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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
マキナウォルンデイズ 第七章~マキリスエスケープ~
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7-50 八重桜の自己紹介

「うぐ、あぁ、ああああああああああぁ!」


「落ち着けフィア、もう終わった。大丈夫、大丈夫だ」


「あ、ぁあ、うぅ」


 やはり無理が(たた)ったようで暴走の兆候(ちょうこう)を見せていたフィアの頭を()き、()でているとフィアの(うめ)き声が薄れていき、やがてすーすーと(おだ)やかな吐息(といき)が聞こえて来た。


 うん、黒い霧も消えたし、無事に黒化は解けたみたいだな。

 仮想訓練では何度も暴走を止めたからな。今となってはもう慣れたものだ。


 ただ、やはり苦しそうな姿はあまり見たくない。

 フィアに無理をさせないためにも俺がもっとしっかりしないと。


 俺が眠ってしまったフィアを地面に下ろして異空間から出した布団(ふとん)の上に寝かせていると圧縮粒子砲を片付けたカミンさんが近付いてきた。


「彼女は大丈夫なのか?」


「あぁ、ちょっと無理をしたから眠ってるけどとりあえずは問題ない。それより、これで終わったんだよな? (のぞ)む形では無かったと思うけど」


「あぁ、最後に合格だとも言っていたからな。そのはずだ」


 ……いや、よくよく考えたらマザー消滅(しょうめつ)しちゃったんだよな。

 確かに合格とは言っていたが本人はもういないし、この星のトップを殺しちゃったわけだろ? これ、俺達指名手配とかになって穏便(おんびん)に脱出するどころの話じゃないんじゃないのか?


 や、やばい。戦闘中はアドレナリンがドバドバで何かいけるような気がしていたが、よく考えなくてもこの状況って()んでる気がする。フィアはこんなだし、正直俺ももう倒れる一歩手前だぞ。


 イルミがマザーだったって事は、多分「ガッティーノ」達反抗者(レジスタンス)もマザー側だったんだろ? 現状、敵だらけの四面楚歌(しめんそか)なんじゃないのか?


 ……そういえば、外で足止めしてるはずのフォレオとシルフェはどうなったのだろうか?

 そこまで考えたところで声が聞こえた。ドームの端、せり上がって観客席のようになっている場所からだ。


「ほう、随分(ずいぶん)派手(はで)にやったみたいだな」


「やー、凄いねー。ククリじゃこんなの逆立ちしても出来ないよー」


 この声、聞き覚えのあるこの声は……。


「イルミ……」


「やー、今はイルミじゃなくてククリだよー。それに、初めましてだねぇ。マザーがイルミの真似(まね)をしてたみたいだから、知らない知り合いが増えて困っちゃうよー」


 雰囲気は随分(ずいぶん)と違うが、その声も外見もイルミとそっくりだった。

 あぁ、本当に本人なんだな。というか、この二人が無事という事は……。


「なぁ、フォレオとシルフェ……。外であんた達と戦ってた二人はどうしたんだ?」


「あぁ、こいつ等のことか。静かに待ってくれなかったから気絶(きぜつ)させてある。ほら持っていけ」


 そう言って和服剣士風の機人族(マキリス)は足元に寝かされていたらしき二人をひょいと持ち上げるとこちらに放り投げた。


「うぇ? わっとと! あ、あぶな」


「ナイスキャッチ」


 二人同時に投げられたので(あせ)ったが、正確に俺の所に投げてくれたので何とか二人ともキャッチすることが出来た。


 あー、本当に意識がないな。これで気絶(きぜつ)が三人か、本気で逃げるのは現実的ではなくなったな。それにしても……。


「……どういうつもりだ? どうしてわざわざ(つか)まえた二人をあっさりと返したんだ?」


「そんなの決まっているだろう。捕まえておく必要がなくなったからだ。……あぁ、そうだ。自己紹介がまだだったな。私は八重桜(やえざくら)のリーダーをしている。コードネームはボタンだ」


「やー、さっきも言ったけど私はククリだよ。その二人は強かったよぉ。でも、こっちも増援が間に合ってねぇ。それがこの二人ねー」


 客席の座席にもたれかかりながらククリが横を示すと(みょう)なポーズをとりながら二人の機人族(マキリス)が立ち上がった。


「おー、こちらウコンだぞー、コピー?」


「そして、こちらはイコウね! アイコピー!」


 なんとも気の抜ける声のウコンと快活(かいかつ)そうなイコウという機人族(マキリス)の二人組か。性格は反対に見えるが見た目は結構似通っている。双子と言われたら信じられるくらいだ。


 ちょっとふざけているように見えるが、フォレオとシルフェがやられている以上は油断(ゆだん)出来ないな。


「そうか、俺は雷人だ。それで、マザーの敵討(かたきう)ちに来たって所か?」


「敵討ち? いや、こちらにその意思はない。マザーからの指示は事が終わるまで二人を外に釘付(くぎづ)けにすることだった。事はもう終わっただろう。つまり我々の任務は既に終わっている。今はただ挨拶(あいさつ)と二人の身柄(みがら)を返しに来ただけだ」


 挨拶(あいさつ)と身柄の引き渡し? いやに事務的な対応だな。

 こいつ等はマザーの近衛(このえ)だったんじゃなかったのか?


「……マザーはあんた達の母親なんだろ? なんとも思わないのか?」


「ん? あぁ、もしかしてマザーが死んだとでも思っているのか? それなら安心するといい、勘違(かんちが)いだ」


「勘違い? いや、そんなはずは……」


「肯定、えぇえぇ、勘違いですとも」


 その時、ボタンの言葉を裏付けるように聞こえたのは間違いなくマザーの声だった。

マザーが死ぬ? いいえ、そんなわけがないですよね!

やっぱり機人族ってチートだなぁ。

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