7-22 イルミ・アフェット
「誰だ!」
カミンさんの言葉と共に全員が声の主に視線を向ける、
するとそこにはミニフレアワンピースを着た小学校高学年くらいに見える猫耳少女が立っていた。
全体的に黄色系統のカラーリングで所々にピンクが差し込まれており、なかなかに明るい印象だ。
手に持ったバットが特徴的で髪型はツーサイドアップでかわいらしく纏まっているが快活さも感じさせる見た目だ。
良く動く尻尾も相まって見た目は元気な子供に見えるが……こんな場所にいるんだから見た目通りではないだろうな。
「やっはー! マキリスアイドルのイルミ・アフェットちゃんです! 話は聞かせてもらったよ! 何やら困ってるみたいだねぇ!」
おぉ、声がでかい。元気と言ってしまえばそれまでだが、今の状況を考えると非常に迷惑だ。早々に黙ってもらおう。
「アイドルだか何だか知らないけど、まずは声量を落とせ。それと、敵対の意志がないならそのバットはそこに置いて、両手を頭に当ててこっちまで歩いて来い」
「は、はわぁ、完全に警戒モードだねぇ。分かった、分かったよぉ。置いてくってぇ。ゆっくりそっち行くねー」
イルミと名乗った恐らく機人族の少女はバットを近くに転がすと言われた通り頭に両手を添えてゆっくりとこっちに歩いて来る。
「雷人、なんだか宇宙警察に見つかって人質取ってる犯罪者みたいなセリフですね。相手が小さい子だから尚更ヤバく見えますよ」
フォレオがそんな事を言ってこっちに微妙な視線を向けて来やがった。
おい、変な事を言うんじゃない。
「あはは、追われてるって意味では遠からずだよね」
「全員が敵の可能性がある現状を考えれば当然の措置よ。二人とも気を抜かないで」
「はいはーい。イルミ何にも持ってないよー。ほらほら、跳んだりしてみちゃう」
イルミはそう言ってぴょんぴょんと跳んでいるが、機人族って一種のロボットなんだろ? そもそも体自体が凶器みたいなものだし、身体が変形して武器が出て来そうで安心は出来ないな。
「そこで止まれ。イルミって言ったな。お前は機人族でいいのか?」
「うん、そーだよ。あなた達マキナウォルンから出たいんだよねー? そしたらイルミと一緒一緒。イルミも外に出たいんだー」
「カミンさん。あいつは機人族らしいけど、大丈夫だと思うか? あんた達ってマザーとネットワークで繋がってるんだろ?」
「あぁ、だがこの子はどうやら繋がっていないみたいだな。君、外に出たいと言っていたな。君は反抗者なのか?」
「そうだよー。さっきも言ったけど、イルミはマキリスアイドルだからね。だけど、マザーは外に出してくれないんだー。ひどいよねー」
「……マキリスアイドルって何?」
「分からない。私の知る限りマキナウォルンにそんな名前の役割はなかったはずだが」
「あなた達機人族じゃないし、外から来たんでしょー? アイドルって知らない? それと同じだよー」
「つまり、機人族でアイドルって事よね。そのまんまじゃない」
「それをやるためにマキナウォルンから出たいと? なかなかの変わり者ですね」
「やっはー! 宇宙がイルミを待ってるっていうかー! まだ見ぬファンが今か今かと待ち望んでるっていうかー? イルミの煌めき、この星で終わらせるには惜しいと思わない? 思うよね! ねっ!」
「あー、だから声が大きい。あんたもマザーに反抗してるって言うのならマザーの目を気にしてくれ。見つかったらひとたまりもないんだからな」
「えー、大丈夫だよー。この辺りにはイルミ達以外誰もいないからねー」
うーん、信じていいのか? 確かにサーチで分かる範囲には誰もいないみたいだが、ここは地下だし音は結構響く。流石にそこまでは俺の力では確認しようがない。
「カミンさん。機人族ってそういうのが分かるものなのか?」
「いや、ネットワークに接続していれば他の機体からも情報を得られるが、そうでなければ個体の性能頼りになる。イルミ、どうしてそんな事が分かる?」
「いやー、イルミってば音響系大得意な機人族だからねー。僅かな音でも聞き逃さないし、ソナー感度も万全良好! 情報収集もバッチ来いだよー!」
「……ふむ、少しケーブル接続しても構わないか?」
「わお、お兄さん大胆だねー! 公衆の面前でアイドルにお触りしたいだなんて、えっちなんだからー!」
そう言いながら体をくねくねとくねらせるイルミ。
機械からするとケーブル接続ってえっちなのか?
いや、でも体と体を繋ぐと考えれば……えっちだ。
「失礼する」
「えっ!?」
「あっははは! 冗談言ったらガチスルーされちゃった! オッケー、いいよ、いいよー!」
躊躇うことなく行動したカミンに一瞬勇者かよと思ったが、どうやら冗談だったらしい。反応しちゃったじゃないか。やめて、こっち見ないで女性陣。
「……ふむ、私から言えることは、イルミは最近ネットワークに接続した履歴が無いということだ。ネットワークに接続しない限りマザーに情報を伝えることも出来ないからな。マザーの命令で来たわけではないはずだ。とりあえず話くらいは聞いてもいいかもしれないな」
「そう、それは良かったわ。私達だけじゃ手詰まりだったわけだし、手を組みましょうか。あなたには何か案があるのよね? 意見を聞かせてもらえるかしら」
フィアは決断が早いな。いや、フレイルさんの事を考えればあまり時間を掛けることも出来ないのか。
イルミは俺達の判断にご満悦のようで、にかーっと笑うと勢いよく拳を上に挙げた。
「そりゃあもう、やる事と言ったら一つしかないよねー! ズバリ、マザーを倒す! 直談判で出星を認めさせよーう!」
新キャラは猫(獣人)型ロボット、イルミちゃんでした!
そして、イルミの提案する案はまさかの直談判!
さぁ、この出会いは吉と出るのか凶と出るのか。
明日はどっちだ!
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