、いや、イルミの目からは涙が流れ落ちていた。
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「マザー、自分で言わなくて良かったのですか?」
「肯定、私が言うよりもあなたからの方がいいでしょう。私が言ってしまえば断る選択肢はありません。確信、私はやはり決断は自分でするべきだと思います」
「……マザーにも何か心の変化があったようですね」
「……肯定、そうですね。マスターを、人間をもう少し信じてみてもいいかもしれないと思っています。もっとも、あなた達にひどい事をした連中のような不届き者もいますので、見極めは重要です。そこは揺るぎませんよ」
「ふっ、それもそうですね。さて、それでは私は後片付けの続きをするとします」
「えぇ、お願いします。祈願、あの子達の行く道に幸があらんことを」
そう言って、マザーはゆっくりと両手を合わせて目を閉じた。
過去は過去、そう割り切って進むのは何と難しい事でしょうか。
しかし、その鎖を引き千切り、子供達は幸福な未来を願って一歩を踏み出します。
君の行く道に幸あれ。




