7-24 イルミの提案2
「ここからおよそ百キロ先の居住塔だと! ここまで旧区画の近くに来ているのか!?」
……百キロって近いのか? 俺の感覚だとそれなりに遠いんだが……、まぁカミンさんも驚いているし多分居住塔の中では近いんだろうな。
「これは一体どうやって調べたんだ?」
「うんうん、それはもうイルミはマキリスアイドルだからねー? そういうのが得意なファンが協力してくれてるわけなのだよ! 反抗者仲間だね!」
「反抗者の仲間ですか。その方はここには来ていないのです?」
「んー、残念ながら反抗者の皆は作戦のために各地に散らばってるんだよねー。今ここにはイルミだけだけどー、数人なら少し離れた拠点にいるよ! イルミってばネットアイドルなんだけどー、オフ会はしてるからねー!」
「ネットアイドルかぁ。あれ? でもイルミってマザーのネットワークには繋いでなかったんだよね? 今は活動休止中って事なの?」
「いやいや、イルミが活動してるのはローカルネットワークだから大丈夫だよー。おかげ様で過疎ってるからファンは少ないけど、その分距離感が近いんだよねー!」
……そういうのは詳しくないからよく分からないが、ネットで地下アイドルのようなことをしているって事か? オフ会をしてるから会えるアイドルとして人気があると。
いや、でもカミンさん曰くアイドル自体がメジャーなものじゃないみたいだし、そもそも会えないアイドルはいないのか。っていかんいかん、余計な事を考えてしまった。そんな事は置いといて。
「カミンさん、彼女はこんな事を言ってるけど、どう思う?」
「確かにそういった反抗者が使うローカルネットワークが存在するという話は聞いた事があるが、私は使った事がないから真偽は分からないな。何分、万が一にもフレイルの存在がバレるわけにはいかなかった。危険を冒す真似は出来ないからな」
「……うん、でも嘘は言ってないみたいよ」
「分かるのか?」
「えぇ、そういう能力が使えてね」
あぁ、あの能力を使ったのか。
久々に聞いたが、やっぱり頼もしいな。
「そういう事ならイルミが騙されていない限り情報は正しいことになるな」
「ひっどーい! イルミのファンが嘘を吐くって言うのー?」
「可能性はあるだろ。それで、それを踏まえたうえでやるかどうかだが、皆はどう思う?」
俺が皆を見渡すと、全員が真剣な表情になった。
「私はやっても良いと思うよ。ここに来るまでは何とかなったけど人数も増えたし、全員を私の能力で隠し通すのは難しいと思うんだよね」
「シルフェがそう言う以上は来た時と同じ手段で脱出するのはやっぱり難しそうね。通信の妨害をされている以上は転移の脱出も出来ないし、他の脱出方法は……私には思いつかないわね」
「そうだな。こちらの事情で申し訳ないが、フレイルのためにもあまり時間を掛けるのは好ましくない。危険だが、すぐに動かなければならない事を考えると私は賛成をせざるを得ないな」
「……そうですね。他に手段がないというのであればやらざるを得ません」
「イルミはもちろんオッケーオッケー! イルミ達だけじゃちょっと戦力不足だと思ってたんだよねー。でも、君達は十分戦力になってくれそうだし! やってくれるなら渡りに船でありがたいなー!」
「俺もフレイルさんの事を考えるとマザーへの直談判に賭けるしかないと思う。という事は満場一致で決定か。危険だけど腹を括らないとな」
全員が頷き、フォレオが手を挙げた。
「やるならまずは現状分かっている情報を全て出したうえで作戦を立てなければいけません。イルミ、何か勝算はあると思っていいのです?」
「うんうん、皆に加えてファンの皆も手伝ってくれるからねー! それじゃあまずは仲間達と合流しよー! イルミに付いて来てー!」
そして、俺達は先頭切って歩き出すイルミの後に続いたのだった。
百キロは正直近くないと思いますが、まぁ時速八百キロで走る貨物車がある世界なら近いと言ってもいいかもしれないですね。あはは……。




