7-36 イルミの正体1
「ふっふーん。あなた達の相手は私達だよ。余所見をするなんて、そっちの方が嘗めてるよね!」
フォレオが銃撃で剣士の機人族を吹っ飛ばすとシルフェが自慢げに機人族に向かって言い放った。
まったく、こちらが優勢だからと調子に乗るとは、まだまだシルフェは甘いですね。
「シルフェ、もう一人いるのを忘れていませんか。まだ皆はドームに入っていません。ドーム側に移動して入れないように守りを固めますよ」
「うん、そうだね。あれ? でも、まだあっちの子は倒れたままだよ。もしかして寝てるのかな?」
ドームに向かいながら確認すると確かにイルミ似の機人族は倒れたままだ。
奇襲をする機会でも窺っているのかと思いましたが、まさか本当に眠っているのです?
「……特に妨害を受けずにドームに入った? この状況で寝ているなんてどれだけ怠惰……いや、待って下さい。機人族って睡眠が必要なんですか?」
「ふぅ、気付いたみたいだな。ふっ!」
「んな! またっ!?」
「うえぇ!? いつの間に!?」
弾き飛ばした後、先行していたはずのフォレオとシルフェの前に突然剣士の機人族が現れ、刀による薙ぎ払いでシルフェとフォレオは後退させられた。
むぅ、ドームとの間に入られました。いや、でもフィア達を追おうとすればうちとシルフェで妨害しますから、追い付かれるという事はないでしょう。
そこで寝ているらしき機人族が起きでもしなければ何の問題もありません。
この機人族もさぞ焦った表情をしていることでしょう。
そう思い機人族の顔に視線を向けたフォレオは疑問を覚えた。
この機人族、守っていたドーム内への侵入を許したというのに落ち着いている?
「さて、行ったな。では、お前達はここに釘づけにさせてもらおう」
「……は? どういう意味です。それではまるでフィア達があのドームに入って行くことが狙いだったみたいではないですか」
「あぁ、その通りだ。ここで一人ずつ足止めするようにとマザーからのオーダーがあったからな。だが、これ以上は対象外だ。中には入れると思うな」
「ん? え、そうなの!?」
「……よく分かりませんが、どうやらマザーにはこの襲撃が知られていたと見た方が良さそうですね。皆が危険です。シルフェ、押し通りますよ」
「うん、分かった。この人を倒そう!」
「ふっ、ようやくやる気になったか。だが、そうだな。二人が相手では流石に手を抜くのは難しそうだ。マザーの審判を待たずに殺してしまってはことだからな。おい、起きろククリ。休憩の時間は終わりだ」
「やー、もう休憩はおしまいかぁ。あと五分……っていうのは効かなそうだねぇ」
剣士の機人族が声を掛けると倒れていた機人族がもぞもぞと動き、ゆっくりと起き上がった。その顔を見てフォレオとシルフェは苦笑いをした。
「えーと、これってどういうこと? 双子……でいいのかな?」
「こういう状況じゃなければそんな事も言えたんですけどね……。思えば、違和感はいくつもありました。マザーの居場所を知っていた事、ここまで碌に機人族に会わずに少ない妨害のみで順調に事が運んだこと、極めつけはここの入り口、本来機密事項であろう落とし穴の存在まで知っていた事。……あまりに都合が良すぎます。ここまで重なれば偶然だとは思い難いですね」
似ているどころではない。イルミと全く同じ顔をしたククリと呼ばれた機人族は大盾を構えながらだらしない笑顔で答えた。
「やー、初めまして。八重桜のククリだよ。よろしくねー」
*****
ドーム内へと侵入した俺達はその中を見て唖然としていた。
そこはまさしく伽藍洞。ロボットも、機人族も、機材の一つすらも無いただ広々とした空間が目の前に広がっていた。
その光景を認められず、キョロキョロと周囲を見回すがそんな事をしたところで何も変わることはない。
「何も……ない? どういうことだ。マザーがいないどころか伏兵の一人もいないぞ」
「まさか、情報が間違っていたってこと? でも、実際に八重桜の機人族がここを守っていたわよね。という事は、どう考えてもこれは罠……皆、一度出直しましょ……」
「いえ、その必要はありません」
「……う。え?」
聞きなれない声が後ろから聞こえ、一斉にばっと振り返ると黄色の少女が俺達の間をゆっくりと歩いて進んでいく。
「……やはりそうか。この状況、誘導されていたとしか思えない。そして、ここまでのルートを指定していたのはイルミ、君だ。……イルミ、一体君は何者なんだ?」
カミンさんが銃口を向けるとアイドルらしい明るい印象だったイルミの姿が光と共に変化し、長い白銀の髪と雪の様に真っ白な肌が綺麗な少女の姿がそこにあった。
「回答、えぇその通りです。私があなた達をここへ招待しました。会いたかったのでしょう? この私に」
マザーを名乗った人形のようにきれいな少女は静かに微笑んで見せたのだった。
合っていたでしょうかー!?
一緒にいたイルミ=マザー、怪しいところは色々とありましたが、作者が読者だったら多分分からなかったですね。
ん? じゃあ分からない方がナカーマなのかな?
よっしゃ、みんなまとめてナカーマだ!
( ・∀・)人(・∀・ )ナカーマ




