7-48 母を討つ覚悟2
「勧告、いつまで隠れているつもりですか? 力を、覚悟を示す気があるのなら出て来なさい。……それと、中の物に手を出せば容赦出来ませんので、賢明な判断を求めます」
マザーは勧告の後、遂に痺れを切らしたのか一歩を踏み出すと次の瞬間、崩落した穴から二つの影が飛び出した。
「待たせたな! そろそろ決着をつけようぜ、マザー!」
「承服、いいでしょう。これ以上長引くとドームが崩壊しかねません。ここで決着を……カミン? なぜあなたが前に出るのです。あなたは戦闘モデルではないのですよ」
俺とフィアが走って行った先には例の圧縮粒子砲を携えたカミンさんが立っていた。
その強力な反動を抑え込むためにアンカーを地面に打ち込み、その銃口をマザーへと向ける。
「マザー、これは彼等とマザーの戦いではありません。私とマザー、お互いの意地を掛けた大喧嘩なのです。戦闘モデルではない? 関係ありません。私は私の意志を貫き通すため、これまで培ってきた全てをもってあなたの前に立つ所存です」
「……そうですか。覚悟はもう決まっているという事ですね。いいでしょう。それでは、示しなさい。襲い来る万難を乗り越え、私の庇護がなくとも生きていけるというその証明を。その体が崩壊するまで諦めないという強靭な意志を!」
マザーはこれまでのような淡々とした話し方ではなく、その意志を感じさせる力強い声で叫んだ。
そして、肩に取り付けられていた二門の砲塔が変形し、一つの巨大な砲塔となって真正面から向けられる。そして次の瞬間、カミンさんが呻き声をあげた。
「ぐっ、がぁ!? これは、マザーネットワーク……だと? まさか、強制的に繋いだのか……!」
「おい、カミンさん! 大丈夫か!」
「あぁ、どうやらマザーの手に掛かれば無理矢理ネットワークに繋ぐことも可能だったみたいだな。だが、私の意志は乗っ取られてはいないみたいだ」
「愚問、意志の乗っ取り? ありえません。我が子を意のままに操ろうなど思うはずがないでしょう。ただ、これでカミンのメモリーはアップデート出来ました。例えこの試練で吹き飛んだとしても私が再生させることをここに誓いましょう。……ですから、私は絶対に自分からは外しません。それでもあの人間のために私に挑むというのであれば、あなたの覚悟を持って抗ってみせなさい!」
マザーがそう告げると巨大な砲塔が強烈な光を放ち始めた。どうやらマザーの枷は外れたらしい。殺す気はないって話はすっかり忘れてるみたいだな。とんだモンスターペアレントだ。
だが、俺達だってこのままやられてやる気はない。
最後まで、真正面から抗ってやるだけだ。
「……雷人、フィア。すまないな。本来関係のないはずの二人にだけ命を掛けさせるようなことになってしまった」
「何を言っているのよ、カミン。そんなの、依頼を受けた時点で命は掛かってるのよ。絶対安全な依頼なんてものはないわ。私達人族はちょっとしたことで死んでしまうのよ。だから、あなたにはどんな逆境も乗り越えてフレイルを守る、そういう覚悟が必要なんでしょ?」
「カミンさんの全てがここに詰まってるんだろ? だったらその生き様を見せつけてやらないとな。それに、ここには俺とフィアの全ても乗っけるんだ。だったらもう負けるはずなんてないだろ」
どうせもう逃げ場なんてないからカッコつけた事を言ってしまった。多分後から考えたらまた恥ずかしくなるんだろうな。
足は震えてるし、勝てるかどうかなんて分からないし、正直怖い。
だけど、これでいい。こんな所で躓いているようじゃ、フィアを救うなんて夢のまた夢なのだから。
「そうか、そうだな。雷人、弾の準備は終わっているか?」
「あぁ、勿論。これでもかってくらいカナムを詰め込んでおいたよ。これで俺の力による加速が出来るはずだ」
カミンさんにより作られた圧縮粒子砲用の特殊弾頭にカナムを詰め込んだことで俺の超加速砲も同時に使えるようになった。
これが現状考えられる最大威力の一撃だ。ただ、その反動は恐ろしいものになると思うのでそっちの対策はフィアに任せた。
丸投げになってしまったが、発射時はコントロールで精一杯だからな。俺にそこまで気を回す余裕はない。
マザーは俺に引けを取らないほどの高速で動けるので躱される心配はあったが、あの感じなら避けることは無いだろう。少なくともあの巨大砲塔から発射されるビームを真正面から撃ち崩せばマザーは認めざるを得ないはずだ。
だったら、砲身を延ばすのに躊躇いは要らないよな。
マザー戦も遂にクライマックスです!
盛り上がっていきましょう!
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