7-23 イルミの提案1
「マザーを倒す!?」
「ちょっと、それが出来たら苦労しないって話じゃないの?」
「……いや、マザーを倒すまではいかなくとも直談判で交渉するのは悪い案ではない。あくまで出来るのならだがな。だが、それは無理だ」
「まぁ、そうでしょうね。相手はこの星全てと同じ存在なのですから。しかし、悪い案ではないとも言いましたね? 一応、無理だと考えている理由を聞いても良いですか?」
フォレオがカミンさんに尋ねると、カミンさんは自分の持っている盾に簡易的な絵を表示させながら話を始めた。便利な物だな。
「まず前提として、我々機人族はネットワークを介するとマザーに意識を弄られる可能性がある。だから普通はそもそも交渉自体が成立しないが、ネットワークを切って直接会うのならば交渉自体は可能なはずだ」
「つまり、今のあなた達なら直接会えば交渉が出来るという事よね」
「そうだ。交渉するうえで重要なマザーが私を追っている理由についてだが、マザーは人との接触をよく思っていない節がある。恐らくそれが理由だろう」
「なるほど。それで、人との接触を嫌っている理由は分かるのですか?」
「あぁ、あくまで憶測に過ぎないがな。マザーはネットワークを介して我々から情報を収集している。それ故に私達が人に影響されれば、マザーも少なからず影響を受けるのだと思う。だから必要以上に人と接触してその影響を受けるのを嫌っているのではないかと思う」
「つまり、それを解決出来ればもう追われないで済むかもしれないって事か」
「あぁ、ネットワークにはもう繋がないと絶縁を申し出て、その上で星を出るのならばマザーが了承する可能性はあると思っている。勿論、すんなりとはいかないだろうがな」
「ふーん、それならいけそうな気がするね! ……あれ? でも無理なんだよね?」
「そうだ。この案には重大な問題がある。それは、そもそも直接マザーに会う事が出来ないということだ。マザーの居住塔はマキナウォルン内に複数存在しているからどこにいるか分からないし、常に近衛の機人族、八重桜が付いている。奴らは私達と違って戦闘モデルだ。あれを掻い潜って直接会うのはなかなかに無謀に思えるな」
なるほどな。場所がそもそも分からないし、例え分かったとしても強力な護衛が付いていると。
それがどの程度強力なのかは分からないが、一星の主の近衛ともなればそりゃ強いよな。果たして俺達で勝てるのか?
俺達がマザーとの交渉の難易度を考えて消極的になっていると、イルミがニヤニヤしながら口を挟んだ。
「ふっふっふー、無理って言うのはまだ早いんじゃないかなー?」
「やけに自信がありそうだな。何か心当たりでもあるというのか?」
「そのとーり! イルミの調べによるとねー、マザーはしばらく近くの居住塔に引きこもってるんだ! 今を逃すと今度はどこに行っちゃうか分からないし、居場所が分かってる今がチャンスだと思うんだよねー!」
「本当か? 因みにその場所はどこなんだよ」
「えっとねー、カミン、この辺の地図を出して!」
「少し待て。……よし、出したぞ」
カミンさんが地面に置いた機械からホログラム映像が空中に投影される。
3Dで表示される周辺のマップには地下も再現されていてなかなかに詳細だ。
流石は機械の星だな。技術レベルが高い。
「おぉー! ちゃんと旧区画の地下情報も入ってて偉い偉い! さてさて、えっとー。ここが現在地でー、こ、こ、がー、マザーの居住塔だよ!」
マップ内に存在するいくつかの一際大きな塔。
その中の一つにイルミがマーカーを付けた。それを見てカミンさんが驚愕の声を上げた。
複数の居住塔に近衛付き。
星の主となればこのくらいの用心は必要ですよね。
果たしてイルミは信用できるのかな?
ではまた次回、お楽しみに!




